【バーガー研究家・白根智彦のバーガー・ビジョン 第3回】
今や「ハンバーガー」のお店は日本全国にあり、誰でも手軽に食べられる。ハンバーガーを食べたことのない人はごく少数だろう。そんな中「正しいハンバーガー」の認知を広めるために「バーガー研究家」として活動している人物がいる。その名も「黄色い社長」こと白根智彦氏。株式会社イエローズ/株式会社シェアハピネスの代表取締役として飲食店も経営している。白根氏に飲食店経営やバーガー研究家になった経緯や、今後の展望を聞いた。
やりがいを求めてはいない。
——-バーガー研究家としてのやりがいはどこにありますか?
やりがいを求めてやっていないのが正直なところです。本業はバーガー研究家と思ってやっていますが、収入はほぼお店の経営の方で、バーガー研究家としてはほとんど収入がないです。ですのでグルメバーガーの認知を広めることは使命として捉えています。そのために今ハンバーガー研究家として、本の出版の企画をしていて、ハンバーガーの教科書的な内容になる予定です。ベッカーズ時代にアメリカに研修に行きました。チェーンストアの本場であるアメリカに行って、チェーンストアを学ぶ研修です。一個フォーマットを作ったらそれを横展開する技術がとにかくアメリカは優れています。そういったチェーンストア展開を行う知識、それと商品開発者としての知識の両方を僕は持っています。グルメバーガーを経営している人の中に、チェーンストア展開という視点を持っている人はほとんどいないんです。彼らはグルメバーガーを専門としている職人なので。この両方を語れる人はいないので、企画している本は、どちらも網羅した内容になっています。ハンバーガーのお店だけを紹介した本はけっこうあるのですが、店の紹介だけならブロガーさんやライターさんでも書けます。でも作り方が書いてある本はないと思います。
ハンバーガーの定義っていい加減。
——-この本はどのような人に向けて書かれるのでしょうか。
日本のハンバーガーの定義っていい加減なんですよ。パンに何か挟めばバーガーという認識をされてしまっている。でもそうではなくて、アメリカのハンバーガーの定義は、バンズパンの中に「牛肉100%のパティ」を焼いて入れたものをハンバーガーと定義しています。だからチキンが入っていると、アメリカでは必ず「チキンサンド」と言うんです。某ファーストフードでチキンバーガーという商品がありますが、それは間違っています。ハンバーガーは必ず牛肉なんですよ。日本ではファーストフードとグルメバーガーが同じジャンルになってしまっている。だからまずはそこの認識を変えたいです。一昨年フェイスブックに1年に100個ハンバーガーを食べ、その感想を記事として載せていました。その時の企画はハンバーガー専門店ではないお店が出しているハンバーガーを取材しようという企画でした。例えば鉄板焼き屋とかステーキ屋で、ランチにハンバーガーを出しているところがあるんですよ。そういったお店はA5ランクの肉の端材を切ってパティにできるんです。でも取材をしていくうちに、定義とは違う、牛肉100%以外のものを挟んで、◯◯バーガーとして売り出しているところもたくさんありました。こりゃいかんなと。
日本のグルメバーガーのレベルは高い。
——-将来の展望を教えてください。
実は日本のグルメバーガーは世界的にも一番すごいんですよ。アメリカだとハンバーガーは肉を食べるものなんですね。25年前くらいにアメリカで行ったハンバーガー屋があって、そこは店内の食材をこちらで選んで、その場で調理したものをいただける「グローサラント」のような業態でした。注文時に、肉の量や焼き方を聞かれ、パティが完成したら今度は自分で野菜のコーナーにいって、パンに挟んで自分でハンバーガーを作るというようなスタイルでした。それはアメリカの文化だからできるんですよ。日本だと基本的には完成形が出てきて、それを食べますよね。ちゃんとバンズと野菜の温度とパティの温度を計算して、1番美味しい状態でお客様に召し上がっていただきます。こういった全体のバランスを見て作れるところが、日本人の得意とするところなんです。日本のグルメバーガーは本当にレベルが高い。和食ってユネスコの無形文化遺産になっていますが、将来的にハンバーガーもそうしていきたいと考えています。
(おわり)
株式会社イエローズ 代表取締役・バーガー研究家
白根智彦
大学卒業後、ハンバーガーチェーン「ベッカーズ」の創業メンバーとして入社。
幅広い店舗のプロデュースの経験をきっかけに、株式会社イエローズを設立。
同時に、社内でハンバーガーの商品開発を行ったことをきっかけに、バーガー研究家となり、正しいハンバーガーの認知を広めるために活動中。
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