組織の意識を統一しなければ、同じことを繰り返すだけ。
ブランド論に潜むエアポケット。
ブランド論は、1991年にアーカーが「ブランド・エクイティ」を上梓して、日本でも1994年に翻訳出版されて広がりました。そこからブランド研究はいろんな経路を辿り、さまざまな書籍が出版されてきました。マーケティング(ブランド)・コミュニケーションの分野の研究は発達し、さまざまな論が出てきました。研究論文もこの分野は充実しています。しかし一方で、ブランドを語る上で大変重要なはずの、組織(行動)の一貫性を出すための研究は、ブランド論の側から見ても、組織行動の側から見ても、実はそれほど研究は進んでいません。
インナーブランディングの重要性は、さまざなま書籍や論文で指摘されている通りですが、それをもう数段掘り下げた形での書籍、研究はコミュニケーションほど充実はしていません。しかし、アーカーが「まずはインナーブランディングが重要」と記述している通り、本来は組織行動でどう一貫性を出すか、という部分は今以上に議論されるべきことのはずです。
なぜ組織行動の一貫性のほうが重要なのでしょうか。それはごくごく単純な理由によります。組織全体がブランド・ビジョンを理解していなければ、それぞれの部署の現場で一貫性のない施策が取られてしまいます。単純にマーケティングと営業でとっている施策が異なれば永遠に一貫性は出ないからです。
また、組織行動で一貫性が出せれば、マーケティング予算を削減する効果もあるかもしれません。例えば、広告でわざわざ発信しなくても、現場の販売員が語れば済むこともあるかもしれないからです。
コミュニケーションの分野の研究が進んだのは、そのほうが定量データが取りやすい、というのはあるでしょう。インナーは社内によって状況が異なるので、一事例にしかなり得ない、というのもあるかもしれません。時間がかかることかもしれませんが、広告やプロモーションに予算投下を考えるのと同時並行で(時間がかかるので)、社内の組織行動の一貫性をどう出すかを、経営者自身が真剣に考えることは、単なるブランド論を越えて、組織づくり、教育、売上など経営全般に横たわる問題に取り組むに等しい、意味のあることだと思います。
組織行動の一貫性に取り組むということは、まさに経営そのものなのだと思います。
文:BRAND THINKING編集部
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