制作者のほとんどは、経営に興味はない。という現実。
理念や戦略を深掘れるスキルのある人は圧倒的に少ない。
採用市場が激化し、数年が経ちます。新卒、中途とも大手企業はますます採用できるようになり、中小企業は苦戦するようになっています。地方であればなおさらその傾向は強まるでしょう。新卒、中途の別にかかわらず、多くの企業は採用媒体を利用します。これが以前よりも効きにくくなっている、というのは応募者が全体的に大手志向に偏っているからでしょう。中途は企業側がスキルも求めるため、なおさら以前よりも採用しにくくなっています。
さて、この採用媒体の広告(記事)。書き手によって大幅に応募数が変わります。採用を市場全体として見た場合、応募者の流入経路が、媒体か、イベントか、もしくは紹介かと、限られていることもあり、一つひとつの流入経路がとても大切になってきます。多くの企業は前段の説明の通り、採用しにくくなっていますので、イベントや紹介を頼らざるを得ず、その分、採用費を圧迫します。
私は若い頃、新卒リクナビやリクナビネクスト、ガテン、とらばーゆなどあらゆる採用広告を制作し、その効果を毎週のように追いかけてきました。採用に携わった数はゆうに800社を超えていると思います。以下は、あくまでその経験値での言及になりますが、なぜ効果が出る人と、出ない人がいるのか、明確な答えがあります。
採用広告は、一度興味を持って詳細な記事を見られると、細かい待遇面などまで読まれる傾向にあります。それゆえ、応募に至らせるまでのテクニックがいくつかあります。給与事例は職級・職能別にバラエティに富んで、活躍人材の例を載せたほうがいい、とか。写真の細かいキャプションで社内の雰囲気を説明するとか、本当に細かい配慮が書き手に求められます。
しかし、そのようなことは書き手のほとんどすべてが実践していることですし、書き手のいる社内でも共有されることもあり、あまり差別化になりません。そもそも、福利厚生や待遇など、数字で比べられるものには、上には上がいます。結局より大きな企業には負けてしまうのです。また仮にそこに興味を持って入社してもらっても、そういう人は別の待遇のいいところが見つければ、そちらへ転職してしまう可能性も出てきます。
採用広告ひとつとっても、やはり理念や戦略をしっかりと記事で言及し、その上で細かいテクニックを充実させるほうが効果が出やすいと考えています。効果とは、もちろん応募効果もですが、入社して定着し、活躍人材になるという、採用の本質を見据えた上での効果です。しかし、残念ながら、制作する側は、理念や戦略など、そこまで興味がありません。やはり制作する人間は、「おもしろい」ことをやりたい、という人間が多いと感じています。世の中にインパクトを与えたいのです。その気持がいつもどこかにあるからこそ、炎上も起こりやすくなっているのか、と思います。インパクトも、その企業の理念や価値観の延長線上にあるインパクトであれば、意味のあることなのですが。
採用は、人の人生を変えますから、小手先の言葉で人は動きません。また小手先(=給与や福利厚生)に興味を持ってもらっても、上記の通り、辞めやすい人材です。そうではなく、理念や戦略という、企業にとって根幹を司る部分を深掘り、規定の文字数でなるべく深く書ききる。そうした制作者は極めて少ないと感じています。出会えればいいですが、発生確率が少ないので、なかなか難しいかも知れません。逆に、採用に関わる人間がそういうディレクションをすることで、今よりは効果が上がると思います。
- 「◯◯ブランディング」というミスリード。
- CHROこそ企業ブランドをつくるブランドマネージャーだ。
- CHROは、予算を達成するための人材戦略を描け。
- スペックで採用するから辞める。
- ターゲットを明確化できない病。
- だから採用できないし辞める。
- なぜ自分たちの強みは気づきにくいのか。
- 予算の壁を越えて、話題をつくるコンセプトの活かし方。
- 何のためにターゲットを明確化するのか。
- 制作物だけでブランドはつくれない。
- 就活生が評価する採用サイトランキングの意味。
- 成果が私たちの意識を変え、それが次の成果を呼び込む。#2
- 採用において、条件勝負は必ず負ける。
- 採用における会社説明会の理想的構造。
- 採用ブランディングの出発点はインナーブランディングだ。
- 採用を成功させるためのブランド論 実践編①〜独自の採用フロー構築
- 採用を成功させるためのブランド論 実践編②〜コンセプトの重要性
- 採用を成功させるためのブランド論 実践編③〜こんなツールは失敗する。
- 採用を成功させるためのブランド論。理論編
- 採用力を高めることで、企業の成長を後押しする。#3
- 採用広報を通常の広報と一緒にすると痛い目に会う。
- 組織の価値観で差別化できたら強い。
- 組織の本当の強みは、意識すらされない文化の中にある。
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