経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

常識破り。すべて生酛系の山廃酵母でつくる酒造り。#1

【土田酒造のブランド論】第1回

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群馬の山深い場所に、土田酒造はある。1907年創業。200年、300年続く蔵の多い中で、日本酒の世界では新しい部類に入る。しかし戦前にはすでに当時の日本酒品評会(現在の日本酒鑑評会)で何度も連続で入賞し、名誉賞を授与されるまでになっている。当時は今の数倍の酒蔵数。激戦だったことは計り知れない。現在でも積極的に海外賞にチャレンジし、数多くの受賞を果たしている。昔ながらの「生酛・山廃酵母」にこだわる酒造り。世界から評価を受けているその技術や根底にある考え方はなんなのか。6代目蔵元の土田氏に聴いた。

 

聞き手・文:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城

 

楽しくつくれば、酒は旨くなる。

——土田さんはもともとゲーム会社にいらしたんですよね?酒蔵を継ぐきっかけはなんだったのでしょうか。

私は4人きょうだいの末っ子。一番上が兄、姉が2人いて私です。小さい頃、一番蔵にいたのが私らしいです。蔵人の膝でごはんを食べていました。当時の蔵人のみなさんは「この子が継いだら面白いよね」と言っていたみたいですよ(笑)。でも大人になっても、お酒は弱かったですね。今でもグラス半分くらいで真っ赤になってしまうほど。兄もいましたし、ずっと継ぐ気はなくて、私はカプコンに入社して、ゲームをつくっていました。家でつくっている酒の銘柄もちゃんとわかっていなかったくらいなんです。会社員時代に、いつだったか、友人で飲み会をするときに、生原酒を実家から取り寄せて飲んでもらったら「うまいね!」となって、それでちょっと興味が湧き始めて、休みの日に酒造りを手伝ったりしたんです。やり始めたらどんどん興味が湧いてきて、両親や兄や姉と話して私が継ぐことになりました。そのときに父に言われたのは「親のためとか、儲かるとか、義務感で仕事をするな。楽しくつくると酒が旨くなる」。って言われたんです。当時はなにを言っているのかまったくわからなかったんですが、今となっては深いなあ、と理解できるようになりました。

 

酒の味にとことんこだわる先進性。

——土田酒造のルーツはどこにあるんでしょうか。

もともと新潟で酒造りをやっていたそうで、そこから群馬に移ってきたそうです。酒造りがうまく、それがどんどん広がって、酒蔵をやることになったと聴いています。2代目蔵元の土田國太郎は、利根酒造組合長、群馬県酒造組合会長、日本酒造協会会長、日本酒造組合中央会会長など要職をことごとく歴任した人で、「譽國光」を全国的に知られる銘酒にした人間です。こんな比較的新しい蔵で日本酒の協会の会長なんて、ましてや戦前。考えられないことと思います。当時は日本酒はつくれば売れる時代。お米もあまり削らないのはあたりまえでした。しかし、その当時でも法律で定められた限界までお米を削って酒の質を高めていたそうです。だからかなり評判がよかったんでしょうね。國太郎はのちに沼田町議会員、沼田商工会長、沼田商工会議所会頭にもなり、昭和28年には参議院議員まで務めていますから、人望もあったのだと思います。私の父も1993年頃から4割まで磨く、今で言う吟醸規格の酒をレギュラー酒でつくっていました。今でこそ、磨くのは当たり前みたいになっていましたけど、味には先祖代々とてもこだわりを持っていて、先駆けてきた歴史があると思います。

46D7785(敷地に湧き出る仕込み水)

常識破りの山廃仕込み宣言。

——ホームページにはすべて山廃でつくると宣言していますね。

7年前から取り組みをはじめました。山廃って、そうとう日本酒好きで通なもの、という認識があると思うんです。独特の香りがあり、味が濃く、ちょっと初心者では無理、というイメージがあると思うんですね。でも調べていくと、山廃って本当はちょっと違うということがわかりました。酒の味を安定させるために速醸という工程があるのですが、これは酒造りが発達する過程でできたもので、人工でつくった乳酸と酵母を付加するやりかたで、ほとんどの銘柄はこれによってつくられています。この感覚のまま山廃と同じ工程を行うと、あの独特な香りや味になるんです。しかし本来の生酛・山廃づくりというのは、自然の酵母を繁殖しやすい状態にする必要があり、手間もかかり、品質もなかなか安定しにくく、難しいとされています。ただし、成功すれば成分にペプチドの含有量が高くなるので、香りもより深く、雑味が残らずにスッキリした味わいが実現できるのです。飲んで頂ければわかりますが、これまでの山廃のイメージをガラッと変えるはずです。これを安定的に行える体制ができあがったので、昨年からすべて純米で、山廃仕込みで行う酒造りを宣言しました。

 

(第2回へ続く)

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土田祐士
株式会社土田酒造 代表取締役
専門学校を経てカプコンへ。ゲームづくりに従事する傍ら、休日に酒造りを手伝うようになり、28歳で蔵人へ。杜氏も経験し、現在は蔵元に。速醸での酒造りではなく、生酛系の山廃仕込みでの酒造りにこだわり国内外で数々の受賞を果たしている。

11/1(金)19:30〜土田氏参加のBRAND THINKING勉強会(@渋谷)を開催します。「常識破り。土田酒造のファンづくりの源泉を探る」ぜひご参加ください!詳細はこちら。

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