企業としての「意志」が現れる。
大事なニュアンスは残したいが、なるべく数を絞って覚えやすい方がいい。そのせめぎあい。
ブランディングの中でも、企業ブランディングになると、その始まりは理念づくりからになります。ビジョン(=顧客とともに目指す未来)、ミッション(=そのためにすべきこと)ときて、バリュー(顧客に約束する価値)やクレド(行動指針)となるわけですが、この2つの個数について議論になることがしばしばあります。
ワークショップを経ると、その会社のバリューやクレドにすべきこと、つまり表現すべきことは自ずと絞られます。一番簡単な方法は、この絞られたグループごとにワーディングするということです。だいたい、7〜15個くらいの間に収まることが多いと実感しています。そしてこの個数のまま、理念浸透に入っていく企業が多いことも確かです。
しかし、会社によっては、もっと絞りたいという会社もあります。そうなると、表現すべきグループを統合していくことになります。自然とできたグループのままが一番自然な形なのですが、「覚えやすく」するために絞る、という選択はもちろんありです。その場合、統合されたグループは、微妙なニュアンスを失うということとも隣り合わせです。
ワーディング(コピーライティング)の観点で言えば、複数のものを統合すればするほど、個性を失いがちになります。そのグループごとの最大公約数を表現しようとするからです。だから、言葉の個性=グループのニュアンス=その企業の価値観を尊重するならばそのままのグループにしておくほうが懸命です。
統合すると、もともとの価値観が、そのままよりは伝わりにくくなりますので、新しく入社する人たちにはどうしても1つのフレーズから2つの意味をとりにくくなります。それでもなお、という理由もありますので、その場合は、何と何を統合するのか、ということをすりあわせつつ、なるべく個性が立つようなワーディング(コピーライティング)をしていくということになります。
ワークショップを経て、自然と出てきた価値観が15個なら、それを統合したいと思う気持ちもまた、その企業の考え方です。私たちのような会社がその要望を聞きながら、なるべく統合しても、もともとの意味を失わないよう、パンチの効いた、その企業らしい言い回しを探る旅に出ることになります。
この議論に、答えはありません。あるのは、そのまま出てきた個数にすることと、グループを統合して個数を減らすことの、プラスとマイナス面を考慮して、どっちにしたいか、という企業としての「意志」です。
ブランディングとは、どこまでいっても意志なんですね。
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