顧客にとって、その差別化ポイントは「強み=マストハブ」になるか。
ところで、マーケティングにおけるポジショニングとは。
マーケティングの世界でポジショニングという考え方があります。市場のどの立ち位置で商品を売りだせば、他社のブランドよりも際だたせることができるのか。簡単にいえばそう説明することができます。そしていくつもの軸を考えだし、一番自社商品が差別化できるポジショニングマップをつくって、その立ち位置で売り出していくというものです。マーケティングで使用されるポジショニングマップのつくりかたはこの「軸の発見」が最大にクリエイティブな作業であること。ここは慣れないと、とても難しいと思います。
しかし、いわゆる伝統的なポジショニングマップの考え方は、他社商品との「差」を際だたせることはできても、「違い」を訴求するまでになり得ることは少ないといえます。なぜなら、軸の取り方によっては、当該商品(ブランド)の、固有の強みを活かせるとは限らないからです。
ブランド構築において、そのブランドを成長させるための究極は、顧客にとってブランドの差別化ポイントが「マストハブ=必須要件」になることです。そしてその必須要件が新しい商品カテゴリーを形成し、競合との競争を無用のものにしてしまう=カテゴリーナンバーワンになる道筋をつくってくれるものなのです。
差別化ポイントとは、ブランドの強みにあります。(そうでなくてはなりません)ということは、ブランドの強みの中から、顧客にとってマストハブになりえるものをどう抽出するかが大切なのです。
例えば、iMacはパソコン市場に、洗練されたデザインという軸を追加しました。そしてそれはiMacやAppleの思想を色濃く反映したもので、アイデンティティそのものでした。それまでベージュの大きな箱だったパソコンは、以後デザインという重要な要素が加わり、顧客にとっての「マストハブ」となりました。アーカーは「マストハブ」のヒントは、ブランドと結びつく次のような部分にあるとまとめていれます。
・特徴
・便益(使い方)
・デザイン
・システムの提供
・新技術
・特定の顧客層向け
・安価な価格
・共通の利害
・顧客と結びつくパーソナリティー
・情熱
・価値観
デービット・アーカー(2014)「ブランド論 無形の差別化をつくる20の基本原則」ダイヤモンド社
ブランド論に基づくポジションニングなら、一気にカテゴリーまでつくれる(かも)。
簡単に言うと、上記のような視点で強みをまとめたときに、何があるのか(差別化ポイントか)?ということなのです。
ここからは私のやり方になりますが、ブランド論に基づくポジショニングマップを作る場合は、その強みの中から2つを抽出し、縦と横に軸を形成。そこから競合になりえるブランドをプロットしたときに、差別化になりえるかどうかをチェックすることで、マップが完成します。「強み」を軸にする場合、少し言葉を変えないと考えにくいことが多いので、ご注意ください。
こうすると、伝統的なマーケティングのポジショニングマップづくりよりも、簡単にマップを作成でき、しかもこのカテゴリーで戦っていけばいい、という新カテゴリーまで一気につくってしまえるのです。最後にチェックすべきは、強みによるそのカテゴリーは、市場が潜在的に広いか?ということです。マニアック過ぎてもすぐに限界が来るからです。
こう考えると、今、現場で使用されている伝統的なマーケティングでのポジショニングは、ブランド構築の観点から言うと、あまり意味を持ちません。「あのブランドよりも、こっちのほうが優れているよ」と伝えるためにつくるのが、マーケティングの世界でのポジショニングマップの考え方です。ですので、短期的に売上を上げるときは、効果を発揮しえますが、ブランドの観点から言えば、注意深くやらないと、一貫性を失うことになりかねません。
ブランドの個性に基づいてつくるのか、市場を先に見て、当てはまるところにブランドを飛び込ませるのか、言い換えるとそういうことなのだと思います。しっかりとブランド構築をするならば、個性=強みに基づいてポジションを築いていくべきでしょう。そうすれば、ブランドにとって自然なことなので、そのポジションを持続させやすいからです。
例えば、突拍子もないポジションにブランドを置いても、部署に異動してきた人たちからすれば、なぜそうなのかの必然がわかりません。さらにブランドに固有でない売り方が開発され、一貫性など、とうてい存在し得なくなってしまいます。
ブランド構築において、ポジションは何なのか?と考えることは、すなわちブランドの強みをとことん考え抜くということなのです。
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