経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

2017.10.27

採用広告はなぜ制作者によって結果が大きく違うのか。

制作者のほとんどは、経営に興味はない。という現実。

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理念や戦略を深掘れるスキルのある人は圧倒的に少ない。

採用市場が激化し、数年が経ちます。新卒、中途とも大手企業はますます採用できるようになり、中小企業は苦戦するようになっています。地方であればなおさらその傾向は強まるでしょう。新卒、中途の別にかかわらず、多くの企業は採用媒体を利用します。これが以前よりも効きにくくなっている、というのは応募者が全体的に大手志向に偏っているからでしょう。中途は企業側がスキルも求めるため、なおさら以前よりも採用しにくくなっています。

さて、この採用媒体の広告(記事)。書き手によって大幅に応募数が変わります。採用を市場全体として見た場合、応募者の流入経路が、媒体か、イベントか、もしくは紹介かと、限られていることもあり、一つひとつの流入経路がとても大切になってきます。多くの企業は前段の説明の通り、採用しにくくなっていますので、イベントや紹介を頼らざるを得ず、その分、採用費を圧迫します。

私は若い頃、新卒リクナビやリクナビネクスト、ガテン、とらばーゆなどあらゆる採用広告を制作し、その効果を毎週のように追いかけてきました。採用に携わった数はゆうに800社を超えていると思います。以下は、あくまでその経験値での言及になりますが、なぜ効果が出る人と、出ない人がいるのか、明確な答えがあります。

採用広告は、一度興味を持って詳細な記事を見られると、細かい待遇面などまで読まれる傾向にあります。それゆえ、応募に至らせるまでのテクニックがいくつかあります。給与事例は職級・職能別にバラエティに富んで、活躍人材の例を載せたほうがいい、とか。写真の細かいキャプションで社内の雰囲気を説明するとか、本当に細かい配慮が書き手に求められます。

しかし、そのようなことは書き手のほとんどすべてが実践していることですし、書き手のいる社内でも共有されることもあり、あまり差別化になりません。そもそも、福利厚生や待遇など、数字で比べられるものには、上には上がいます。結局より大きな企業には負けてしまうのです。また仮にそこに興味を持って入社してもらっても、そういう人は別の待遇のいいところが見つければ、そちらへ転職してしまう可能性も出てきます。

採用広告ひとつとっても、やはり理念や戦略をしっかりと記事で言及し、その上で細かいテクニックを充実させるほうが効果が出やすいと考えています。効果とは、もちろん応募効果もですが、入社して定着し、活躍人材になるという、採用の本質を見据えた上での効果です。しかし、残念ながら、制作する側は、理念や戦略など、そこまで興味がありません。やはり制作する人間は、「おもしろい」ことをやりたい、という人間が多いと感じています。世の中にインパクトを与えたいのです。その気持がいつもどこかにあるからこそ、炎上も起こりやすくなっているのか、と思います。インパクトも、その企業の理念や価値観の延長線上にあるインパクトであれば、意味のあることなのですが。

採用は、人の人生を変えますから、小手先の言葉で人は動きません。また小手先(=給与や福利厚生)に興味を持ってもらっても、上記の通り、辞めやすい人材です。そうではなく、理念や戦略という、企業にとって根幹を司る部分を深掘り、規定の文字数でなるべく深く書ききる。そうした制作者は極めて少ないと感じています。出会えればいいですが、発生確率が少ないので、なかなか難しいかも知れません。逆に、採用に関わる人間がそういうディレクションをすることで、今よりは効果が上がると思います。

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むすび株式会社 代表取締役
深澤 了

ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター、BRAND THINKING編集長。日本ブランド経営学会副会長。2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン酒チャレンジ2018銀賞、2019金賞、フランスKura Master2019金賞。埼玉県戸田市では「埼玉戸田・かけはし・純米吟醸微発泡」と、立て続けに日本酒をプロデュース。山梨県都留市ではネクタイブランド「TSURUIKI」の立ち上げも行う。クリエイティブ・ディレクター、コピーライターとしてFCC賞、日本BtoB広告賞、山梨広告賞など。雑誌掲載、執筆多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても"光る人材"が集まる採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。

むすび株式会社

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