超簡単にケラーのブランド・レゾナンス・ピラミッドを解説。
顧客の心理変容を重視したケラーの理論。
現在のブランド構築の理論を形作ったのは、デービッド・A・アーカー。数々の著書をこれまでに出していますが、1991年に「Managing Brand Equity」を出し、日本では1994年に翻訳出版されています。とても乱暴に、そして端的に表現すれば、アーカーは「ブランドは企業の資産であり、それには①認知、②ロイヤリティ、③知覚品質 ④ブランド連想がある」と分解して説明しました。アーカーが論じたのが、あくまで「Managing」の視点から。つまり企業がブランドを開発、管理していく上での理論に中心が置かれていました。これをケラーは2001年に、「いやいくらブランド・エクイティがあったとしても、結局それを手に取る消費者がなーんにも思わなかったら、資産にはならないでしょ?そうなったら、ノーブランドと一緒!」と論じて、「顧客ベースのブランド・エクイティ」論を上梓したのでした。そのとき出した有名な図が、「ブランド・レゾナンス・ピラミッド」というわけです。
ブランドを認識する上で、人には理性と感性の2ルートがある、というのがこの図で表現されています。一番下にある「顕現性(Salience)」とは、まずそのブランドを認知する段階。いくらなんでもブランドのことを知ってもらわないことには、消費者は何も感じえません、というのが出発点です。企業側は、なんとか消費者に認知してもらえるようにしなければならない、という最初の壁をどう打ち破るか?を考えなければなりません。
次から本格的に2ルートに別れます。左側が理性的なルート。右側が感性的なルートです。理性的ルートの「パフォーマンス」とは、企業側から発信される機能面や価格、商品特性、特徴での効用が考えられます。これによって消費者が自分にとって必要かどうか?ということを「理性的に」判断するわけです。もう一つの「イメージ」は、例えば口コミによって与えられる影響、例えば他者が使用しての感想やそのブランドのパッケージや歴史、自分自身の使用しての感想などからつくられるイメージのことを言っています。ここで、顧客によってだいたいのそのブランドへの評価が決まるわけです。
その次の段階、理性的ルートの「ジャッジメント(判断)」では、それらの好意的な評価によって、他ブランドよりもこのブランドがいい理由を言える状態であることです。品質や効果、どれだけ信頼ができるか、などのことが言える状態です。一方の感性的ルートの「感情(Feeling)」は、このブランドを持っている、使用していることで、ポジティブな気持ちになったり、満足感を得ている状態を持っていることを表しています。
最終段階は、「共鳴」です。これは文字通り、ブランドに「共鳴」している状態のことで、消費者(=顧客)が、そのブランドに深く共感し、これは自分の(ための)ブランドだ、と思い、当該カテゴリーの中では、これを使用する、と決めている状態のことを指します。
自分たちの育てているブランドにおいて、一人でも多くの人が「共鳴」している状態であれば、それは強力な企業にとっての「エクイティ=資産」になるということをケラーは提示したのでした。多くのブランドは、このケラーの示すピラミッドの第1段階や第2段階にあたる施策を繰り出し、差別化を図ろうしています。しかし、そのブランド本来に、「強いビジョン」とも言える「個性」がなければ、第3段階以上の階層には行きにくいのではないでしょうか。飲料や日用品に見られるように、新商品をとにかく生み出し、売れなかったら消す、というブランドの生み方だと、ブランドを生み出すまでの熱量も、こだわりもなく、なかなか「共鳴」まで持っていくのは至難の業にならざるをえない現実があります。
文:BRAND THINKING編集部
- 「この媒体ならブランディングできる」は大きな間違い。
- 「リーン・ブランディング」はブランディングなのか。
- アイデンティティがないから、ブランドにならない。
- エントランスも、社長の発言も、コンセプトに紐付けろ。
- オピニオンリーダーに到達できるとブランドは長生きする。
- グローバルで見れば、ターゲットを絞っていない企業なんてない。
- なぜブランディングで売上が上がるのか。
- なぜブランドにビジョンが必要なのか。
- なんかカッコイイのつくってよ、でブランドはできない。
- ブランディングとマーケティングの違い。
- ブランディングを、数学の証明のように説明する。
- ブランド・ストーリーはつくるものか。
- ブランドが消える理由。
- ブランドづくりにおいての、大切にしておきたい考え。
- ブランドとブランド構築の違い。
- ブランドは、何をマネジメントするべきなのか。
- ブランドは売上に貢献するか。その1
- ブランドは売上に貢献するか。その2
- ブランドは想いによってつくられる。
- ブランドは日々のオペレーションでできていく。
- ラグビー日本代表の奇跡は理念浸透にあり。
- 一番早く、こだわりを持って、粘り強く取り組め。
- 何のためにターゲットを明確化するのか。
- 制作物だけでブランドはつくれない。
- 商品にはライフサイクルがある。理念にはない。
- 市場に解を求めるからコモディティになる。
- 広告だけの差別化に意味はない。
- 戦術ばかり学んでも活かせない。
- 炎上というムダ。
- 独占状態をつくれたら最強。
- 理念と戦略と現場。どれが一番大切か。
- 知名度さえ上がればいいのか。
- 自社の何がブランドなのか意識すること。それが強いブランドをつくる。
- 誰のためのブランドか、明確でなければ、共感は生まれない。
- 選択につながるイメージをつくれているか。
- 風を見極めろ。やらなければ一生、ブランドはできない。
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