経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

インターネット広告におけるブランドセーフティー問題

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一般的な「デジタル」施策の捉え方

「デジタル」というキーワードは,毎日のようにメディアを賑わせる重要なキーワードです。ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるデジタルトランスフォーメーションに表されるように,企業の経営層ではデジタルをどのように活用して経営課題を解決していくのかがテーマとなり,マーケティングやセールスの現場では顧客データや販売データをどのように活用していくのか,またどのような考え方や技術を使って実現していくのかが問われています。

その中でインターネット広告は,検索連動型広告に見られるように顕在顧客に対してのアプローチやデータを活用したターゲティングなど,どちらかといえば効率的な顧客の獲得といった販売促進ツール視点で様々な手法が開発されてきました。

YouTubeなどを使った「ブランディング」視点で動画広告を活用することもありますが,その場合でも視聴回数,クリック数,滞在時間などの顧客獲得視点を踏まえたKPIで,その広告効果を考えていこうとするケースが多いといえるでしょう。

効率一辺倒のネット広告からブランド管理の視点へ

ところが,近年インターネット広告の世界においても「ブランドセーフティー」というブランドに関する概念が話題になっています。

そのきっかけは,米P&Gの最高ブランド責任者マーク・プリチャード氏が2017年にIABのカンファレンスで行なった「広告価値毀損」についてのスピーチ だと言われています。これは「広告主が望んでいないメディア(あるいは掲載面)に広告が掲載されていることは,ブランドにとっての価値毀損につながる」という趣旨で,P&Gの出稿した広告がYouTubeに掲載されていたヘイトコンテンツの前後に掲載されていたことが指摘され,実際にP&GがYouTubeやGoogleなどのデジタルメディアへの広告出稿を英国で一時的に取りやめたという事件が発端となっています。なぜそういうことが起きてしまったのかについては,YouTubeがCGM(Consumer Generated Media,注1)であることが関係していますが,インターネット広告が配信される仕組み自体も大きく関わっています。これらの仕組みについてはこのシリーズで詳しく解説をしていきますが,このスピーチをきっかけに,今まで主に「顧客獲得」「効率化」といった指標をベースに広告出稿を検討してきたインターネット広告の世界で「ブランド毀損」の考え方が徐々に広がってきました。

注1)CGM(Consumer Generated Media)とは,ユーザーが自由にコンテンツを制作してアップするメディアのこと。

インターネット広告はコンタクトポイントの一つ

実は,「ブランド毀損」の考え方は,望まないメディアや広告掲載面に自社の広告が掲載されるというブランドセーフティーばかりではありません。「広告スペース」の品質課題に加えて,消費者との接点となるコンタクトポイントで発生する危険性をどのように考えていくのかという大きな問題をはらんでいるのです。

現在,JIAA(一般社団法人日本インタラクティブ広告協会)では,インターネット広告に投げかけられている品質課題を次の6つに分類しています。

1) 不快な広告フォーマット(アドエクスペリエンス)
例えば,ユーザーが意図せず,あるいはユーザーの意図に反して広告から音が出たり,PCやスマホの画面全体に広告が広がってしまったりするなど,メディア体験やブランド体験を損なうことを指します。
2) 不正な広告仕様(マルバタイジング)
ユーザーの許諾を得ることなく広告そのものに何らかのプログラムを埋め込み,動作させることなどを指します。
3) 違法・不適切な広告表現
違法,あるいは不適切な表現,虚偽の内容に基づく広告などを指します。
4) ステルスマーケティング
広告やPRであることを表記せずにタイアップ記事などを掲載し,結果として消費者を欺いてしまう手法などを指します。
5) 不適切なサイトへの広告掲載(ブランドセーフティー)
広告主が本来掲載するべきでないメディアなど,自らの掲載ポリシーに反する広告スペースに広告が掲載されてしまうことなどを指します。
6) 広告費の搾取(アドフラウド)
消費者が実際に見ることができない場所に広告が掲載されているのにもかかわらず,広告費が請求されることなどを指します。
(出所:JIAA編著『必携インターネット広告』インプレス(2019),P198を参考に補足)

これらの分類を改めてみてみると,ブランド毀損の危険性は広告スペースの問題ばかりではなく,いたるところに潜んでいることがわかります。

ブランドを毀損する危険性の理解と対応

インターネット広告による「ブランドの毀損」というのは,第3者によって自社のブランドが傷つけられ,結果としてブランド価値が低下してしまうことのように思えるかもしれません。また,「ブランドセーフティー」とは,広告を扱う広告会社や広告スペースを提供するメディアが責任を負うものであり,自らが対策を講じるものではないと他人事のように感じるかもしれません。

しかし,デジタル特有の仕組みに対しての理解が不足していたり,あるいは過度な効果や効率を追い求めたりするが故にブランド毀損の危険性に気がつかず,いつのまにかその仕組みの中に巻き込まれ,ブランド自身が自らのブランド毀損を招いてしまう危険性も多くあります。

さらに,ブランドの毀損が,消費者がその企業や商品に対して感じている価値を損なうものであるという立場に立てば,「自社はブランディングをしていないから」「守るようなブランドではない」と考えるべきではありません。やはり,第三者に任せることなく企業の価値としてのブランドを守り,どのように毀損要因を取り除いていくのかをより積極的に考えていく必要があるのです。

田村 修

Digital Life Lab. 
田村 修

獨協大学経済学部経済学科卒業 東京理科大学大学院 経営学研究科技術経営専攻課程終了(技術経営修士/MOT) 大学卒業後,総合広告会社に入社。11年の営業を経て、インターネット広告メディアレップのスタートアップメンバーとして出向。インターネット広告初期より広告メニューの開発・営業・メディアプランニングに携わる。現在はデジタルマーケティングエージェンシーに在籍しながら,多方面にて活動 中。 東京理科大学大学院 経営学研究科講師(非常勤)、 専修大学兼任講師、産業能率大学兼任講師。 著書: 単著:田村修「いちばんやさしいデジタルマーケティングの教本」インプレス(2017) 共著:JIAA篇「必携 インターネット広告」インプレス(2019)

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