株式会社クエストリー 代表取締役 櫻田弘文
小さくても勝てるブランディングの真髄 第3回
「店がブランドになる」ことを支援・プロデュースする株式会社クエストリーは、中小企業に眠っている価値を見つけ、育て、仕組みにして、伝えるところまでをサポートしている。解釈が多様であり曖昧とも言えるブランディングのプロセスを分かりやすく整理し、成果につなげてきた櫻田氏に、ブランド構築のための秘訣を訊いた。
聴き手・構成:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
迷ったときに戻れる軸はあるか。
ワークショップが成功か否かはどう判断されるのですか
成功の判断基準はとても難しい。ブランディングは即効性を求めるものではありませんから、どうしても2、3年はかかります。私は、そのお店のミッションができた段階で、全社員参加の発表会やってもらうようにしています。プロジェクトのコアメンバーに自分の想いを話してもらい、クレドカードをつくっていただいたりもします。大切なことは、経営者を含めた幹部が時間の経過とともにブレないこと。それが絶対条件です。変質したり風化していったりしてはいけません。「あれは勉強会だったから」とか、「あの時点でつくったものだから」と考えるようになってしまうと、プロジェクトを実施する前よりも悪い結果になってしまうこともあります。掲げたミッションを、ぶれずに深掘りしていくことが何より大切です。現実はミッションよりも、品揃え、接客、営業が最重要にはなりますが、それらとミッションをどう紐付けしていくか。様々なジャッジメントの軸をミッションにする。これは経営者が相当強く思っていないとダメですね。迷った時に、戻れる軸としてミッションが機能する状態になっていれば成功と言えると思います。
時間をかける。だから深く繋がれる。
成功と判断するためには、長期的な視点に立つことが重要ですね。
一社と長くお付き合いしないとダメだと思います。半年から1年くらいでは足りません。だから、2年は一緒にやりましょうという話をします。できれば3年くらいほしいですね。その会社の中に深く入っていく仕事にしたい。プロジェクトが終わっても、一緒にサポートできる体制をつくりたい。長くお付き合いできる関係、寄り添って見守っていける関係を作りたいと思っています。徐々にではありますが、お客様とそうした関係を築きつつあります。3年お付き合いしているお客様もいますし、先にお話した両国のちゃんこ料理のお店は9年になります。深いところでつながる。時間をかけてそうした関係づくりをしていくことが重要だと考えています。折に触れて、経営者は迷っているなと感じます。言葉の端々からそれが分かります。だから、まずは契約云々を抜きにして「一度お会いしましょう」とお伝えし、そこでトップの想いをヒアリングするんです。経営者がどうしたいと思っているのか。そこは対話で突き詰めるようにしていますね。
ミッションに合わないものは捨てていく。
決まったミッションを現場に浸透させるためのポイントは?
価値のタネを見つけて、それを一つに絞るのは本当に難しいです。いつも最後は3つくらいになります。そのままで終わらせてしまうと羅列になってしまうので、こちらから何案かご提案して、みんなで決めるようにしています。決まった後も飾り物にせず、顧客接点と紐付けるために現場に下ろしていくことが重要です。これは例え話ですが、あるジュエリーショップでおきゃくさま高価な商品を迷って買いました。支払いはローン。書類に記入をお願いされた時に、スタッフが差し出したボールペンがキャラクターものだったんです。もちろん書くことに問題はありませんが、この商品を買うのに「このボールペンで書けというの?」と思いますよね。あきらかに釣り合っていません。決まったミッションに合わないものを捨てていく視点が大切です。決まったことに対して合わないものを外していくだけでも、かなり一貫性がでてきます。排除しきれないもので、ミッションにつながっていないものがあれば設計し直すということも必要です。
(次回は、5月7日(月)に更新します。)
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