2018年11月1日(木)の19時30分より、テモナ株式会社さんのラウンジにて、BRAND THINKINGの勉強会が開催されました。今回は、ゲーム制作から酒造りへの転身というユニークなキャリアをもつ土田祐士さんがゲスト講師。
▲土田祐士さん(土田酒造)
「せっかく酒蔵の社長がゲスト講師なのだから……」ということで、今回の勉強会はお酒と食事をとりながらリラックスした雰囲気で進められました。
土田さんが経営している土田酒造は、温泉で有名な群馬県利根郡川場村にあります。ここ数年の受賞歴は数えきれないほどですが、2018年の受賞歴だけでも、「群馬県新酒鑑評会 優等賞」「全米日本酒歓評会 吟醸部門銀賞」「KURA MASTER プラチナ賞」「全国燗酒コンテスト 最高金賞」とプラチナ・金賞・銀賞・がずらっと並んでいます。
土田酒造が特徴としているのは、いわゆる山廃純米酒です。とても手間のかかる日本酒で、特に土田酒造は「他には出せない味」というブランドをファンのなかで確立している酒蔵といってもいいのではないでしょうか。
売上の半分を捨てて純米酒に特化する決断
サラリーマン経験を活かした軽妙なトークで、土田さんのプレゼンテーションが始まりました。プレゼンテーションの始まりは、なんと「乾杯!」で。お酒で始まる勉強会というのも、「ゆとりのある大人」の勉強会という感じがして乙なものです。
プレゼンテーションの冒頭では、土田さんが経営に参加した初期の売り上げが、円グラフで表示されました。これを見るだけでも、アルコールを後から添加したお酒、つまり醸造酒や吟醸酒が半数以上を占めています。
なんと土田さんは、現状の半分を占めているこれらのお酒作りをやめ、純米酒だけで勝負することを決断しました。ここから、世界的に評価されている土田酒造の山廃純米酒造りがスタートしました。
ここまで振り切ることができた背景には、もちろん冷静な土田さんなりの先見がありました。実は、純米酒以外の酒の売り上げは10年ほどまえは、半分どころか75%を全売上のなかで占めていました。この急激な減り方をみて、純米酒以外の日本酒が市場から求められなくなっているのではないかという仮説があったからこそ、大胆な決断ができたのです。
理論だけじゃない!誇れる酒造りをしたいから
実際に多くのファンを国内外につくっている土田酒造の日本酒ですが、その裏には、「菌と対話する」という手間暇かかるプロセスがあります。なぜ、そのような方法をとっているのか?どのようにしているのか?
経営についての話の次に、土田酒造の話へと移行。
山廃というのは、アルコール生成に欠かせない乳酸を、人工的に加えない日本酒造りの方法です。この方法をとるために、ペプチドと呼ばれる米本来のたんぱく質が濃厚な旨みとして残ります。そのため、土田酒造の日本酒は、西洋料理のように濃い味付けのものとマッチするという評価がされています。
しかし、ペプチドを残すという理論的な意味だけでなく、乳酸を加えないことには、土田さんの想いもありました。
土田「酒造りの見学体験というのを、いろいろな会社がやっていると思います。でも、アルコールや乳酸を添加するプロセスはお客様に見せられないものとされてきました」
自分たちが誇りにできる方法で、酒造りをするべきだ。土田さんは、乳酸を始めとして、市場で当たり前に使われている添加物を使わない酒造りへとさらに足を進んでいくこと。
会場での利き酒会でも土田酒造が一番人気!
今の日本の酒造りの常識を打ち破る酒造りをしている土田酒造。その方法は、いわゆる「古い酒造り」に近づいています。その影響は日本酒だけでなく、社員のやりがいにも影響を与えているようです。
土田「今の土田酒造のやり方では、菌と対話できるので楽しいとみんなが言うんです。やっぱり、自分たちが作っていて楽しい酒をつくりたいですね」
そして「日本酒で日本を元気にしたい!」という土田さんのピュアで熱いメッセージにてプレゼンテーションは終了。
その後は、プチゲームとして「利き酒会」がもよされました。ラベルが隠された6本の酒のなかに、2本だけ土田酒造の日本酒があり、6種を飲んだ後に美味しいと思った日本酒を2つだけ記入するという趣向です。土田酒造にとっては「試される場」でもあるのですが、それを積極的にセッティングするところに自信を感じられます。
全員……とまではいきませんが、多くの人が土田酒造の酒を選んだようです。
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今回は20名以上の老若男女で、BRAND THINKING勉強会は盛況となりました。
土田酒造の酒造りについては、上記の記事でも見ることができます。連載記事の人気を受けて、開催された今回の勉強会ですが、今後も人気記事の登場者をゲストに招くなど、読者の学びに役立つ勉強会を開催していきたいと思います。
BRAND THINKING勉強会はリラックスしたカジュアルな雰囲気で開催していますので、皆様、お気軽にご参加ください。
取材・撮影/長尾和也
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