【テーブルクロスのブランド論】第1回
外食をする時にアプリから予約をすると、予約した人数分の給食が途上国の子どもたちへ届けられるサービスがあるのをご存知だろうか。それが社会貢献できるグルメアプリ「テーブルクロス」。予約をするだけで誰かのためになる。そんな「チャリティ予約」を新たな日本の寄付文化にしようと事業を展開している株式会社テーブルクロス 代表取締役 城宝薫氏に、会社設立の経緯や事業に対する想いを訊いた。
聴き手・文:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
小さい頃から社長になることは決まっていた。
———–在学中に起業されていますが、なぜ起業しようと思われたのですか?
祖父が起業家だったこともあり、子どもの頃から社長になりたいと思っていたんです。「おじいちゃんは社長だよ」と言われたときから、変に「社長」がキーワードとして残り、「おじいちゃんみたいになりたい」「社長になりたい」と考えるようになっていたんです。中学生の頃には、何で会社をつくろうかと考えるようになっていましたね。小さい頃からよく海外に行っていて、途上国でストリートチルドレンも目にしていました。それこそ、ゴミ山からスパゲッティを引っ張って食べるような。これはなんとかしなければいけない。知ってしまった責任を感じていました。それから、地元の浦安がアメリカ フロリダ州のオーランド市と姉妹都市だったこともあり、高校一年生の時に、文化交流の一環で親善大使として現地に行ったんです。そこで、利益を出しながら障害者支援をしているNPO団体に出会いました。課題を解決するため仕組みをつくることこそ、これからの日本には必要だと感じました。こうした経験を通して、日本の中で寄付への考え方を変えられれば、それは大きな貢献につながる。誰もやっていないし、やるしかないと思いました。自分のことだとモチベーションは上がらないのですが、誰かのために何かをするということに魅力を感じたんです。
信用のない学生だからこその苦労。
———–起業当初はどんな苦労がありましたか?
いろいろな苦労がありました。例えばオフィスを借りるときにも審査に3度落ちましたし、複合機のリースの審査も通りませんでした。親の扶養に入っている学生ということもあって所得証明を出せないので、証明書が何も出せません。言ってみれば信用がない。だから、審査系はほとんど通りませんでしたね。結局、複合機も他の会社に借りてもらったり、ネット銀行を解説したり、自分が持っている選択肢の中から一番いいものを選んでいくということしかできませんでした。現在のシステムを入れる時も大変でした。システムには1億円くらいかけているんです。AIを盛り込んだり、広告記事の書き換え、集計機能、ユーザー情報の管理機能など、システムの導入にはとてもお金がかかり、調達した金額では追いつきませんでした。ファンドやベンチャーキャピタルを入れることも考えましたが、将来のことを考えて借り入れを優先することにしたんです。ただ、信用や知識のない学生だからこそ、勉強することに意識を向けられたし、素直に人に聞くこともできたというメリットもあると思っています。
飲食業界のサポートが世界につながっていく。
———–なぜ飲食店をテーマにしたのでしょうか。
飲食業界のITの底上げをしたいと考えていました。ITには世界を変える力があります。ただ、飲食業界ではITがまだまだ発達していないこともあり、使う側にとってハードルが高いんです。日常生活もメモ、仕入れもメモというところがほとんどです。そこに、シンプルで、分かりやすくて、誰でも使えるようなものがあればと思っていました。IT化が進めば、業界は活性化していきます。その部分で役に立ちたいと思っていたんです。「テーブルクロス」は飲食店の情報予約サービスで、予約をすると途上国の子どもたちの給食になるという仕組み。ビジネスモデルとしては広告収益モデルとなっていて、1人の集客によって180円を広告料として受け取っています。その中から費用を拠出して給食を提供していますが、現地の子ども支援をしているNPO法人と提携していて、そちらに寄付することで現地に給食を届けているんです。今は自分の思ったこと、好きなことをやれている実感がありますね。
株式会社テーブルクロス 代表取締役 城宝薫
1993年生まれ。立教大学経済学部在学中に企業と提携して新商品開発を行う学生団体「Volante(ボランチ)」を創設し、関東、関西、台湾に支部を広げて活動。中高生時代の生徒会活動や浦安市とアメリカフロリダ州オーランドを繋ぐ親善大使活動などを通じて、ビジネスと社会貢献の融合への関心が高まり、テーブルクロスの事業を考案。社会人や投資家などの支援により、大学3年生の時にサービスを本格始動させ、現在も精力的に活動中。
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