【いい組織が、いいブランドをつくる 第1回】
ブランド構築の命は一貫性。社外へのコミュニケーションだけではなく、インナーブランディングとも言われる、組織内の理解や意思統一もとても重要になってくる。経営者自身や社員が、どのような意識になることで、一貫性のあるいい「チーム」ができていくのか。ゲシュタルト療法を組織開発に活かしてイノベーションが生まれるチームづくりを支援する企画経営アカデミー代表取締役・大槻貴志氏に聴いた。
社員との軋轢。黒字の組織崩壊。
——そもそも組織開発をやるきっかけはなんだったのでしょうか。
2002年に設立したピクセルクラフト社が10年目を迎える頃、売上は好調だったのですが、私と社員の間に大きな軋轢が生まれてしまったことがきっかけになっています。当時、ピクセルクラフトは、企業からホームページや映像、システム開発などデジタルコンテンツの仕事を受託していました。私自身は創業時から事業開発に興味があり、「youtube」がスタートする何年も前に映像コンテンツをオンラインで販売するようなサイトをつくっていましたね。ところが、今みたいにスタートアップをサポートするような環境もなく、私もどうやって資金を集めたらいいのか分からない状況で事業が行き詰まってしまい、ひとまず受託でお金を稼ぐことにしたんです。人材に恵まれ、自分でも高いレベルで仕事ができていたと思います。会社も安定して、資金ができた頃、満を持して新規事業に着手しようと思いました。しかし、次々と社内に新規事業を提案しても、メンバーは誰ひとりとして賛成しません。「今のままでいいじゃん」という声が圧倒的で、日に日に溝が深まっていきました。そこから社内が同じ方向を向かう組織ってなんだろう、と思い始めたんです。
そういえば、理念を決めていなかった。
——一番の原因を何だったと捉えていたのですか。
いくら利益が出ていても、チームがバラバラになってしまうと、組織崩壊するんだ、ということを目の当たりにしました。社員と議論しても、まったく噛み合わないんです。社員は「受託のままでいいじゃん」と言うし、私は「受託のだけの会社にするつもりはない。100億、いや200億目指すんだ」。と言ってもまったく響かない。社員から見れば、私が間違っているし、私から見れば、社員が間違っていると思う。本当はどっちが正しいとかじゃないはずなんですよね。なぜこうなってしまったんだろう、と自問自答したときに、ハッと気づいたのが、企業の目的とも言える理念を決めていなかったということ。もし「世界一クオリティの高いデジタルコンテンツをつくる」という理念なら、新しい社長に引き継いで、私が抜けるやり方もあったでしょう。自分と会社が一心同体過ぎました。何の事業をつくるか、も大事だけど、それ以上に組織やチームはもっと大事だと学んだんです。一人で考えることなんてたかが知れてます。事業だってチームで考えたほうがクオリティが上がるんです。そんなことに、組織崩壊してやっと気づきました。
本当にやりたいことをビジネスにするという腹決め。
——ゲシュタルト組織開発✕事業創造の人材開発ってとてもユニークですよね。
自分の組織崩壊の経験をもとにチームを一体化させ、チームの活力を上げていく組織開発に興味を持ちました。それを極めようとしていた中で、組織開発のひとつのベースになっていたゲシュタルト療法に出会います。療法というと、治療のように聞こえますが、欧米では組織開発にゲシュタルト療法を利用するのはもっとメジャーで、最先端ツールという位置づけです。また、ピクセルクラフトと並行して、学生に事業開発を教える企画塾を主宰していました。こちらはあくまで趣味。しかしちょうど会社がうまくいかなくなったときに、彼らが成功し始めたんです。シリコンバレーやニューヨーク、シンガポールで起業する子も出始めました。そのあたりで、事業化を勧めてくれる人もいて。労働集約型の事業だから、ビジネスが大きくならないからやらないなんて思っていたんですが、やり甲斐もとても大きいし、やっぱりやっていて自分が面白い。本当に自分がやりたいことってなんだろう、と考えて、企画経営アカデミーを設立しました。同時並行して、いろんな企業の社長と出会う中で、新規事業に関する課題を聞いていくと、やはり組織や人の問題が多く、相談されることが多くなりました。単に事業創造のテクニックがあるだけでは新規事業を成功させることができず、チーム作りも一緒にやらくてはいけないのでゲシュタルト組織開発✕事業創造という人材開発サービスを提供しています。だから、うちの理念(ビジョン)は組織開発支援✕事業創造支援=イノベーションと掲げています。
(第2回は2/22水に公開します)
聴き手・文:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
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