経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

新規会員登録

BRAND THINKINGはFacebookアカウントで会員登録いただけます。今後、会員向けメールマガジンを配信予定です。

経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

宇宙工学の研究が、VR技術に活きた。#1

【スタートアップのブランド論対談<スペースリー森田博和>第1回】

_46D4870 近年、VR技術の発展が目覚しい。一般消費者にもVRデバイスが販売されたことにより、実際に体験された方も多くいるだろう。しかしまだ一般的にはゲームや動画などの娯楽としての用途が主である。そんな中VRを事業者向けのサービスとして運営している会社がある。それが「株式会社スペースリー」。事業者に向けたVRサービスとはいったいどういうものなのか。創業者である、森田博和氏(写真左)に、事業内容や起ち上げの経緯などについて、パーソナル・ベンチャー・キャピタル代表で、BRAND THINKINGでも連載を持つチカイケ氏(写真右)が迫った。

 

 聞き手:チカイケ秀夫/編集:BRAND THINKING編集部/撮影:落合陽城

 

最初は軽い気持ちでスタートアップしてみよう。

チカイケ:森田さんのこれまでのキャリアを教えていただけますか?

森田:今のVRの事業を起こすまでは、現在も進行形ですが、「アート」の事業をやっていました。昔から「アート」の分野は好きでした。そして同じく興味の対象として「宇宙」も好きで、大学院卒業後は航空宇宙政策の企画、立案などにも携わっていました。「アート」と「宇宙」は、同じようなところがあって、例えば現代アートは、わかろうと思っても、なかなかわからない部分があって、そういうところに対して、人は驚いたり発見したりします。これは宇宙にも言えることだなと思っています。航空宇宙の仕事に携わったあと、シカゴへ留学しました。留学したときにシカゴ大学のビジネススクールにも通っていましたが、起業を志している人たちがたくさんいて、とてもスタートアップが身近に感じていました。そこから帰国後に、株式会社スペースリーを起ち上げました。

チカイケ:シカゴ大学に起業を志している人たちがたくさんいるということをはじめて知りました。もともとシカゴ大学はスタートアップの人が多く集まっているところなんですか?もしくはスタートアップ専門のコースがあるのでしょうか?

森田:2008年のリーマンショック以来、いわゆるMBAのビジネススクールは、経営者になろうということ以外で意義を見出さないといけないという雰囲気が全体的にありました。その中で多くの大学が学問としてスタートアップというところに力を入れていて、シカゴ大学もその1つです。そういうプログラムがある中で、僕もスタートアップをやってみようと、最初は軽い気持ちで始めました。

 

宇宙工学を学びたいという純粋な気持ち。

チカイケ:アートに興味をもったのは何歳くらいのときですか?

森田:たぶん、中学生くらいのときだったと思います。中1くらいのときに、夏休みの宿題で、美術作品を取り上げて感想を述べなさいといったような宿題を出されました。でも中1の頃の僕は美術作品についてよくわからないモノという認識でした。その時に親に美術館にはじめてつれていってもらったのがきっかけだと思います。なんか不思議な世界だなと思った記憶がありますが、そこからアートが好きになって、大学に入ってからは一人で海外まで展示会を見に行ったりまでするようになりました。

チカイケ:なるほど。僕はスタートアップにはこういった原体験が重要だと思っています。では宇宙に関してはいつ頃興味を持ったのでしょう?

森田:宇宙に関してはほんとに小さいときから興味があったんですよね。それを仕事にしようとはもちろん考えていなかったですけど。理屈ではなく、単純に空や星が好きでした。大学への進学前の進路を考えていたときに、僕の家は代々医者の家系なんですが、僕もそのレールにのって医大にいくのか、それとも別の方向に進むのかを悩んでいました。そんな中で、ロケットや衛星など、宇宙に関わるものを自分で作ってみたいなという気持ちが少しありました。医学部だとそのようなことを勉強することはできないですよね。その気持ちを優先して、宇宙工学の方向に進むことを決めました。しかし当時は宇宙の勉強をするときに、あまり海外にいくということが思考としてなくて、家の近くだと、東大や日大に宇宙工学の学科があったので、その中から東大に進学したという流れです。

_46D4884

宇宙工学とVRの接点。

チカイケ:宇宙工学というものは、どういうことを勉強するんでしょうか?

森田:宇宙構造物についてです。宇宙といっても理学系や、もしくはもっと星の起源を考えていくようなところ、あとはロケットや衛星のことなどを勉強する工学系などいろいろあります。その中でも僕は宇宙自体というか、宇宙というものがどういうふうに人類の役に立つんだろうと、もっと具体的なモノのほうに興味があったので、そういった方向の研究をしていました。

チカイケ:御社のVRデバイスを見せていただいてもいいですか?

森田:いいですよ。弊社で提供しているVRは「カセット」と呼んでいる、W6.2×H6.2×D1.7cmの折りたたみ式グラスを展開して、それをスマホにはめてご覧いただきます。この「カセット」の展開構造は宇宙工学を元に作っています。宇宙で大きな構造物を展開するときには、構造物をロケットという限られたスペースに納めて、打ち上げたときに宇宙空間で広げないといけないですよね?小さく折りたたんで、そのものを宇宙の中でどのように挙動させるかという研究もしていたので、その知識を活かして作りました。

チカイケ:すごい!ほんとにコンパクトになりますね。この「カセット」を使って、どのような事業を行っているのでしょうか?

森田:いくつかありますが、1つはアートのアーカイブ化を行っています。美術館やギャラリーなどは、美術作品を撮影し、サイトにアーカイブ化しているところもあります。しかし写真だけでアーカイブ化しても伝わりきらないんですね。どういうことかと言うと、キュレーターは文脈を含めて展示会全体の構成をすごく考えて作品を配置しています。ですので写真だけだと文脈までは伝わりません。それを文脈までそのまま伝わるように残したいと考えていた中で、2016年になって技術的にVRが発展していき、VRのソフトウェアを開発しやすい環境になってきたというのが、ひとつのきっかけとしてあります。ある意味、最先端の技術が進んでいく中で、たまたまそういう方向に収束したという流れですね。

 

第2回へ続く。

_46D3976

株式会社スペースリー
代表取締役 森田博和
東京大学大学院で宇宙工学を専攻。経済産業省内閣官房宇宙戦略本部で宇宙開発に従事。国費留学でシカゴ大学ビジネススクールに留学し、MBAを取得するも、卒業と同時にスペースリーを起業する。

chikaike

 
チカイケ 秀夫

パーソナル・ベンチャー・キャピタル代表。企業ブランディングパートナー/社外CBO(チーフ・ブランディング・オフィサー)。一部上場IT企業でベンチャー立ち上げ、グロースハック、企業理念策定や代表直下でグループでのさまざまなプロジェクトを担当。そこでの『ブランディング』を通して、現在は、個人/スタートアップ/ベンチャーへの支援を行う。

まずはこの記事から

新着記事

タイアップ記事

最新連載記事

人物から記事を探す

セミナー・イベント情報

ランキング