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イベント・セミナー

【イベントレポート】日本ブランド経営学会サロン ♯11 広報とブランディング

ブランディングの視点から、日本の経営者に役立つ知見を発信している日本ブランド経営学会。

2019年6月27日(木)には月例のサロンイベントを開催。

テーマは「ブランディングと広報」です。

広告主からの費用を受け取って発信される「広告」が、消費者のリテラシー向上にともない効果が弱まっているという悩みをお持ちの関係者も多いのでは?一方で、情報としてメディアの意思のもと発信される記事による「PR」が、インフルエンサーなどのオプションが脚光を浴びる中、注目が高まっているようです。

このような状況において、特にPR的な意味合いにおいて「広報」という言葉を用いた今回のテーマ。実際に広報業務に携わる方も参加されていました。

今日の参加者の問題意識はどこにあるのか?

採用に関するサービスを提供しているYさんにお話を伺いました。

「広報もブランディングも、様々な企業によってあり方が異なる概念。一方で、長期的にはコストを削減する効果もある企業活動という点では共通しています。これら2つの概念がどのように結びつくのか関心があります」(Yさん)

明日からでも参考になる実例が好評の日本ブランド経営学会サロンが、会場の高いボルテージのなかでスタートです。

 

ブランディングにおける社内の一貫性をいかにして実現するか?

最初の登壇者は、世界のブランドの格付けを公表していることで有名なインターブランド社から、ディレクターを務められている安達浩之さんです。

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安達さん「かつては、PRといえばメディア対応のことを指していました。しかし今では、ブランディングを重視する観点からは、多様なタッチポイントのなかで一貫したメッセージを伝えることだと考えられています。」

PRとは、そもそもパブリックリレーションの略。直接の利害関係者とだけではなく、より広いステークホルダーとの関係をつくっていこうとする活動です。メディアも消費者(あるいは顧客)も、ステークホルダーのなかのイチ要素。それぞれのステークホルダーの特性にそったタッチポイントを活用していくことが必要です。そのうえで安達さんが大切だと語るのが、「他部署との協力関係」です。

安達さん「目的を共有する1つの主体が、部署連携できないままにPR活動を行わないと、ブランディングの観点からは失敗といえるような状況に陥ってしまいます。代表例が、日本政府の国外向けキャンペーンです。”日本”をブランドに見立てて、国外に伝えていく試みでしたが、経産省・外務省・農水省・国交省とそれぞれが異なる切り口でキャンペーンを展開しています。同じ事を、違う部署で重複して、しかも異なるメッセージを発してしまっています。このような状況は日本政府に限らず、企業においても見られるのですが、受け手からすれば情報を整理して受け止めることができずに、日本を理解できない状態になってしまいます」

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このような、他部署との連携が上手くいかない現象を、安達さんは「組織のサイロ化」として紹介。それぞれの部署が、自らの部署内だけで物事を考えるようになってしまうことを指しています。ブランディングにPRを活用するうえでハードルとなる「組織のサイロ化」ですが、その解決手法としてクロスタスクフォースが語られました。

ブランディングに携わるメンバーを、広報部や宣伝部のなかだけで完結させるのではなく、社内のあらゆる部署からメンバーを抜擢します。これにより、各部署の意志がブランディングに反映されることで、各部署が当事者意識を抱くようになります。また、クロスタスクフォースのメンバーを中心として、自社のブランド理解を促進することができるのです。

さらにもう1つ、「メッセージシステム」と呼ばれるツールも有効だと安達さんは語ります。メッセージシステムとは、社内の誰もがブランドについて語れるように用意されたテンプレートのようなものです。次のような要素で構成されています。

・ブランドステートメント・・・・・・ブランドの理念や使命

・キーブランドメッセージ・・・・・・ブランドについて語るとき必ず伝えなくてはならないこと

・プルーフポイント・・・・・・ブランドの存在意義を裏付ける客観的な事実。

・メッセージモジュール・・・エレベータピッチ(30秒で伝わる説明)、ボイラープレート(様々なタッチポイントで用いる鉄板文章)、ブランドストーリー(ブランドの誕生から今にいたるまでの物語)

