経営者は採用ブランディングにコミットしているか。
ツールがないと採用活動の効率が悪くなる。
私が書籍、「無名+中小企業でもほしい人材を獲得できる 採用ブランディング」(幻冬舎)を上梓して、早2年ほど経過しました。当時は採用ブランディングという言葉さえもがほとんど巷に流れていない状態でしたが、この2年ですっかり様子も変わりました。私の会社よりも、他の採用ブランディングと言っている会社がGoogleで上位検索や広告表示されるなど、採用ブランディングという言葉が採用の世界で当たり前になってきています。理念を全面に押し出して採用するという方式も、ベンチャー企業を中心に当たり前になってきました。これはメルカリの影響力が大きかったと思います。今は鹿島アントラーズの社長になりましたが、当時の社長小泉さんの採用の考え方は、まさに採用ブランディングそのものでした。傍目から見ている限りですが、そう思います。
採用ブランディングの重要性を認識する企業は確かに増えました。しかし、それを実践できている企業はまだまだだと思います。なぜそうなるかといえば、経営者の理解を得られにくいからです。私もセミナーなどに呼ばれたときにこの話はしつこいくらいするのですが、そもそも「採用ブランディング」のセミナーに来るにはまだまだ担当者や人事部長レベルで、経営者が自ら足を運んでくる場合はそう多くありません。ブランディングは経営戦略そのものです。よく経営の教科書に書いてある「理念、戦略、現場」の一貫性の重要性が説かれていますが、だとすれば、数十年、数百年変わらない理念に共感した人を入社させることが、経営効率を高めますよね、という至極シンプルな話が採用ブランディングです。戦略は数ヶ月や1年ごとに、また現場はそれこそ毎日変わる可能性があるのですから。
経営者が採用にコミットすることが、他社にとって大きな差別化になることは、単純に言えば、説明会に社長が出てくるだけで、大手企業にはできないインパクトを残す可能性があります。社長はその会社で一番理念や戦略について熱く語れる人のはずです。創業経営者だったらなおさらでしょう。将来の活躍人材こそが、会社の売上、利益に貢献する人材のはずです。理念浸透をしていくことが、業績につながるという調査結果は国内外で多数出ています。また弊社でも「採用時に理念・価値観を理解していた社員は、そうでない社員よりも、活躍するイメージを持っている」ということに対して正の相関関係があることを調査によって確認しています。
理想は全社で一致して採用に関わることで、活動そのものに一貫性を出していくことです。そのためには人事担当者的にはどうしても経営者の理解が必要でしょう。そうでなければ、現場の活躍人材を説明会に呼んでくることも、その部署の責任者の反対もあって、ままならないこともあるのです。とにもかくにも、ブランディングは一貫性が重要で、採用ブランディングはこうした社内の行動面が一貫することで、大きな成果を短期間に上げることができます。しかし、こうしたことが独り歩きしている懸念も感じています。あくまで当社での実績(前職も含めて)によりますが、年間10名以上採用する企業では、どう考えても採用HPや採用パンフレットがなければ効率が大幅に落ちてしまいます。手間がかかりすぎてしまうのです。どんなに社内の人に会って話しても、印象は忘れます。たまたま意気投合すればいいですが、大手企業で同じことが起これば、そちらのほうが印象として有利なのは間違いありません。それはもともと大手企業には頭の中に「いいイメージ」がつくられているので、それを強化してしまうのです。
採用ツールは、企業としての印象を担保する役割があります。ブランディングとは、ケラー(2001)の言うように「強くて、好ましくて、ユニーク」なイメージをつくるとも言いかえることができます。コピーやデザインで企業の確固とした「イメージ」を頭の中につくれること、そして家に帰ったあとや面接の前に読み返すことで、面談や面接での印象が加わり、イメージが強化されます。ツールがなかったら、ひたすら接点を増やし続けなければ、イメージは強化されないでしょう。しかもそれは忘れるのです。大手企業はTVCMや広告を日常的に打っていますから、それを見ること、そして会った記憶を呼び覚ますことで、またさらにイメージが強化されてしまいます。
年間10名以上採用する企業で、採用ホームページや採用パンフレットを制作しないのは、無謀な戦いに挑むようなものです。不可能とは言いませんが、効率は極端に落ちます。では、どのような採用ツールが望ましいのか。次回言及したいと思います。
- 2019年度採用はどう変わるか。
- 2021年度採用で変わること<採用ブランディングの観点から>その1
- 2021年度採用で変わること<採用ブランディングの観点から>その2
- BtoB企業が採用に苦戦する訳と勝てる唯一の方法。
- CHROこそ企業ブランドをつくるブランドマネージャーだ。
- CHROは、予算を達成するための人材戦略を描け。
- なぜインナーブランディングは進まないのか。
- なぜブランディングで売上が上がるのか。
- 就活生が評価する採用サイトランキングの意味。
- 採用が結婚に例えられるのに、価値観が疎かにされている現実。
- 採用において、条件勝負は必ず負ける。
- 採用における会社説明会の理想的構造。
- 採用ブランディングの出発点はインナーブランディングだ。
- 採用ブランディング式、効果の出る制作物とは。前編
- 採用を成功させるためのブランド論 実践編①〜独自の採用フロー構築
- 採用を成功させるためのブランド論 実践編②〜コンセプトの重要性
- 採用を成功させるためのブランド論 実践編③〜こんなツールは失敗する。
- 採用を成功させるためのブランド論。理論編
- 採用力を高めることで、企業の成長を後押しする。#3
- 採用広告はなぜ制作者によって結果が大きく違うのか。
- 採用広報を通常の広報と一緒にすると痛い目に会う。
- 採用時の理念共感の有無でつく入社後の20ポイント差。
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して弊社は一切の責任を負いません。