経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

ブランド名は変わっても、 想いは残る。

【ベッセルホテルのブランド論 第1回】

_46a5387ベッセルホテルズを展開する、広島県福山市に本社を置くベッセル開発は現在(2017年1月)、全国にベッセルブランドのホテルを16店舗展開している。すでに22店舗まで出店が決定。2020年までに30店舗を目指し、アジアへの展開も見据えている。地方から世界へ。驚異の顧客満足と稼働率を誇るベッセルホテルのブランド論をベッセルホテル開発 代表取締役社長・瀬尾吉郎氏に聴いた。

 

文:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城

 

社名とブランド名が異なることのジレンマ。

——ベッセルホテルの始まりはなんだったのでしょうか。

「スリープイン」ブランドで全世界に運営するチョイスホテルズインターナショナルとの契約を解消したのは2010年1月でした。異変に気づいたのは、リーマンショックが起こる前の2008年3月頃。当時9店舗を運営していましたが、ホテルの稼働率が目に見えて落ちてきたんです。そのときは原因を探れず、そうこうしているうちに9月にリーマンショックが起こりました。会社が傾くほどの衝撃がありましたね。改めてスリープインの今後を見直しているうちに、2つの課題があると思ったんです。ひとつは、のれん料。ロイヤルティを支払っていましたが、ここがかなり経営的に圧迫していました。そして西日本以西しか出店できない契約の問題。私たちは「家族に愛されるホテルを目指す」というコンセプトで、スリープイン時代から展開していました。それならば全国に展開したいという想いもずっとあったんです。当時は、会社名とブランド名が違いましたから、誰も「スリープイン」をベッセルが運営しているなんて思わない。これでは採用の観点からもビハインド。私たちも歯痒い思いを何度もしてきました。思い切って契約関係を解消して、ベッセルの名でホテルを全国展開しようと、旗を振りました。

 

顧客満足度1位という勝算。

——かなり思い切った決断だったと思うのですが勝算はありましたか?

アメリカの調査会社J.Dパワーが出している顧客満足度調査というのが毎年ありまして、これは全国で100名以上の「顧客の声」が集まらないと、ランクインさえできない中小ホテルチェーンにとって大変厳しいランキングなのですが、私たちは表のランキングには出てきませんが、評価点数だけを見ると実はスリープイン時代に1位をとっていました。スリープインというワールドブランドがなくなることは確かに痛いですし、売上も下がるだろうと予想していました。それでも、私たちが培ったスキルは残りますし、売上が下がっても、のれん料を支払わなくていいのであれば、利益は残るだろうと。もちろん、社内からはかなり反発を受けました(笑)。ですが、ここで変わらなければ、本当に会社が潰れると思っていましたから。必死に説得をしましたね。私たちがスリープイン時代から大事にしてきたのは、顧客満足度を上げれば、売上はついてくる、という法則。顧客満足度とは、分解すれば、「きれいな客室」、「親切な対応」、「素早い対応」です。ここに愚直に応えていくことで、必ず売上は上がります。スリープインのマニュアルもありましたが、全く日本には即していなかったので(笑)、自分たちで試行錯誤して積み上げてきた自負がありました。そこに自信があり、強みだと考えていたので、ブランドを一気に変えて、全国展開への足がかりをつくろうとしたのです。

 

家族に愛されることしかしない。

——その後、急速に広がるベッセルホテルズですが、一番大切にしていることは何ですか?

もともと会長の澁谷が、アメリカへの研修中にスリープインに触れ、自ら契約をまとめて推し進めてきた事業です。立ち上げたときの想いを何度も聞いたことがあるのですが、「自分は仕事ばかりしてきて、休むこともなく、家族のことを省みることができなかった。だからたくさんの家族が気兼ねなく旅に出られて、ゆっくり滞在できるホテルをつくりたい」と思ったそうなんですね。スリープインは客室もゆったりしていて、家族向きだと考えたようなんです。この想いはベッセルにブランド名が変わってからも踏襲されています。だから手頃な値段で宿泊できる範囲の金額設定にしています。基本的にホテルの価格は各ホテルの支配人にまかせていますが、上限と下限を決めています。たとえ高く売れると支配人が判断しても、会社としての決裁がないと高く売れないしくみにしています。あと、例えば11㎡前後の狭い客室もつくりません。ベッセルホテルは全店シングル21㎡、ツイン26㎡と統一規格にしており、ベッセルインでもシングル15㎡前後の広い客室にしており、2名以上でもゆったりと宿泊できようにします。もちろん小さく客室をつくったほうが儲けは出やすいんです。でもやらないと決めている。それは「家族に愛される」ことしかしないと決めているからです。

 

第3回 愚直にまっすぐ。 ベッセルの軸は絶対にブラさない。

第2回 家族に愛されるホテルのために、やらないことを決める。

 

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株式会社ベッセル開発 代表取締役社長 瀬尾吉郎

慶應義塾大学商学部卒業後、大手生命保険会社に入社。2006年株式会社ベッセルへ。2010年、スリープインとの契約を解消し、「ベッセルホテル」ブランド立ち上げ責任者に。2016年6月、ベッセルホテル開発 代表取締役社長に就任。

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