【サムライインキュベートのブランド論対談 第2回】
サムライインキュベートは、日本のベンチャーキャピタルと言われる中でも異色の存在だ。「できるできないではなく、やるかやらないかで世界を変える」という考え方のもと、覚悟と志に共感したスタートアップに支援を行っている。現在はイスラエルなどワールドワイドにも展開をしている榊原氏に、BRAND THINKINGで連載も持つチカイケ氏がサムライインキュベートの理念や今後の展開について聴いた。
イスラエルを経済成長させることで平和にする。
チカイケ:イスラエルという国を選んだことに関してもう少し詳しく教えてください。
榊原:イスラエルは紛争が多い国です。当時は特に危ない国と見られて、他の国から手を差し伸べることが少なかった。経済成長よりも平和が先、という感じで。でも持っている技術はすごいし、これが経済の方に向いたら、すごいことになるんじゃないかと思ったんです。
チカイケ:イスラエルのスタートアップ支援をしながら、いずれノーベル平和賞なんか穫れるかもしれないですね。
榊原:ノーベル平和賞は日本を表現する”サムライ”として獲りたいと思っています。イスラエルは人がいい意味でとてもおせっかい。僕みたいな日本人が歩いているだけで、「どうした?」とか「メシにいこう」とか話しかけてきてくれる。ミーティングしてても、「何か助けることないか?」って必ず聴いてくれるんですよ。それで、こういう人紹介して欲しい、と言うと、その場で電話してくれますね。
チカイケ:そんなに温かいんですね。
榊原:はい。歴史的な背景もあるので、日本人には恩義を感じてくれているみたいですね。
自らもリスクをとってチャレンジしていることを示す。
チカイケ:榊原さんは色々なイベントに登壇されたり、メディアに出たりされてますよね。
榊原:むしろ、イベントでの登壇やメディアには積極的に出るようにしているんです。以前はいろんな方から「自分が前に出るんじゃなくて、後方で支援するのがベンチャーキャピタル」ということを散々言われたのですが、本当にそうか?と。起業家がすでにリスクをとっているんだから、誰よりもリスクをとらなければと思っているんです。
チカイケ:だからチャレンジして、依頼があれば、積極的にそれを話して、背中を見せるということですね。
榊原:はい。例えば海外のベンチャーキャピタルでは、自社エントランスにエンジンが置いてあったりする。「なんで?」と聞くと、投資先の製品で、「俺達がこの産業をつくったんだ」とか言うわけです。
チカイケ:そのくらいコミットしているという証ですよね。
榊原:そうですね。そして、起業家たちも資金提供を受けることで、自分たちの会社を劇的に成長させたいんです。そのためには経営者にアドバイスできる力がとっても重要。特に海外では「スマートマネー」を望む起業家が多いですね。
ゼロからイチをつくりだすことにこだわりたい。
チカイケ:榊原さんの投資の基準は、とてもベンチャーキャピタルとは思えませんよね。
榊原:そうかもしれないですね(笑)。その企業が闘おうとしている市場規模はまず見ません。
チカイケ:通常のベンチャーキャピタルとは真逆ですよね。
榊原:経営者自身が社会の何を解決したいか。そこに共感すれば投資します。
チカイケ:なぜマーケットは見ないんですか?
榊原:すでにあるマーケットで、有望なビジネスに投資するって、ゼロからイチをつくりだすこととはまた別の話だと思うんですよ。僕は社会でまだ解決されていない課題に対してトライするビジネスを応援したい。だからでしょうね。
チカイケ:イスラエルの次はどこに行こうかというのは決めているんですか。
榊原:ほぼ決めていますが、まだ秘密です(笑)
チカイケ:具体的に決まっているんですね!楽しみです!
榊原:人がやってないことをするからブルーオーシャンを切り開けると思っているので、そういったエリアに行くつもりです。
第3回「ありがとうと、恩返しする気持ちのある起業家は成功する。」
第1回「サムライの心を持って、 世界で一番のインキュベーターになる。」
聴き手:チカイケ秀夫 構成:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
株式会社サムライインキュベート代表取締役 榊原健太郎(写真左)
関西大学社会学部卒業後、日本光電へ入社。その後、アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)、電通ワンダーマンなど。グロービス経営大学院大学でMBA取得。2008年、株式会社サムライインキュベート設立。経営者の志と覚悟に共感したシード期と言われるごく初期のスタートアップから支援を行う。2014年5月からイスラエルに移住し、日本初のインキュベーターとしてブランチを設立。ワールドワイドな展開を視野に入れている。
パーソナル・ベンチャー・キャピタル 代表 チカイケ秀夫(写真右)
デザイナーの経験を経て、GMOインターネットグループで新規事業などさまざまな事業を経験。2015年よりパーソナル・ベンチャー・キャピタルの代表として活動開始。スタートアップ企業にブランディングを広めることを使命に、数多くのサポートを行っている。さまざまな企業のチーフ・ブランディング・オフィサー(CBO)を務める。
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