経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

2018.03.30

オイシックスドット大地のらでぃっしゅぼーや買収で考えられるブランド戦略。#3

3ブランド展開は金がかかるが…..。

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サブブランド展開か、エンドーサー機能をもたせるか。

オイシックスから始まった、大地を守る会、らでぃっしゅぼーやの相次ぐ経営統合、買収。これはうまくいくと仮定すると、のちのちのブランド論の事例になる可能性を秘めています。

珍しいのは、同じような売上の(急成長)企業が、比較的老舗企業をつぎつぎと傘下におさめたこと。そして、狭い市場の中で、どのようにこの3ブランドを管理運営していくか(=ブランドポートフォリオ)が問われるからです。

前回はOisixというひとつのブランドのもとに、サブブランドとして大地やらでぃっしゅぼーやを傘下に収める方法を考えました。これは、Oisixのマーケティング力を利用できるという点で有利です。Oisixが狙いたい市場の拡大に対しては一番有効な方法でしょう。

しかし大地にも、らでぃっしゅぼーやにも強烈なファンがおり、それぞれ独特な企業文化を有しています。現状、3ブランドとも据え置きされており、性急な統一ブランド化をしないのはその点を考慮しているからだと推測できます。文化を壊してまで統一ブランドにしても、現場モチベーションを保てない、というオペレーション上、致命的な問題にいきつきます。下手をすると、辞める人も続出するでしょう。だからこそ、というか、それ以前に発注、配送などバックヤードで統一できるところを手を付けるという方向を優先させているかもしれません。

もしこのまま3ブランドを並立させる場合、それぞれのブランドの特徴をより際立たせなければなりません。そこで問題になるのは大地と、らでぃっしゅーやをどうポートフォリオするか、という問題です。大地も、らでぃっしゅぼーやも安全基準はとても厳しく、業界内や利用を検討したことがある人には、品質のいいイメージはあります。しかし、有機・低農薬野菜の宅配を使用したことがない人には、そもそも大地や、らでぃっしゅぼーやの違いもさっぱりわからないでしょう。

例えば、それぞれのブランド・コンセプトを

Oisix=手軽に便利に有機・低農薬野菜
大地=売上の一部を自然保護に還元
らでぃっしゅ=高価格・高品質な有機野菜

と分類したとしましょう。そうしたら、それぞれの知名度をオイシックスのマーケティング手法によって上げていかなければなりません。そのまま事業部ごとにこれまで通りやっていたのでは、何も変わらないわけですから。ただし、ブランドごとにマーケティング予算が必要になるので、Oisixのもとにサブブランドとして展開するよりも、割高になることは明白です。

ここでわかるのは、マーケティングコストを考慮すれば、Oisixのもとにサブブランドで展開するのがソフトランディングということです。そのほうがそれぞれの特徴を活かせるでしょう。もしくは「らでぃっしゅぼーやby Oisix」みたいに親ブランドとしてエンドーサー(保証)の役割を果たす、というやりかたもあります。

逆にほとんど取りえないだろうと思われる戦略は、3ブランドをすべてOisixで統合してしまうこと。こうすると、大地やらでぃっしゅぼーやの現ユーザーは離れてしまう可能性があります。なぜなら、これだけ狭い市場の中で、それぞれ200億程度の売上を上げてきたわけですから、信者とも言える相当なヘビーユーザーがいるはずです。ただし、これに関しても、他のプレイヤーが実質パルシステムのみという状況なので、とり得る戦略の可能性としてゼロとも言えないでしょう。

私の予想としては、Oisixのもとにサブブランド展開、もしくはOisixがエンドーサー機能としてなんらかOisix以外の2ブランドに影響を及ぼす、だろうと考えています。文化もかなり違いますし(しかも大地やらでぃっしゅぼーやのほうが歴史的には圧倒的に長い。またらでぃっしゅぼーやはもともと大地と一緒だった)。さらにすでに社名で大地を入れています。それぞれのユーザーを考慮した方法とも言えるでしょう。しかも先に言及した通り、ほとんど売上が一緒の経営統合。Oisixがとり得る戦略は、ブランド論的に見て、これしかないと考えています。

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むすび株式会社 代表取締役
深澤 了

ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター、BRAND THINKING編集長。日本ブランド経営学会副会長。2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン酒チャレンジ2018銀賞、2019金賞、フランスKura Master2019金賞。埼玉県戸田市では「埼玉戸田・かけはし・純米吟醸微発泡」と、立て続けに日本酒をプロデュース。山梨県都留市ではネクタイブランド「TSURUIKI」の立ち上げも行う。クリエイティブ・ディレクター、コピーライターとしてFCC賞、日本BtoB広告賞、山梨広告賞など。雑誌掲載、執筆多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても"光る人材"が集まる採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。

むすび株式会社

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