【効果が出なければブランド構築じゃない。第4回】
「ブランドをつくろう!」と思った時に、何から始めればいいのか悩む経営者は多い。おそらく、外部のさまざまなパートナーを検討するだろう。そこでブランディングのプロは何を考え、どのようなところに留意してブランドづくりを行っているのか。独自のビジネスモデルを持ち、成長意欲の高い企業群がクライアントに多い、株式会社パラドックスの執行役員ブランディング・プロデューサーで経営管理修士(MBA)、TCC会員でもある鈴木祐介氏にその極意を聴いた。
会社の将来をシミュレーションして言葉に落とす。
——ある程度ビジョンやミッションの方向性まで合意できたら、その後どのように進んでいきますか。
そこから先は、議論の内容を構造化して、ワーディングの作業に入ります。「何を言うか」、そして「どう言うか」を決めていきます。何の部分は議論で大きな方向性は出ていますが、「どう言うか」はその会社らしい言葉になっているかどうかが、大切。さまざまな言葉の組み合わせを検証します。ここの言葉は通常の広告の言葉とは違い、企業やブランドの判断軸を決める言葉になりますから、その言葉にしたときに、会社がどんな方向に行く可能性があるのかまで予測します。これで本当に成長するのか。差別化できるのか。検証とシミュレーションを繰り返します。しかし大切なのは、ここまでたどり着くまでのプロセスです。そこまでにメンバー全員の想いのこもった方向性を出せていれば、最終的な言葉はおのずと「これ」というものに収斂されていきます。ワーディングの作業の中で思うのは、最終的に言葉にするのは自分たちだけど、プロジェクト・メンバーのみなさんと一緒につくっている感覚はいつもありますね。
究極は自社の理念に共感した人を採用すること。
——決めたビジョンやミッションなどの理念を浸透させていくことは骨の折れる作業だと思うのですが、これをうまくいかせるコツはあるのでしょうか。
やっぱり決めたことをコツコツ実行できる会社は浸透も早いと思います。それとどうしても物理的な問題はハードルになります。全国展開している企業などは、なかなか浸透に時間がかかるかもしれません。物理的な距離が近く、コミュニケーション量の多い風土の企業では、理念浸透は早い傾向になると思います。また、業態として顧客先に常駐するスタイルの場合も工夫が必要かもしれません。どうしても常駐先の価値観に適応しようとするからです。浸透させていく時に、やはり人ぞれぞれ価値観に違いはあって当然だ、という視点を忘れないことです。20年以上培ってきた価値観があって、それを変えていくにはやはり20年くらいはかかるでしょう。だから、採用する時に自社の理念で採用するというのは、理念浸透のスピードを上げていく上で、とても重要です。
ブランドは現場の実践で、できていく。
——ブランドには、企業、商品、採用という領域が大きくあると思いますが、それぞれのブランドを育てていくには何がポイントになるのでしょうか。
月並みな言い方になりますが、「ちゃんとやる」ということです。ブランド構築は経営そのもの。企業の目的である理念をつくって、商品ごとにも理念があって、必要な戦略をつくり、そのための人材を集めるということです。これらの方針として、提供価値(=バリュー)があり、ターゲットの明確化を行い、どう市場に伝えるかという、広告やPRがあります。これをキチッと、決めたことをやるということです。とはいえ創業期は当然、売上はとても重要です。そのために短期的に臨機応変に対応しなければならないこともたくさんあるでしょう。そして売上が安定してくれば、次は採用。そして育成。その積み重ねが、長く続くブランドを育てていくと思います。会社を動かすのは結局、人です。彼らが常に理念を理解し、実践しようとすれば、360度、24時間ぜんぶがブランドにつながるはずです。その意味で、やはり理念浸透が一番大事なんだと思います。
第5回「目指す姿に会社を成長させるエンジンが、ブランド構築だ。」
第2回「理念を言語化することは、判断軸をつくり、覚悟を決めること。」
第1回「ビジョンが決まったら、すぐに走り出せる準備ができているか。」
聴き手・構成:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
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