【ロットのブランド論 第1回】
ロットは埼玉県戸田市を中心に飲食店を30店舗を展開する会社。戸田公園駅の周囲100メートル以内には7店舗を構える高密度ドミナント出店を行う異色の企業だ。その背景には、「埼玉を元気にする」という明確な企業理念がある。栄枯盛衰の激しい飲食業界で成長を続ける秘訣とは何か。創業者の田子英城氏(写真中央)にこれまでの歩みを聴いた。
※写真はロット創業メンバー。左から武山氏、田子氏、鈴木氏。
戸田に、俺たちが行きたい店はない。だからつくろう。
——ロットの始まりは戸田公園駅前の「Café & Dining SUN」ですよね。
当時私がアルバイトしていたお店のマネージャーだったのが、一緒に会社をつくった取締役専務の武山です。1歳だけ武山の方が上でしたが、お互いに戸田市出身だったこともあって意気投合。もともと起業したいという思いがあったので、いくつかビジネスのプランは温めていたんです。その中でも飲食にしたのは、「戸田って俺たちが行きたい店ってないよね?」というのが出発点だったと思います。2000年当時は、戸田市内に3ある駅前には、本当になにもありませんでした(笑)。2人でアルバイトで貯めたお金をはたいて現在の店舗になっている場所を借りましたが、飲食業の経験なんてゼロでしたから、何からやればいいかわからない。ホームセンターで材料を買い、友人なども巻き込んで、自分たちで内装を仕上げていきました。そのくらい、お金がなかったんです(笑)。取締役の鈴木と出会ったのもその頃。彼は飲食店の厨房の経験がありました。しかも4年間も。モノづくりが好きな鈴木は内装づくりも楽しんでいましたが、そのまま一緒に店舗を運営することになりました。これがロットのまさに第一歩です。走りながら考えてきた、といえば、格好いいですが、今思えば、危険なほどの見切り発車ですよね(笑)。
創業当時から3人に役割分担ができていた。
——創業の大変な時期を乗り越えられた要因はなんでしょうか。
僕は基本的には現場に入らないと決めていました。僕が現場に入ってしまうと、日々の業務に追われ、会社全体が見にくくなってしまいます。当時は言語化されていなかったものの、何もない戸田を元気にすることが目的だったから、1店舗だけ出して終わるということは考えていなかったんです。だから自分は会社のビジョンを徹底的に考えるようにしていましたね。今もそうですが、僕は会社の方向性を語り続ける。取締役専務の武山は、そのビジョンを数字に落として戦略・戦術を練る。実現までのロードマップを描くんです。そして、実際の店舗の運営は取締役の鈴木に任せる。この体制は創業当時からまったく変わっていません。それぞれが得意な分野に注力し、たった1店舗の時代から先を見据えて経営を行ってきたことが、早めに利益を出していく要因になったのではないかと、今になって思います。創業から2年ほどで3店舗目ができました。北戸田駅前の「お好み焼きじゅうじゅう」が大当たり。毎日大行列だったんです。当時25歳。今思えば、一番、儲かっていた時期かもしれません。
成功をトレースするな。という教訓、3000万円。
——順調に成長していく中で、今のロットの礎になっているのが光が丘と与野での失敗ですか。
3店舗目が大当たりしたので、これはいけると、光が丘にまたお好み焼き屋をつくりました。ベッドタウンだから利益は十分に出るだろうという安直な考えで、出店を決めてしまいました。イメージで知っているだけで、知らない土地なんだから、ちゃんと調査などすべきだったんです。その頃、イオン与野店にも出店依頼がありました。ここもお好み焼き屋。儲かってますからイケイケですよ。銀行から3000万円借りて、内装もちゃんとした会社にお願いして、とてもお金をかけて出店したんです。どちらも開店当初は繁盛しました。しかし、だんだんと赤字が増えていく。あと2週間で資金がショートするというところまで当時は追い込まれました。なぜ赤字になっていったかというと、僕らはあまり現場に顔を出さなかった、というところに尽きると思います。現場に任せるではなく、丸投げになっていた。そして、自己流で成功してしまったがために、その成功をトレースすれば儲かるだろうと思ってしまったんです。そこから「業態集中ではなく、地域集中」、「飲食ビジネスを本気で学ぶ」という、今のロットにつながる2つの基本ができあがりました。後にも先にも、この2店舗がロットの歴史の中での唯一の撤退になりました。
聴き手・文:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:梅原 渉
株式会社ロット 代表取締役 田子英城
大学在学中の2001年に会社設立。何もない戸田を元気にしたいと、戸田公園駅に今もある「Café & Dining SUN」をほぼ手作りで出店。社員を信じて任せる手法を貫き、直営で30店舗を展開するまでに。2017年、山崎将志氏へ社長交代。次のステージへさらなる事業展開を目指す。
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