ブランド拡張には4パターンある。
キン肉マン側から見ての「ブランド拡張」
ビックリマンがキン肉マンとコラボして、「肉リマン」というシールを出しています。キャラクターはさまざまな展開がしやすく、これまでも挙げればキリがないほどですが、わかり易い例で言えば、「キティちゃん」がさまざまなグッズに展開を見せていますが、企業のキャラクターにまでなっています。ここまで来ると、キャラクタービジネスまで話が広がってしまうので、あくまでブランド拡張ということに絞って解説していくことにします。
そもそもブランド拡張とは、あるブランドが、別のカテゴリーに同じブランド名で参入していくことを言います。例えばアニメから始まったディズニーが遊園地をつくったことはわかりやすい例でしょう。今日のブランド論を形作ったアーカーはすべてのブランド拡張は4つに分類できるといい、それを「よい」拡張、「さらによい」拡張、「悪い」拡張、「悲惨な」拡張と分けています。
①「よい」拡張:拡張した製品、サービスをブランドが強化する。
新商品の認知を高め、市場開拓の時間を節約できること、そしてブランド連想を拡大できる。
②「さらによい」拡張:元ブランドを高める。
元ブランドの認知と連想を強化する。
③「悪い」拡張:ブランドが拡張を支援できず、妨げになる。
元ブランドが新しい製品に適合性と信頼を与えられない。ex.ハーレーダビットソンのワインクーラー
④「悲惨な」拡張:元ブランドを傷つける。
元ブランドの連想を薄める、望ましくない連想が生まれる、ブランドプロミスを実現できない。
拡張はブランドの中でも難易度が高い領域です。それは何かひとつ強力なブランドが出来上がっていることが第一条件で、それを基軸にして拡張することで元になった商品も、新たな商品もどちらにも相乗効果を生むことが望まれます。しかしそのカテゴリーで、元のブランドのように成功できるかどうかはわからないわけで、やり方次第では上記の「悲惨」な拡張にもなり得るのです。
それを防ぐ一つの方法は、なるべくブランド連想が近くなるであろう領域に拡張していくことです。シティホテルなら、ビジネスホテルというように、派生とも言える領域でブランド連想を強化しながら徐々に広げていく手法です。昔、ビックリマンは「アイス」にも進出したことがありますので、それも一例として挙げることができます。
さて、冒頭で紹介したビックリマンとキン肉マン。拡張という概念を使うとすれば、元は漫画のキン肉マン側から見てでしょう。昔は見ていたキン肉マンから離れてしまった人を、ビックリマンという全く異なる「商品」で思い出させることができます。ビックリマンから見れば、キン肉マンのファンが買うことで、ビックリマンを離れてしまった人たちを呼び戻すきっかけになります。熱狂した世代が近いこともコラボレーションの背中を押したかもしれません。
上記の分類で言えば、①か②に分類されると思います。ビックリマン側も、キン肉マン側も連想を強化できたことは間違いないでしょう。また今回のコラボレーションはイラストがビックリマンテイストになっていることも、さらにコラボ感を強め、双方でのWinを達成できていると思います。(肉リマンの第一弾はイラストがキン肉マンのタッチだった)
ここで注目したいのは、ブランド拡張となったキン肉マン側から見て、よくぞビックリマンに拡張した、ということです。ただ「キティちゃん」の例を見てもわかるように、キャラクターは一企業の「タレント」になることもあります。その意味でコラボ(キャラクタービジネス)や拡張に関して障壁が低いのでこのようなことがしばしば起こり得ます(キャラクターはよくパチンコにもなります)。
キャラクターではない場合の「ブランド」の拡張となったときに、その拡張が正しくできるかはきわめて高度なブランド・マネジメントを要するでしょう。
文:BRAND THINKING編集部
参考文献:デービッド・アーカー/ブランド論『無形の差別化をつくる20の基本原則』(2014)ダイヤモンド社
- 89年続く牛乳石鹸に強みがないわけがない。
- CMという魔物。
- アイデンティティがないから、ブランドにならない。
- いい表現にあるX=YZ。
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