スタートアップのブランド論対談<SAGOJO新拓也>第2回
友人たちとの温泉旅行や、海外での一人旅。家族旅行など、誰しもが旅をした経験はあるだろう。しかし、それをただの旅行で終わらせず、旅の可能性を広げ、新しい価値を生み出そうという志のもと、旅を仕事にできるサービスを運営している会社がある。それが「すごい旅人求人サイトSAGOJO(サゴジョー)」を運営する 株式会社SAGOJO。代表の新拓也氏に、事業立ち上げのきっかけや考え方などを、パーソナル・ベンチャー・キャピタル代表で、BRAND THINKINGでも連載を持つチカイケ氏が迫った。
聴き手:チカイケ秀夫 聴き手・文:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
「風の人」の役割。
チカイケ:会社を通して解決した社会問題はありますか?
新:社会問題というわけではないですが、「旅の社会的価値を上げたい」と考えています。世間的には「旅」というと、遊びに行くこと、またはドロップアウトのように思われがちです。「旅」と「旅行」の違いは何ですかとよく聞かれますが、「旅行」は時間もお金も消費的なのに対し、「旅」は何かを得に行くこと、または旅人の役割を果たすことといった“生産的”な面があると思うんです。その土地に根付き、暮らしを受け継いでいく人を「土の人」、旅人のような、各地を巡り、繋がりをもたらす人を「風の人」と呼んだりしますよね。
チカイケ:そのような呼び方は、はじめて聞きました。
旅行で言うと、お金を使うことが観光客の役割です。でももっと、「風の人」にはお金ではない形で提供できる価値があると思っていて。そういった「風の人の役割」にスポットライトを当てていくことで、旅の社会的価値が上がる=旅をすることが認められる社会になると思っています。そして結果的に、人生において「旅をする」という選択肢を選べる人が増えたらいいなと。
チカイケ:「旅人」とは、地元の人(土の人)に対して、新しい価値を生み出す人(風の人)というイメージでしょうか?
新:そうですね。SAGOJOのいう旅人とは「行き先でスキルを発揮して価値を提供する(生産する)人だと思っています。なのでわかりやすくするためにも、本当は「旅」という言葉を使わずに表現できたらなとはずっと考えていて。例えば、SAGOJOを利用する人は「サゴジャー」という新しい存在として認知されるみたいな(笑)。もしかしたら「旅」とは違う見せ方もアリなのかもしれません。
チカイケ:旅というキーワードに対して、やっぱり固定観念があるじゃないですか。旅に対してネガティブな面が少なからずあると思うので、もし言葉自体から変えられたら日本を変えられたと言っても過言ではないですね(笑)。
新:そもそも「旅」という言葉の解釈が一人ひとり違いますからね。人によっては隣町に行くことも旅と呼べますし、解釈の幅が広すぎるところが難しさだと思います。実際ユーザーが増えてくると、僕達の考えているコンセプトとは少しずれた人が応募してくるケースも出てきました。
チカイケ:自分たちの理念にちゃんと共感した人だけ起用するようにしたほうが、そういった大きなズレがなくなって質の担保になりやすいですよね。
新:そうですね。僕達はやっとシードの調達が終わった段階なので、これからユーザーの起用数を増やすためにも、コンセプトの部分から改めて作り込む時期だなと思っています。
「旅」は人を育てる。
チカイケ:ちなみに、企業の社員が旅人になることもあるんでしょうか?
新:今はまだないんですが、将来的にはやりたいと思っています。「面白い人が旅をする」のではなくて、「旅をする人は、次第に面白くなる」のだと思っているので。企業が抱える人材課題の解決にも繋げられると思いますね。
チカイケ:旅が人材開発にも繋がる、ということですね。
新:はい。実際にいろんな起業家を見てみると、旅をしてきた人って多いんです。そのあたりの因果関係を証明できれば、人材開発として、企業研修にも利用できるんじゃないかと思いますね。
チカイケ:それは面白そうですね。1年に1度は必ず旅に出るような制度が会社にあっても良さそうです。
新:旅人って、コミュニケーション能力が高くて人を巻き込む力がすごかったり、ビジネス上でも優秀な人が多いと思うんです。ただ、イメージとして彼らは自由に見えるというか、長くは勤めてくれなさそうな印象がありますよね(笑)。でも最近は、企業側の人材採用や働き方に対するマインドが変わってきていますし、コミュニケーション能力が高くて自発的な、まさに旅人みたいな人が社会から求められてくるんじゃないかと思うんです。
企業と旅人が一緒になって、サービスをつくっていく。
チカイケ:企業(クライアント)とSAGOJOはどういう関係性ですか?
新:「一緒に課題解決に取り組みましょう」というスタンスですね。企業からの依頼内容をこなすだけでなく、旅人をこういうふうに活用しましょう」といった提案から行っています。最近では企画(アイデア)自体からユーザーに提案してもらうこともありますね。
チカイケ:それは具体的にいうと、どういうことでしょうか?
新:例えば、旅行系のメディアのクライアントの場合、「どんな記事をつくるか」というところから旅人のアイデアを集めています。旅人には応募と同時に「自分の旅・スキルと組み合わせることで作れる記事」のアイデアを提案してもらい、企業は良い企画案があれば採用する、という形です。
チカイケ:なるほど、それは面白いですね。
最初は旅人そのものを企業に紹介する事業だったのですが、それだけだと紹介した時点で企業が離れてしまうし、資産を切り売りするようなものだったので、納品物(旅人のアウトプット)を売る形に切り替えました。今では旅人(ユーザー)が約1万人いるんですが、企画を募集すると面白いアイデアがとてもたくさん集まります。この企画力もSAGOJOの強みですね。
(第3回は4/27(金)に更新予定です。)
株式会社SAGOJO 代表取締役 新拓也(写真右)
立教大学在学中に海外ひとり旅をし、価値観が大きく変わったことから旅の力を痛感。その後、株式会社LIGで編集者として働きながらも、もっと旅の魅力を世の中に伝えたいという思いから「旅×ストーリー」をテーマにしたWebマガジン『Travelers Box』を立ち上げる。それをきっかけに、2015年12月、旅人にシゴトを依頼できるWebサービス「SAGOJO(サゴジョー)」を運営する株式会社SAGOJOを設立。
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