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とても実践的な「メッセージシステム」というツールには、会場の方たちも興味をもたれたよう。多くの方が、項目を掲載したスライドの写真を撮っていました。安達さんのトークで特徴的なのは、「タッチポイント」という用語が意識されていたところ。タッチポイントはコンタクトポイントとも呼ばれ、あえて和訳するならば「顧客接点」です。つまり、企業と消費者がコミュニケーションをする機会というような意味合いです。

パブリックリレーションのリレーションとは、「関係作り」のこと。セールスとは異なる行動を受け手に対して求めるのです。ブランディングとの関連ならば、「ファン化」は大きなテーマ。ならば、自分勝手な情報伝達ではなく、それぞれのタッチポイントにおいて受け手がどのような状況あるいは心情にあるのかを慮ることが必要なのかもしれません。そのため、「ワンメッセージ」だけでなく、メッセージシステムのような、状況に応じて、当事者が柔軟に内容や様式を変えられる方法がブランディングにおけるPRでは有効なのでしょう。

 

モノづくり中小企業のブランディングの必要と実践

2人目の登壇者は、「下町ロケットのようなノンフィクションの主人公」として紹介された丸和繊維工業の伊藤哲朗常務。国内の縫製市場において国産品が3%を切るなか、「改革のために頼む」と社長に口説き落とされて同社に入社された方です。

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丸和繊維工業は、自社の名前が市場には出ないOEM生産がメイン事業。ただ、国内工場が国際競争のなか「安い、早い、旨いのファーストフード状態(伊藤常務)」になっていました。

伊藤常務「このままでは、品質と労働環境を維持できないと思いました。着にくい服をつくれば、工程を省けるので製造コストは抑えられます。しかし、それは私たちのプライドが許さない。でも、技術を継承する社員が入ってこない。社員はほぼ高齢者。打開策を模索しました」

そこで伊藤常務が社運を懸けたのは、オペレーター(いわゆる「縫い子」)とパタンナー(服の設計図をつくる)をコアとして、高い付加価値の商品を、社名を冠して市場に送り出すことでした。

伊藤常務「課題となったのは、それまで純粋な製造者に徹してきた作り手の意識改革です。自社の名前、つまりブランドが世に出ることをイメージできないから、取り組めない状況が初期にはありました」

社運を懸けてのブランディングのため、伊藤常務は「宇宙飛行士の着る服を作ろう」と社内で発表しました。

伊藤常務「すべりましたね(笑)批判殺到です。でも、私は社内には”夢”が必要だと思っていました。でないと、意識を変えるという大変な試みは継続できないと思ったのです」

「宇宙飛行士の着る服」という夢を掲げ、自社ブランド商品にむけて動き始めた丸和繊維工業。

オペレーターとパタンナーをコアとした技術を日々研鑽する日々がしばらく続いた後、伊藤常務は「動体裁断」と出会います。

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伊藤常務「これはヒトの皮膚の動きのメカニズムにならって、服をつくる技術です。実現にあたって、当社の技術が適していると思ったのです。既にスポーツウェアでは実用化されていましたが、ファッションではまだでした」

伊藤常務は開発者の中澤愈先生を招聘し、動体裁断を丸和繊維工業に導入。

夢にむけての計画が着々と進行するなか、ついにチャンスが訪れます。日本人では2人目の女性宇宙飛行士・山崎直子さんの宇宙船内着が公募されたのです。この日のためとばかりに社員は一致団結。日頃磨いた「動体裁断」の技術を注ぎ込みました。結果は丸和繊維工業の服が船内着として見事採用!腕を挙げても裾が乱れないなど、他にはない抜群の機能性が評価されてのことです。

中小企業を経営されている方のなかには、「うちは顧客との関係がしっかりしているからブランディングなんていらない」と思われている方もいるようです。それも確かにひとつの経営スタイルでしょうが、丸和繊維工業が直面していた状況からは、「中小企業にとってのブランドの必要性」をうかがわせる教訓があるように思えます。

