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ブランドを、理論とかフレームワークだけで語るな。

エステー エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター 鹿毛康司

【ブランドは愛だ! 第1回】

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エステーといえば、「消臭力」や「米唐番」など、話題の商品を次々と投入し、独自のブランディングを築き上げている企業だ。またCM好感度調査では常に上位にランクインするユニークなCMをつくる企業でもある。「大手企業よりもCMに投下できる予算は遥かに少ない」と言う鹿毛氏。それでもなぜ話題のCMを生み出し、さらには独自のブランディングをし続けることができるのか。戦略からコミュニケーションさらにはクリエイティブまでを統括する日本で唯一の存在とも言える鹿毛氏に、BRAND THINKING編集長・深澤が「ブランドとは何か」を聴いた。

 

ブランドは、顧客のものという大前提。

(編集部:取材はブランドとブランディングという最も根本的な熱い話からはじまりました。)

深澤:ブランディングといえば「売れ続けるための仕組みづくり」と言われます。僕の場合つまり「ファンづくり」といつも説明していますが、鹿毛さんはどのようにブランディングやブランドを捉えて仕事をされていますか。

鹿毛:深澤さん、少し違うかなあ。「売れ続けるための仕組み」とか「ファンづくり」とか、教科書にはどこかにそう書いてあるのかもしれないけれど、ブランディングの本質ではないような気がします。例えば、深澤さんが今叩いてるMacBook。なぜMacを使っているんですか?

深澤:スティーブ・ジョブズがAppleに復帰した1997年の「Think Different」シリーズのCMを見て感動して以来使い続けています。大げさに言えば、人生そのものというくらい好きですね。

鹿毛:そうでしょう?(笑)僕もそうです。1992年からずっとマックを使ってます。MBA獲るのにアメリカに行って、その頃の日本はウインドウズもオフィスもない時代。大学のパソコンがMacintoshだったの。パソコンなんてほとんど初めてで、恐る恐る使ってみようかなと触ったら、Macが自分に話しかけている気がしたもの。「僕、そんなに威張ってないよ」、「なんなら音も出るよ」って(笑)。かわいいなあ、なんて愛らしいんだろうって思って、それまでの難しいパソコンのイメージはどこかに消え去ったよね。果たしてこれまでジョブズは「Appleのブランドとは仕組みづくりだ」とか言ったか?って話なんだと思います。

深澤:確実に言ってないですよね…。

鹿毛:そう。私たちの仕事は「Macのファンづくりです」とか言われたら深澤さんどうします?

深澤:絶対に使わないですね。

鹿毛:でしょう。ブランドって、企業が提供するけれど同時にお客様のものなんだと思う。企業の視点だけの仕組みづくりなんかじゃないと思う。ブランドってそもそも誰のものかというところから話を始めないと、議論が成り立たないと思ってこんな話をしています。そのMacは誰のものですか?

深澤:このMacも、Macへの想いも、、、私のものですね(笑)。

 

ブランディングは、愛情づくり。

深澤:ブランドとブランディングは違う、ということですね。

鹿毛:そこを混同している人はかなり多いですね。ブランディングの主語は企業。ブランドの主語はどこかお客様のような気がする。ブランドをマネジメントする観点に立てば、いろんなフレームワークだとか、理論とかそういうのを駆使したいのはわかる。ただ、仕組みづくりなんてふうに思ってブランディングしていたら、その時点でお客様のことをすでに考えてないし、お客様のものであるブランドを考えてない事になりますよね。

深澤:そうすると、鹿毛さんは企業側から見るブランディングをどのように捉えていますか。

鹿毛:お客様と作り上げるものがブランディングだと思う。くさい表現だけど、愛情づくりだと思っています。結局、世界を変えてきたブランドをつくった人たちはそれをやりましたよ。どうでもいいブランドは、しくみがどうのとか、表面的なそんな話ばっかりしている。お小言いうとね、BRAND THINKINGはそんな話が多くてなんか危険だなあと思っていました。

