制作物はブランドをつくる一部分。
「ブランドをつくったプロモーション」とか「パッケージだけでつくるブランド」とかよくこういう言葉を見ることがあります。
ブランドは、突き詰めるとプロモーションの成否に懸かっていると思っている方が多いという印象を持つことがあります。制作者はどうしても、いい表現(クリエイティブ)をつくりたいと思います。だから、表現だけで勝負したい、と思う職人的部分があります。
しかし表現がブランドをつくるというのは、本来のブランドの理論からすると、間違っています。重要な一部分ではありますが、本質ではありません。では、なぜ間違っているのでしょうか。
ブランド構築をファンづくりだと置くと、表現はブランド構築の1要素の中のさらに1手段です。
ファンづくりには3つの要素があり、
1,理念・ビジョンがある(ブランドにスタンスがある)
→人で例えれば、スタンスがある人はモテます。カッコイイですから。
2,ファンに価値を与えられる。
→いわゆるバリューがあるということ。好きになるメリットがあります。
3,見た目のかっこよさ
→(1)従業員の行動×(2)表現(クリエイティブ)の完成度。
こうしてブランド構築を分解していくと、表現(クリエイティブ)は、3-(2)で見ていただいたとおり、あくまで一手段です。
だから、1も2もないのに、3-(2)だけ頑張っても、いずれ「中身の無いブランド」という化けの皮が剥がれてしまいます。
ブランドを演じる存在をつくれるか。
また、今日のブランド論をつくったアーカーは「従業員がブランドを演じる」状態をつくらねばならないと書いています。上記で言えば、3-(1)。BtoCやBtoBの事業にかかわらず、いくらプロモーションで美しいことを言っていても、実際に動いている人たちの行動がともなっていなかったら、ブランドは脆くも崩れ去っていきます。
もともと知名度のないブランドが、並み居る大手のブランドの中で勝ち進んでいくには、1と2こそ重要で、そこが差別化の源泉になります。いきなり3-(2)の勝負を挑んでも、予算の差で負けます。消耗戦です。低価格競争の逆バージョンのイメージです。そして1,2がないと、従業員は行動できません。
表現だけで差別化をしようとしているブランドは実際にたくさんあります。大手企業は予算もあり、すでに認知度がありますから、積極的にプロモーションを打つことで、より広範囲にその商品の認知やイメージを届けることができます。むしろ1人あたりの効率性はこのほうが高いのです。しかし、中小企業のブランドがプロモーションの勝負に打っても、予算が大手企業ほどではないので、効率を生み出すほど、効果が出ません。そうであるならば、プロモーションよりも、アーカーの言うように、「社内の人間がまずブランドを演じる存在になる」ことを目指すことで、予算を初めからいたずらに使うこと無く、ブランド構築ができるのです。
文:BRAND THINKING編集部
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