2019年11月21日、hoops link tokyo(渋谷)にて日本ブランド経営学会サロンの第15回が開催されました。
日本ブランド経営学会は、ブランディングの視点から日本の企業経営を変えていくという志をもった学びの集まりです。なかでも活動を特徴づけるサロン活動には、「ブランディング」という共通の関心事をテーマに社会人が集まり、創発的な取り組みのきっかけの場にもなっています。
サロンでは、ブランディングの現場に携わる方をスピーカーとして招き、明日からでも役立てる生きたブランディングの知恵を参加者で共有します。
今回のテーマは「ブランドが経営に及ぼす影響」です。サロン立ち上げ当時から関わり、新規事業立ち上げの仕事をこなしながら個人でもブランド支援・コミュニティ支援を行っている渥美智之氏に登壇いただき、ワークショップを交えながらブランドが経営に及ぼす影響について理解を深めました。
ブランドは経営のドライバーである
まず最初にブランドにまつわる発言の紹介です。Appleの元CEOスティーブ・ジョブズは「情報量が多い世界で、忙しい人々の選別を助ける。」とブランドの役割について言及しています。Inter brandのCEOチャールズ・トリヴェルは「世界的経済危機を乗り越え成長しているブランドは、直感的に消費者を楽しませるものだ。」と分析しています。
その後ディスカッションを行いました。「ブランドは経営のドライバー」と聞いて何をイメージするかをテーブルごとで意見を交わします。
「お題目ではなくどう実践し、共感を得ながらプロダクトに落とし込むか。活動の全てをドライブするのでは。経営そのものではないか。」
「車になにを載せるのか、イメージを膨らませながら、お客さんをのせ社員をのせ、こぼさずに走らせるイメージ。」
「良い例としては、現場で咀嚼されお客さんに届いていた。悪い例として、ドライバーが機能していなかったら部署間で意見が変わり、コミュニケーションもズレる。経営資源も最小限にし、経理も火だるまにならない。」
「道路や環境=市場、ドライバー=経営者の意識や方向性。人プロダクトサービスへ落とし込む。」
どの意見にも共感できる部分があり、参加者の方々も首をうなずかせながら聞いています。
渥美氏の話が再開し、ブランドとは「企業が存在する社会目的があり、そこに向かう一貫した姿勢」と定義。A部門・B部門・C部門と分かれていたとしたとき、それぞれが違ったことを言うと顧客が信頼しづらいくなります。逆に、どの部署も一貫した意見を持っていれば安心しファンになりやすくなるのです。
社員目線でも同様に、良い影響を及ぼします。企業が進める事業それぞれに理念の軸からブレていなければ、従業員がブランドに誇りを持ち、自ら行動したりメッセージを発信したりする事例も出てくるようです。
部門を超えるコミュニケーションのデザイン
続いて、ワークショップ「社内部門間を超えた一貫したコミュニケーション」を図るための具体的な(必要な)取り組みとは何か、テーブルごとで話し合いました。
「毎朝の朝会で、ヴィジョン、ミッションを共有。CMを流す、合宿をする社歌をつくる、行動指針を唱和する。」
「町ブランドでも企業でも、みなさんが参加する場(ステージ)をつくる。ブランドブックなど想いを共有できるものがあれば、想いを語れるようになりストーリーが発信される。」
「部門間で浸透していない企業=小手先の施策では難しい。評価制度など、コミュニケーション設計以上のことをやるべき。そのためには社長がどれだけブランドを大切にするか。社長に嘆願書を出しても良い。部署によっては数字を追わされる。」
「飲み会、壁を超えることでメリット。ホウレンソウからザッソウ(雑談・相談)へ。いいことを言う、正式なことを言うではなく、雑談と相談でフラットにコミュニケーションをとることで超える。」
企業の持続・発展のためには優秀な人材の確保は必須となります。こんなときにもブランド経営は効いてきます。
よくある企業では待遇を良くして社員を増やそうとしますが、他の会社でさらに待遇がよいところを見つけたら辞めてしまいます。一方、価値観の共有を優先して社員を増やすと、自分のスキルで何が実現できるか、価値観や志に共感をして入社します。資金調達の場でも見受けられる例ですが、ブランドという世界観に感情移入し、期待と信頼の意味を込めて調達に後押しになります。世界観をうまく伝えられることができれば、優秀な社員を集め尽力し続ける状態になります。
Appleの企業価値の中で、無形資産の内約30%がブランド価値だという調査もあります。情報量が右肩上がりに増えている現代ではブランドによって救われる企業が多そうです。
ブランド経営学会のサロン、次回は第16回「グローバルでのブランディング」をテーマに12/12(木)開催されます。
https://salon16.peatix.com/view
文:松澤直輝 写真:BRAND THINKING編集部
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