一度下げた値段を上げるのは難しい。
知覚品質を担保できるか。
9/15にBUSSINESS INSIDERS JAPANに「ランサーズが脱クラウドソーシング宣言、実名制で単価上げる」という記事が掲載されました。簡単に内容を要約すると、「ランサーズTOP」とシェアリングエコノミー事業の「Pook」を軸に、実名制登録制にして、取引単価を上げていくとのことでした。
詳しい内容まではわからないため、ここから先は、あくまで想像を基にして、それがブランド論的に可能かどうか、という考察を行いたいと思います。
まず、一般論的に言うと、一度下げた単価を上げる、というのはかなり難しいことです。それらは歴史が証明していて、マクドナルドがハンバーガーを59円まで値下げした時代がありました。しばらくは業績好調だったものの、その後、日本マクドナルドの業績が下がり、立て直しにかなりの時間を要しました。吉野家や松屋など、牛丼チェーンも一時期値段を下げた牛丼の価格を戻すには、さまざまな手を使い、時間をかけて上昇させています。
ランサーズの取引価格を上げることは、手数料で稼ぐランサーズにとってもいいことです。1件あたりの価格が上がることで、効率もよくなるでしょう。また取引価格が上がることは、その場に登録しているフリーランサーたちにとってもWinです。重要なのはここで頼む側、クライアント側にとってのWinがあるかどうか、これをクライアント側が感じられるサービスになるかどうかが、大切です。現状のランサーズを見ると、例えばデザインやコピーライティングに関して市場価格よりもかなり低い値段で取引されているように見えます。これを実名にして、取引価格を引き上げるということは、ランサーズに登録しなくても、食べていける実力あるフリーランサーがどれだけ登録するか、というところが非常に重要で、その「質」が担保できるのか、というところがブランド論的に言う「知覚品質」的にとても重要なのです。
「知覚品質」がよくなければ、当然「ロイヤリティ」(=リピート)は生まれません。このあたりはおそらくランサーズ側も考えていて、ランサーズ内で実力ある人をピックアップして、ということは考えているでしょう。果たして実力あるタレントと非公開求人をマッチングするということが、既存他のサービスとどう違うのか?というところを組み立て、訴求できるのか、がさらに大きなポイントとして浮かび上がります。
わかりやすく言えば、例えば、佐藤可士和氏が登録して利用しているとなれば、業界内のデザイナーはこぞって登録するかもしれません。もしこれができれば、他社にかなり大きな障壁をつくることになります。
1億総タレント化、というビジョンはすばらしいと思います。ではそれをどう実現していくか。ランサーズにとって、チャレンジしがいのある壁になりそうです。
文:BRAND THINKING
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