経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

ソーシャルメディアへの広告配信の悩ましさ。

ソーシャルメディアへの広告掲載

前回のエントリーでは,インターネット広告の配信方法やアドエクスチェンジの進化を解説しました。効果効率に着目して広告配信を行うとアドネットワークは自動的に効果の高いサイトを探して配信していきます。そのため「広告がどこに出ているのかわからないが,出稿の成果は出ている」という状況が生まれる背景は理解していただけたかと思います。

また,アドネットワークビジネスの仕組みに加えて,ソーシャルメディアの広がりも「インターネット広告におけるブランド既存」の問題を複雑にしています。

 

メディアの編集方針と広告枠

自社の広告を掲載する広告枠を考えるとき,一定の水準を担保する編集方針の元で記事が企画・制作されているメディア企業が提供する広告枠であれば,そのページが自社にとって妥当であるか否かはその編集方針や過去の記事内容を確認することで判断することが可能です。
あるいは,継続的に広告集稿(広告営業)を行なっている企業が制作しているサイトであれば,やはり記事内容や過去にどのような広告主が出稿しているのかを確認するだけでも,そのスペースに広告を出すか否かの判断は可能です。

ところがソーシャルメディアでは,従来メディアとして活動していない企業や個人であっても,自由にコンテンツを制作し世に出す事ができます。もし,そのようなサイトに広告を出す事を検討する場合,制作する企業や個人と広告主の間に信頼関係があれば掲載の可否判断は可能ですが,制作者の意図や編集方針などがわからない時にはその記事と同時に読まれる場所への広告掲載の判断は難しいと言えるでしょう。もし,記事の内容が広告の対象者に向けて不適切な内容であったならば,記事に対しての印象が広告主に対する印象にもつながってくる可能性があるのです。

一般にソーシャルメディアと言えば,FacebookやTwitter,Instagramなどの「ソーシャルメディアプラットフォーマー」が思い出されますが,広義で言えば,インターネットプロバイダーやポータルサイトが提供しているブログサービスを使って記事をアップしているサイトもソーシャルメディアと言えます。さらには,個人がレンタルサーバーを利用して自ら立ち上げたWebサイトも,その目的は様々ですが広義ではソーシャルメディアに含まれます。

 

ソーシャルメディアのビジネスモデル

ソーシャルメディアプラットフォーマーは企業によって様々なビジネスモデルを持っていますが,そのモデルの一つが広告ビジネスです。プラットフォーマーは,コミュニケーション機能を始め,多くのオリジナルサービスを開発しユーザーに提供しています。そして,それらのサービスの利用を目的に多くのユーザーが集まり,その集まったユーザーに対して広告を配信し,それがプラットフォーマーの収益源となっています。

また,YouTubeなどのプラットフォーマーでは,広告で得た収益の一部をコンテンツ投稿者にアクス数に応じて還元しています。コンテンツ投稿者にとっては人気の高いコンテンツを投稿してアクセス数が集まれば収益を上げていく事ができるため,質の高いコンテンツを継続して制作し投稿するインセンティブになっています。

さらに,個人や企業が立ち上げたサイトでも,アドネットワーク事業社と契約をすれば広告を自分で立ち上げたサイト内に配信する事が可能となり,さらに配信された広告量に応じて広告収益を得る事ができるため,これも人気の高いコンテンツを作っていくインセンティブになっています。

このように,ソーシャルメディアでは,人が集まる場所に広告が配信され,広告が配信されるとコンテンツの制作者にも収益の一部が還元され,それをもとに次のコンテンツが作られ,またそのコンテンツを見るためにさらに人が集まると言う循環が生まれてきます。

しかし,人を集めて広告収益を得ることに執着しすぎると,そのコンテンツの内容や質を問わず,どんなことをしても「人が集まりさえすれば良い」「人が集まりさえすれば,広告で収益が得られる」と言う考え方も同時に生まれてくるのも事実でしょう。

 

ソーシャルメディアにアップされるコンテンツの評価

ネット広告でブランド毀損が問題になるきっかけとなった事件の一つに,「ナショナルクライアントの広告が,反社会的活動の動画と共に動画共有サイトに掲載されていた」ことがあります。それは,プラットフォーマーの仕組みとして,広告主の支払った広告費が反社会的活動の動画を制作した側に流れることとなり,広告主が望んでいる,望んでいないにかかわらず,結果として「広告を通じた反社会的活動へのスポンサー活動と同義である」と批判を浴びました。
もちろん,動画共有サイトはサイト内にアップされる動画をチェックし,サイトの利用規約に反するコンテンツは削除する仕組みを持っています。しかし,大量に投稿される動画の全てを事前に精査するのは現実的には不可能ですし,さらにそのコンテンツの内容を評価しようとする場合,信条や表現の自由などの観点から見て,その評価基準の作成は容易ではありません。

それでも「ソーシャルメディアプラットフォーマー」はプラットフォーム内に投稿されるコンテンツ内容をチェックする方法を持ち,時にはその内容を管理することを社会的に期待され,いざと言う場合にはプラットフォーマーが不適切であると判断するコンテンツを排除する手法を持つ事ができます。
しかし,個人や企業がレンタルサーバーを利用して自ら立ち上げたサイトの場合は,そのコンテンツについて,その管理責任は全て立ち上げた個人や企業に属することとなり,それ以外の第三者に対して管理責任を問うことは難しいといえます。

 

広告はメディアとコンテンツの信頼を借りて成立している。

ここで改めて考えておかなければいけない事は,「消費者にとっての広告体験はメディア体験とともにある」という,基本的な広告の性質に立ち戻る事でしょう。

広告はメディアの記事やコンテンツとともに掲載されるため,広告体験は常にメディアコンテンツ体験と同時に行われ,その影響を受けます。したがって,信頼性の高いコンテンツと同時に掲載されている広告は,消費者に信頼性の高いコンテンツとともに受け入れられることになりますし,もし信頼性の低いコンテンツと同時に広告が掲載されていれば,消費者にとってその広告は信頼性の低いコンテンツと同レベルのものであると受け入れられてしまうことでしょう。

したがって,広告は信頼できるメディアを選択しながら出稿をする必要があり,同時に広告を掲載するメディアは常に消費者の信頼を得られるコンテンツを提供する必要があります。これは,広告に携わる全ての企業が意識をするべき問題であり,それはデジタルもアナログも変わる事はないと言えるでしょう。

このような視点をおざなりにしたままで広告掲載を続けると,信頼性の低い広告枠に自社の広告が掲載される事を放置してしまうことになり,知らず知らずのうちに自らのブランドを毀損させる危険性があるのです。

田村 修

Digital Life Lab. 
田村 修

獨協大学経済学部経済学科卒業 東京理科大学大学院 経営学研究科技術経営専攻課程終了(技術経営修士/MOT) 大学卒業後,総合広告会社に入社。11年の営業を経て、インターネット広告メディアレップのスタートアップメンバーとして出向。インターネット広告初期より広告メニューの開発・営業・メディアプランニングに携わる。現在は,デジタルマーケティングエージェンシーに在籍しながら,多方面にて活動中。 東京理科大学大学院 経営学研究科講師(非常勤)、 専修大学兼任講師、産業能率大学兼任講師、東京通信大学兼任講師。 著書: 単著:田村修「いちばんやさしいデジタルマーケティングの教本」インプレス(2017) 共著:JIAA篇「必携 インターネット広告」インプレス(2019)

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