著作権は常に作った人にある。
ブランド構築をしていくと、特に企業ブランドや商品・サービスブランドの場合、ネーミングやスローガン、VI(ロゴ)を開発し、それを皮切りにHPや印刷物の制作が始まります。制作物に入る前には、入念な取材やワークショップを繰り返し行い、ブランドの性格をプロジェクトチームで決めていきます。いわゆる「ブランド・ブリーフ」を決めていくわけです。
これがあるからこそ、そのブランドにとって「必然の表現」が生まれるわけで、表現の素晴らしさだけにスポットをあてて、「ブランディング」とはやし立てている記事をよく見かけますが、ブランド構築の本質をしっかりわかったうえで記事にしているとは言い難いです。
広告などの制作物の場合、著作権は企業側にあると考えているみなさんが非常に多いと感じています。予算を投じるわけだから、当たり前だろう、と思うのは自然の流れなのかもしれませんが、著作権というのは、つくったものが生み出された瞬間に、作った人に発生する権利なのです。まず著作権というのは、この考え方が基本なのです。
これを作家に例えれば話がわかりやすくなります。出版社が作家に小説の執筆を依頼します。出版社は原稿料を小説家に支払います。この時、どちらに著作権があるのかといえば、小説家にあります。漫画家も同じです。だからしばしば裁判になります。
依頼した側(上記で言えば企業や出版社)が著作権が欲しい場合は、依頼された側(小説家や漫画家、制作者)から著作権を譲渡してもらうか、買い取る交渉をするわけです。お金を支払う側に、著作権は発生しないんですね。なぜなら、その人がつくるわけじゃないからです。著作権は制作した側、生み出した側に必ずあります。まずこれが大前提です。
「開発」していくブランド固有の財産。
ブランド・ブリーフがある程度固まると、ネーミング、スローガン、VIと、だいたいセットで「開発」が始まります。なぜ制作ではなく、開発と呼ぶことが一般的か、です。
そのブランド固有の表現度合いが極端に高いこと、社名になれば、何十年、何百年と使用するわけです。それらをまさに「生み出す」ために、何百案と案を出していきます。試行錯誤回数や「生み出す」というニュアンスが極めて高いので、「開発」なんです。なので、このあたりの金額は一般的に高いですね。それには理由があって、上記のように、時間と手間がとてもかかるというだけでなく、ありとあらゆる媒体、ツールに使用されていきますし、それを何年も使用するわけです。言葉とデザインの堅牢性と言いましょうか、普遍性がないといけませんから、試行錯誤の回数も増えていくわけです。
ネーミング、スローガン、VIの場合、著作権が制作者にあるとはいえ、実際は、あらゆる媒体に使用されることが自明のため、経験的にとくに問題になることはないように思います。
その後はHPや印刷物、広告などの制作に入ります。ここは多くの外部スタッフが関わります。彼らもまた同じように著作者です。関わった人に平等に著作権は存在します。「ブランディングは高い」という意見がありますが、極めてオーダーメード性が高く、前述したように「開発する」部分もあるからだと思います。
文:BRAND THINKING編集部
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