給与、休日を充実させれば採用できるという罠。
理念を採用の現場で伝えていますか。
転職サイトDUDAが交通広告含め、キャンペーンを展開しています。キャッチコピーは「条件は、今よりいい会社。以上」。ある意味、これは転職者の気持ちとしては正しく、転職することで条件のいいところへ移れる可能性のある今を切り取ったコピーだと思います。古くから求人広告は条件での勝負が行われてきました。給与は高いほうがよく、休みも多い方がいい。社風もフランクな方がいい。そこを訴求する求人広告は非常に多いと思います。今は採用難の時代ですから、より高い給与でないと採用できないと考える経営者がいて当然ですし、不人気業界のサービス業や飲食業に限って言えば、そういう時代を通り越して、どうすれば人を確保できるのか、すでにわからなくなっているかもしれません。
もちろん、給与は高いに越したことはありませんし、休みも自由に取得できる方がいい会社でしょう。しかし、そこのみを押し出して採用した人間は、より高い給与のところを求めますし、より休める場所で働きたがります。これは採用業界ではよく聞く話です。せっかく採用しても、辞められてしまっては、なんのために採用や教育に投資したか?となります。採用や教育に直接的にかかったお金そのもの以上に、人が人に向き合った時間に空虚さを感じてしまうものです。
ではどうすれば簡単に辞めずに、活躍人材が採用できるのでしょうか。活躍するかしないかは、採用する前にはわかりません。というか経営者の視点で見れば、入社した人には全員期待したいでしょう。活躍して欲しいのです。しかし、スペックを重視して押し出し、採用すれば前述した通りになりがち。しかも、自分たちよりもさらに大きな企業のほうが、給与も休みも安定性もあるわけで、数字で測れる勝負はそもそも採用できないスパイラルに自分から陥っていることになります。
だから、スペックで勝負してはいけないのです。どんな企業にも必ず「いいところ」があります。そして絶対的に差別化できる部分が理念です。商品はコモディティ化することはあっても、経営者の想いやビジョンは決してコモディティになることはありません。理念をしっかりと提示し、そのための事業がこれで、その強みがこう。そういう話を堂々と採用の場ですべきなのです。それに共感した人こそ、理念と自己実現を結びつけて考えられる人。活躍人材になる可能性も高いでしょう。
業績とは、実行力、変革力、知の創出力(部門間を超えた)コミュニケーションで上がるのだそうです。その起点になるのが、ビジョン創出力(リクルートマネジメントソリューションズ・2009年)。このそれぞの間には相関関係があるそうで、だとすれば、採用の現場でも堂々とビジョンを提示すること。これこそが、企業の規模の大小ではなく、「今よりいい会社」の条件に入ってくるということに、多くの企業が早く気づくべきなのです。
採用は企業ブランド力向上への入り口なのです。
参考文献:リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所『日本の持続的成長企業 「優良+長寿」の企業研究』(東洋経済新報)2009年
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