従来の日本企業の方法とは180度異なる方法。
ブランド単位でマネジメントを。
ブランド・マネジメントに関しては以前に一度、「ブランドは、何をマネジメントするべきなのか。」という題名でこちらに記事を書きました。そこでは、「ブランドとは結局、現場でつくられてくものだから、従業員がブランドのビジョンを踏まえ、行動できるようになること」をマネジメントすべきという記事でした。つまり、ブランドの問題の根幹は、人材や組織という、きわめて経営的な問題になっていく、という指摘で終わっています。
ではそれらに取り組むとして、実際の現場では何を「マネジメント」すべきなのでしょうか。
元電通で、中央大学大学院戦略経営研究科(中央大学ビジネススクール)教授、現在マーケティング学会会長でもある田中洋氏は『企業を高めるブランド戦略』講談社現代新書(2002)の中で、次のように分類しています。
レベル1:トレードマークマネジメント
①登録商法管理②ブランドデザイン管理③偽ブランド管理
レベル2:ブランド単位のマーケティングマネジメント
レベル3:ブランド価値マネジメント
1に関しては、権利を守る活動そのもののこと。2になるとレベルはグッと上がります。著書では、日清食品やP&G、日本リーバなどの事例が書かれていますが、例えば「ダヴ」というブランドであれば、そのブランドでPL(利益と損失)を計算し、ブランドをどのように育てていくのかを考えることになります。つまり「ブランド・マネージャー制度」ということになりますが、ダヴのマネージャーであれば、洗顔料だけでなく、スキンケア、ヘアケアなどいくつもの製品カテゴリーにまたがって、マーケティングが行われていくのです。ただし、多くの企業ではブランド本位のマーケティング活動はあまり行われておらず、依然として製品カテゴリー単位や流通経路単位が多く、「ブランド単位でマーケティングを見ていないマネジメントでは、ブランドを育成することは不可能に近い」(田中)。と指摘しています。
3は本質的な意味でのブランド・マネジメントです。「顧客へのブランドへの知覚、つまり顧客がいかにブランドへの価値を高め、より高い評価をブランドに対してもってもらうかを考えること」と田中氏は定義しています。そして、「ブランドとはブランドロイヤルティという言葉が象徴しているように、マーケティング活動において製品が売れ続けることを支える仕組みなのである」言及しています。
つまり、ケラーが言うところの、「強くて、好ましくて、ユニーク」なブランド連想をどれだけ顧客の脳内につくれるか。それをマネジメントする、ということ。
「従来、日本企業のマーケティングの特徴は、短いライフサイクルのヒット商品を打ち出し、次から次へと新製品を発売してはスクラップしていく点にある」とこれまでの依然として変わらない日本企業のマーケティングへの課題を田中氏は投げかけています。一方、ブランドをつくる、マネジメントするとは、できるかぎり長く売れ続けるロングセラーブランドをつくることで、真逆の考え方になります。
それは、田中氏の次の言葉がよく表しています。
「ブランドマネジメントとは、従来のマーケティングの組み換えなのである。つまり、どのような理念、目的意識を持って経営やマーケティングを計画し、実行するか、それが異なるのである。この意味において、ブランド・マネジメントという考え方は、経営やマーケティングの流行コンセプトとは決定的に異なっている」(田中)。
意志こそが、ブランドを育てるということなのだと思います。
文:BRAND THINKING編集部
- アイデンティティがないから、ブランドにならない。
- いい表現にあるX=YZ。
- ケラーのブランド・レゾナンス・ピラミッドとは何か?
- なぜインナーブランディングは進まないのか。
- なぜブランディングで売上が上がるのか。
- なぜブランドにビジョンが必要なのか。
- ブランディングとマーケティングの違い。
- ブランディングを、数学の証明のように説明する。
- ブランド・ストーリーはつくるものか。
- ブランドが「資産である」とはどういうことか。
- ブランドが消える理由。
- ブランドづくりにおいての、大切にしておきたい考え。
- ブランドとブランド構築の違い。
- ブランドは売上に貢献するか。その1
- ブランドは売上に貢献するか。その2
- ブランドは日々のオペレーションでできていく。
- ブランド構築と著作権。
- ブランド構築はお金次第か。
- 制作物だけでブランドはつくれない。
- 商品にはライフサイクルがある。理念にはない。
- 広告だけの差別化に意味はない。
- 広告より組織行動の方が重要。
- 選択につながるイメージをつくれているか。
- 風を見極めろ。やらなければ一生、ブランドはできない。
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