今企業に求められているのは「健康経営」
今回は「健康経営」に取り組む企業を支援する会社『うぇる・なす』の笠井篤氏にインタビューを行いました。「企業が、従業員の健康を意識することが、どのようにブランディングにつながってくるのか」「なぜ今健康経営なのか?」、笠井篤氏のインタビューを掲載します。
国が推進する健康経営
――そもそも健康経営とは、どんなものなのでしょうか?
笠井 健康経営は、経済産業省が中心になり推進しているもので、端的にいうと「企業が従業員の健康に投資をすることで、会社の生産性向上や中長期的な成長を実現していく」ものです。
――でも、なぜ今「健康経営」なのでしょうか?
笠井 これには、日本という国の社会的背景があります。日本は世界一の高齢社会に突入しているんですよね。高齢者人口比率を比べてみると、2位のイタリアが22.75%で、1位の日本は26.86%。断トツで高齢者人口が多いんです。
そうなると、生産年齢人口が減ってしまい、結果として人材不足や企業成長力の低下に繋がります。これが国全体の課題となっているんですよね。
さらに、コロナ禍の現在、人事担当者が従業員の健康課題を意識しているという調査結果も出ています。今は大きな病気ではなくとも、精神面や運動不足、不眠や肩こりなどが、将来的に大きな病気の原因となっていくことが今意識されているんですよね。
――今のうちから対処しないと将来的に企業にとっても大きなデメリットになってしまうということですね。
笠井 また、従業員の平均年齢が上がることで、働く人のがん患者さんも増加しています。そういった従業員の健康課題が今非常に多くなっているので、これからの時代は、従業員の健康ぬきに企業の成長が見込めない時代が来ている、と言えます。
健康経営はどのようなブランディングになるのか
――健康経営はブランディングに繋がると思いますか?
笠井 僕は一過性のものではなく、今後企業ブランディングの一つの要素として、健康経営はデフォルトになっていくと思います。
――デフォルトになるということは、それだけブランディングとしても役立つわけですよね。実際健康経営に取り組むと、どのようなメリットがあるんでしょうか?
笠井 メリットは企業価値と社会的評価の向上ですね。モノやサービスが飽和している今、消費者の購買行動の大きな要因になっているのが「共感」です。会社の考え方やあり方に共感できるかどうかで、そのサービスや商品を買うかどうかを決める人が増えています。自社の利益だけでなく、働く従業員の健康や幸福も考えた経営をする会社はカッコいいし、消費者からも選ばれます。
ほかにも、健康経営を行っている企業は、金融機関の融資を受ける上で、中長期的な成長が期待できるとして金利や審査が優遇されるメリットがあります。
また、求職者からの評価が高まり、応募率が増えるというのもメリットですね。
『ジョンソン・エンド・ジョンソン』の研究結果では、従業員の健康に対して1ドル投資すると、「生産性の向上」「リクルート効果」「イメージアップ」など、3倍の投資効果がでるという研究結果も出ています。
他にも当社のお客様の事例として「社内のコミュニケーションが円滑になった」「社内全体の風通しがよくなった」という声も頂いているので、インナーブランディングの一環にもなると思います。
――さまざまなブランディングに繋がる可能性があるんですね。健康経営によるブランディング効果は高いと思いますか?
笠井 ブランディング効果は高いと思います。一部上場企業に健康経営を意識している会社が多いんですね。それはなぜかというと、株価に影響するからです。健康経営に積極的に取り組む企業が認証される「健康経営優良法人」という制度があるんですが、そのなかの上位500社である「ホワイト500」に選ばれると、かなり健康経営に関して優良企業ということになります。
さらにそれより上、1業種につき1社だけが選ばれる「健康経営銘柄」にまで認定されると、株式市場での評価も大きくプラスになるので、そこを狙っている企業も多いですね。
――どんな企業も「健康経営」に取り組んだ方が良いと思いますが、あえて絞るならどんな企業に「健康経営」がおすすめですか?
笠井 健康経営は採用ブランディングにも効果的なので、社員採用に積極的に取り組んでいたり、従業員の定着率に悩んでいる企業に、ぜひ行って頂きたいですね。
また、「ESG経営」や「SDGs」に取り組んでいきたい企業にとっても効果的です。SDGsのなかにも「すべての人に健康と福祉を」という項目があるんですよね。事業を通して社会課題に貢献しようと考えている会社には、健康経営は親和性が高いと思います。
健康経営はブランディングのデフォルトへ
健康経営は、今後のブランディングの重要な部分となっていくでしょう。今回は前編として「健康経営とブランディング」について主に伺いましたが、次回後編として「健康経営と採用ブランディング」を掲載いたします。
【笠井篤】
うぇる・なす共同代表
医療関連上場企業での、人事や広報職を経て、うぇる・なすを創業。
家族ががんになった体験から、「仕事も生活も全ては健康あってのこと」を痛感し、予防医療・企業向け健康経営支援事業を行っている。
うぇる・なすの福利厚生サービス
・健康研修の講師派遣
・企業への出張運動指導(キックボクシング・ヨガ等)
・健康関連コンテンツの企画・制作
・食生活改善個別指導
・健康経営優良法人認定取得のサポート
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