もし、業界自体が成長しているのであれば、決まった顧客との取引関係で安定を得られるかもしれません。ただ、縫製をはじめとして、繊維産業がそうであるように、業界がマイナス成長を始めると、顧客からのプレッシャーが増し、現場は疲弊し、人材は離れ、会社としての競争力が失われていきます。これからの日本は、マイナス成長が続くという見方も多いようです。ならば、中小企業も常態的な新規獲得できる体制づくりが必要になるでしょう。だから、飛び道具としてのブランドが必要なのではないでしょうか。社長がメイン営業マンになりがちな中小企業だからこそ。

余力がなくなってからのブランディングは、まさに「泥棒を見てから縄をなう」。企業のリソースがまだ残っているうちにブランディングにゼロから取り組んだ伊藤常務の底力に、日本の中小企業は学ぶところが多いと思います。

資金ゼロの社会貢献的活動のブランディングはコミュニティ化にて

最後の登壇者は、日本ブランド経営学会の事務局をうけもつ「むすび株式会社」の深澤了さんです。

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むすびでは、山梨県の酒蔵・萬屋醸造店など地元の方とともに、100年前に失われた日本酒・本菱の復活をリード役を務めました。本菱の復活においては、ブランディングを意識した広報活動が行われました。

なぜブランディングに広報か?

ずばり、ブランディングにかける予算がないから。だからこそ、勝手に広まっていく仕組みとして、周囲の人を巻き込む広報が必要だったのです。

本菱の復活では、クラウドファンディングが活用されました。なにせ、本菱は100年前に失われた日本酒。モノがまったくありません。ただ、動き出すには資金が必要。「あるのは思いだけだった」と深澤さんは語ります。

ただ、クラウドファンディングの目的は資金獲得だけではありません。外部の人を、サポーターとして、本菱復活に向けたコミュニティに巻き込んでいくことも目的でした。

「コミュニティをいかにつくるか。これが本菱復活において注力したポイントです」と深澤さんは当時を振り返ります。

ブランディングのための広報、そしてコミュニティづくり。この視点で、プロジェクト完遂ではプロジェクト参加メンバーも公募されました。通常、町おこしのプロジェクトでは「社会貢献」のようなチャリティー的要素が公募において訴求されます。しかし、本菱の場合には「ブランド構築を学びませんか?」という当人のメリットを訴求しました。

結果、これまで山梨県とはまったく無縁だった県外からも参加者が集まり、「勝手に広まる仕組み」の一端を担ってくれています。復活の際に出来たコミュニティは今でも存続しており、二期生、三期生と続いています。まさに、本菱復活のプロジェクトは広報による継続的ブランディングを実現できています。

深澤さんは次のように語って締めくくります。

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深澤「本菱プロジェクトでは、お金を払ったいわゆる純広告は一切利用していません。一方で、メディア露出量を広告費換算すると4,000万円以上。どのような地域にもいいところがあります。それは”必然”からうまれてくるらしさです。必然を結びつけたブランドだから、共感を得られるものになったのではないでしょうか」

本菱は、商標はむすび株式会社が保有するものの、熊本県の”くまもん”のようにライセンスフリーで地元の方々に活用いただいています。アイス、マンジュウなど、新たな土産物への展開が始まっています。コミュティが出来、産業が生まれ、産業が集積していく。新たな地場産業の発展を担っている本菱ですが、その背景には共感をベースにむすびついたコミュニティによる一貫したメッセージ伝播があったことは、ブランディングの領域において注目すべき事例ではないでしょうか。

ブランディングにお悩みなら日本ブランド経営学会へお越しください

今回も、現場でブランディングを実践する3人の方々によって、明日からのブランディングをさらに骨太にしてくれる有用な知見が伝えられました。

「中小企業だからブランディングは必要ない」あるいは「できない」と思われている方は、少なくないのではないでしょうか。今回の事例からも、中小企業こそブランディングが必要であり、そのポテンシャルが秘められていることがわかります。

もし、ブランディングの実践にお悩みでしたら、日本ブランド経営学会サロンに一度お越しください。

次回のサロンは7月25日(木)19時30分より、渋谷・hoops link tokyoにて開催です。お申し込みは、下記サイトより受け付けています。https://jbms20190731.peatix.com/

 

(文・写真/長尾和也)

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