2023年10月21日、オンラインにて日本ブランド経営学会研究発表会が開催されました。
日本ブランド経営学会は、ブランディングの視点から日本の企業経営を変えていくという志をもった学びの集まりです。研究発表会は年に一度の祭典。それぞれ論文を提出し、発表を行いました。まず前半戦をレポートします。
まずは日本ブランド経営学会会長、上條憲二氏(愛知東邦大学教授)の基調講演です。「誰がブランドを広めるのか?」ということをテーマに講演が始まりました。ブランドは上から与えられるものではなく、理屈でもない。ブランドは「それを愛するみんなのもの」であるとしています。事例として自らが愛知東邦大学で実践したリブランディングのプロセスを発表しました。「オンリーワンをひとりにひとつ」というブランド・スローガンやVIの制作過程、そして社内での議論の推移など、ブランディングに関わるすべての人の参考になる話となりました。
まず最初の発表は深澤了氏(むすび株式会社代表取締役)。テーマは「経営におけるパーパスと企業理念(ビジョン・ミッション)の共通点と相違点」です。ビジネスパーソン850名(社)にアンケート調査を行い、統計的な分析のもと、論文を執筆。パーパスと企業理念(ビジョン、ミッション)には、各社ほとんど意味に差はないことがわかりました。また重回帰分析より、社内で浸透策を実行し、浸透すると、売上が上がる。採用活動時にパーパスや理念を訴求すると、入社時の理念共感が促され、活躍人材になることが指摘されました。また採用活動時にパーパスや理念を訴求すると売上が上がるという統計分析結果を公表しました。
次の発表は近藤隆氏(本田技術研究所/グラフィックレコーダー)。テーマは「アウターブランディングとインナーブランディングのGAP〜組織変革の原動力を絞り出せ〜」。近藤氏が自社の組織改革に向き合ったプロセスや成果を発表していただきました。サービス業に着目すると、接客などはまさにインナーブランディングの領域の話しで、製造業にもこの視点が大事であるとしています。そして会社の理念との整合性をとりながら、部署のビジョン、ミッション、フィロソフィを制定。部署のコミュニケーションを増やし、飲み会の回数も増やします。その結果、組織活性に関する社内調査でも数値が大幅回復しました。
3番めの発表は、嶋尾かの子氏(Your Progress/富山大学研究員)。テーマは「製造業におけるキャリア自立とセルフブランディングの関係」です。現在、富山大学で研究員をする傍ら、富山県内の製造業でキャリア自律に関するプロジェクトを行い、そのプロジェクトでの格闘、成果を発表していただきました。実は富山県はものづくり県として1位(人口1万人あたりの製造業従業者数、医療品生産金額において)なのだそうです。嶋尾氏はブランディングの観点から考えると、「自己認知を上げ、まわりの環境を知り、自らの強み、経験から培った能力やスキルで生きること」をキャリア自律であると定義しています。過去の自信が未来の形成に大きく関わるとして、同製造業への466名へのキャリア面談の結果を分析。製造部は55.7%程度しかキャリアイメージを持てておらず、品質保証部はN=5ながら、全員がキャリアイメージがあるなど、かなり差があることを指摘。キャリアイメージがないと、ストレス度が高くなるのではないか、と仮説を発表しました。
次は青柳徹氏(株式会社あを)と菊池陽介氏(プラスコンブッカ)のクロストークです。栃木の郷土料理しもつかれとコンブチャのコラボ事例を題材に話しが展開していきました。コンブチャはお茶を発酵させて、フルーツなどを混ぜ、さまざまな風味が楽しめます。多くの企業とコラボレーションも行っております。2人は7月の日本ブランド経営学会で発表を行ったことで知り合い、その後、コラボレーションが行われました。
「とりあえずやってみようというのが最初」(青柳氏)。菊池氏も「世界初をどんどんつくっていきたい」と従来から思っていました。しもつかれを菊池氏が試してみて、1ヶ月位かけてしもつかれに合うフレーバーを考案し、試作しました。菊池氏は最初にしもつかれを食べたときに頂いた感想は「意外とおいしい!」。もっと生臭いものをイメージしていたそうで、非常に食欲をそそる味だと思ったとのこと。地元栃木県では多くの人が「お酒のあて」にするので、だとすると、日本酒をイメージする風合いをイメージしました。そこで「煎茶×さくら×よもぎ」を混ぜ、少しだけスパイスであるカルダモンも加味しました。
青柳氏は最初に飲んだときに思ったのは「さわやか」。しもつかれの臭みも消え、しもつかれの風味が苦手な人に非常によく合うと言います。
5番目の論文発表は、齋藤嘉昭氏(株式会社SUBARU)。テーマは「異文化コミュニケーションとしてのブランディング」です。「ブランディングとは、異文化コミュニケーションである」というのが齋藤氏。齋藤氏はブランディングには3つの壁があるといいます。まずは「輸入文化の壁」。ブランディングはそもそもアメリカが発祥であることから、カタカナ語が多く、共通認識を持ちにくい壁があります。次に「社内の壁」。社内にも価値観がさまざま存在し、粘り強く認識合わせをしていく必要があります。3番めに「市場の壁」。自分と相手の文化圏の違いを認識する必要があること。同じ絵を見ていても、感じ方は違うと指摘します。これらを乗り越えて、初めてブランドが浸透していくのです。
後半戦はこちら。
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