深澤:BRAND THINKINGでも、ちょっと多かったですかね…(笑)。

鹿毛:例えばネットの世界では、誰がどうアクセスしてるとか、これだけ分析できるじゃないですか。でも手法の話ばかりされていてお客様の事を考えてないことは多い気がしてるんです。お客様の心とかそういうものではなくて、お客様の足跡だけを見て分析して、「こうやればページビュー上がりますから」って言っているように聞こえたりします。どうやってお客様を喜ばそうかって話がすっぽり抜けている。ブランドはお客様のものという勝手な私の定義からするととても違和感を感じます。KPIは必要ですが、それは目的ではないはず。テクニカルなことだけで終始するんではなくて、お客様がどうしたら喜んでくれるか。それを徹底的に考えることを忘れないようにしないといけないと思ってます。

_46B8670鹿毛康司氏(左)と編集長の深澤(右)

 

ターゲットって言葉を禁止しよう。

深澤:どうしたら成功するのか、そこに法則を求めてしまいがちです。

鹿毛:とてもシンプルなことなんですよ。お客様は、嬉しいからお金を払うんだよね。さっき、昼に魚の定食を食ってきたけど、うまいから、その価値があるから750円払うわけですよ。ごちそうさまって気持ちを込めて。その店に行って何もせずに僕らは750円払わないでしょう。お客様の喜びをカタチにしたのが売上なんじゃないだろうか。その喜びをどう企業は提供するか、その努力の仕方によっては利益が出る。そう考えると成功するとは、お客様の喜び、そしてその「ブランド」が重要になってくることがわかる。ITが発達して、分析できなかったものを分析できるようになったけど、ブランドはお客様のものであるという大前提が抜け落ちてる会話が多すぎると思っています。結果、成功しないよね。

深澤:消臭力も、顧客のものである、と。

鹿毛:もちろん。決して僕らのものじゃない。それを買っていただいて使って喜んでもらっている人のもの。消臭力は数百円で、関与度の低い商品ではあるけれど、いろんな意味でいかにその人の生活の中におじゃまさせてもらえるか、ある時は愛着さえも持っていただけるか。お客様のために消臭力のブランドをおつくりするみたいな。震災直後、日本初の商品CMとして消臭力CMがオンエアされた後、ある東北の人がこんなことを言ったんですよ。『家族を無くしてそれを考えてばかりいた時に、消臭力のCMで一瞬、何も考えずに笑うことができた』と。それってエステーのものではないですよね。その方のものですよね。

深澤:ブランディングするにはターゲットもしっかりと設定されているのでしょうね。

鹿毛:横道にそれるけど、その「ターゲット」って言葉が違う話にしちゃんだよね(笑)。なんでマーケティングの言葉って、戦争用語なんだろう。「ターゲット」って標的って意味ですよね。それって「お金を払わせる餌食」みたいな話になってしまうんですよね。みんなマーケティングをやっている人はこの言葉のせいでお客様のこと完全に忘れてしまうんじゃないかなあ。私は「喜んでもらうお客様」と呼び方を変えてます。そうしたら、お客様に「何をどう喜んでもらおうか」という、当たり前の思考になれるんですよ。世界からターゲットって言葉を禁止にしちゃえばいいんだよ(笑)。

 

 

第4回「消臭力は、遊べるブランドを目指してきた。

第3回「人の心の奥底にある何かを見つけないと、いいクリエイティブはつくれない」

第2回「みんなの気持ちの集大成が、ブランドをつくっていく」

 

聴き手:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城

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鹿毛康司
エステー株式会社 執行役
エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター

早稲田大学商学部卒業後、雪印乳業(現・雪印メグミルク)へ入社。1993年、ドレクセル大学にてMBA取得。2003年、エステーへ。執行役クリエイティブ・ディレクターとしてエステーのコミュニケーションを統括。戦略立案から作詞作曲、CM監督までも手がける。同業他社の予算の1/5ほどの中、次々とCM好感度上位を獲得。2011年8月には消臭力のCMが好感度日本1位に。全日本CM放送連盟(ACC)ゴールド受賞。グロービス経営大学院准教授。




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