スタートアップのブランド論対談<SAGOJO新拓也>第3回〈最終回〉
友人たちとの温泉旅行や、海外での一人旅。家族旅行など、誰しもが旅をした経験はあるだろう。しかし、それをただの旅行で終わらせず、旅の可能性を広げ、新しい価値を生み出そうという志のもと、旅をすることを仕事にできるサービスを運営している会社がある。それが「すごい旅人求人サイト SAGOJO(サゴジョー)」を運営する株式会社SAGOJO。代表の新拓也氏に、事業立ち上げのきっかけや、考え方などをパーソナル・ベンチャー・キャピタル代表で、BRAND THINKINGでも連載を持つチカイケ氏が迫った。
聴き手:チカイケ秀夫 聴き手・文:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
コーポレートの重要性。
チカイケ:「風の人」が増えることによって、社会はどうなると思いますか?
新:いろんな人や物事と出会う機会が増え、もっと世界が共有できるようになるというか、相手の立場に立って考えて提供したり、自分の求めているものを得やすくなったりするんじゃないかと思うんです。その結果、自分のためだけだけではなくて、もっと社会のために何かしようと思う人が増えるんじゃないかなと考えています。
チカイケ:具体的には?
例えば、世界には死にたくないのに死んでいく人たちがたくさんいますよね。僕は病気で苦しんでいる人々を治すことはできないけれど、お医者さんだったらできる。彼らがたくさん旅をして、人や物事と出会う機会が増えれば、もっと救われる命も増えるんじゃないかなと思います。第一回でもお話したような、”世界が自分事になる力”が旅にはあると思うので。もちろん医者だけじゃなくてすべてのスキルにおいてです。すれ違っているスキルとニーズが、人の移動が増えること、そして旅という深い体験を通すことで、マッチングしていくんじゃないかと思います。SAGOJOがそのためのプラットホームになれたらと思いますね。
チカイケ:なるほど。自分はコーポレートと社会との関係性が一番大事だと思っています。それをしっかり見せていく必要がありますね。
新:僕も見せ方は強く意識しないといけないなと考えていて、最近、社内向けにSAGOJOのカルチャーを、「4つのバリュー」として言葉に落とし込みました。その中の一つで「work GOKIGEN」というものがあるんですが、社内では「ゴキゲン」という言葉がキーワードになっています。
チカイケ:なぜ「ゴキゲン」がキーワードなのでしょうか?
新:元々、ゴキゲンなメンバーばかりが集まっていたこともあるんですが・・・(笑)、ベンチャーをやっていると辛いことも嬉しいこともたくさんあるけど、その”振れ幅”を楽しめるようになると、恐れずチャレンジすることを選択できるなと。なにも考えていないとか、反省しないという意味ではなく、根アカにズンズン前に進んでいくイメージが「ゴキゲン」という言葉にはあって。
チカイケ:この「ゴキゲン」がアイデンティティだし、SAGOJOの理念に近いところだと思います。ゴキゲンな会社になって、この会社と仕事すると楽しいよねと言われるようになるといいですね。(笑)。
新: そうですね。バリューを作ってみて思うのが、共通の基準を用意することで社内のメンバー同士が指摘しやすくなるんじゃないかと。僕自身もゴキゲンに仕事できてなければ他のメンバーに指摘されるだろうし、チーム全体でそのカルチャーを作っていこうという機運が生まれると思います。
「理念」に共感する人を採用すれば、認識のズレは少なくなる。
新:このバリューを作ることになったのは、採用がきっかけでした。過去の採用でうまくいかないことがあって、その要因がカルチャーにフィットしなかったということだと考えていて。
チカイケ:ブランディング的にも理念への共感が大事で、掲げるバリューに共感してくれた人は、既存メンバーとの認識のズレも少なくなっていくはずです。実際にサービスを利用したユーザーは「ゴキゲン」になってくれていますか?
新:普通の旅の体験とはちょっと違うというか、今まで見逃していたことにも、取材することで気づいたり、体験を通して、「そのその土地や人がさらに好きになった。」「またやりたい。」とユーザーからは言ってもらえます。どんどんこのSAGOJOの体験を通して出会う人・物事が増えていってほしいですね。
境遇に関わらず、誰でも旅ができる世界をつくる。
チカイケ:今後、SAGOJOは日本だけでなく世界にも広げて行くのでしょうか?
新:そうですね。境遇に関わらず、すべての人が旅をできる世界を作っていきたいと考えています。旅の中で出会った人の中に、僕が「今度君が日本に来たときは僕が案内するね」と言ったら、「いや、俺はいけるわけないだろ」と返されたことがあります。経済的な余裕がない=自分には旅をするという選択肢がない、という状態になってしまっていますが、もし彼らにスキルや情熱があって、「日本に来たい!」と強く願うときには、それを実現できる・応援できる世界にしていきたいなと考えています。
株式会社SAGOJO 代表取締役 新拓也(写真右)
立教大学在学中に海外ひとり旅を経験し、旅の力によって自分の価値観が大きく変わったことから旅の力を痛感。その後、株式会社LIGで編集者として働きながら、もっと旅の魅力を世の中に伝えたいという思いから「旅×ストーリー」をテーマにしたWebマガジン『Travelers Box』を立ち上げる。それをきっかけに、2015年12月、旅人にシゴトを依頼できるWebサービス「SAGOJO(サゴジョー)」を運営する株式会社SAGOJOを設立。
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