【フライハイトのブランド論 第2回】(全3回)
ゴルフ人口の減少とは裏腹に、コアなゴルフファンから熱狂的に支持されているクラブは数多くある。フライハイトはそのひとつ。2013年の創業とまだ新しいメーカーだが、愛用するファンは多い。小さいながらも支持される秘訣を、代表取締役髙𣘺智礼氏に聴いた。
クラブづくりは、不自由の連続。
——–開発や製造は全国の職人や工場にお願いしているのでしょうか。
企画や基本デザインはウチでやります。それを形にする職人さんや工場も提携しているところが全国にあります。中国にもつくってもらっている工場があります。かっこよくいえば、いわゆる「水平統合」でクラブをつくっています。例えれば、Appleと同じ構造です。ただやはり外部の工場とのすり合わせは相当大変です。言語が違えばなおさら。一番大変なのは初回の取引のときですね。新規の取引工場もどんどん開拓していますが、まず何が出来て、何が出来ないのかを全部出してもらいます。工場によって得意不得意もありますからね。「このクラブの設計の場合だと、あそこがいい」とかあるわけです。それとクラブって特許が結構つまっているんです。だからいくら理想を追求しようにも、そこに抵触してはダメ。だから特許のことはよく調べます。特許切れも含めて。そこにヒントがある場合もある。クラブづくりって、不自由の連続なんですよ。
画期的なアイデアが眠っている。
——–クラブづくりには随分、制限がありそうですね。
ただ、不自由からアイデアって出てくるんですよね。お客様が「これいいな」って言ったクラブからいい商品って絶対できないんですよ。それをつくってもそもそも真似になっちゃいますしね。「こういうのがあったらいいのに」っていう言葉の中にヒントが詰まっています。でも全部言われた通りにつくってみてもダメ。そこのさじ加減が難しいし、私たちの腕の見せ所です。みんながいいと言ったものでも、他がやっていてはただトレンドに乗っかるだけで差別化はできません。まったく他がやっていない、画期的なものすぎても売れるかはわかりません。ただし、クラブってのは、普遍的な形が必ずあります。そこを基本にどうするか。トレンドには乗らず、お客様のニーズの先を読んで自分たちの魂を込める。不自由の連続ですが、そこに画期的なアイデアは眠っているのだと思っています。
よく見てみたら、ど真ん中が空いていた。
——–クラブづくりの基本方針をどこに置いていますか。
私たちのクラブづくりの基本は「究極のオーソドックス」です。機能を重視しすぎて、形までは変えたくないんです。常識に囚われたくないけど、ゴルフクラブ特有のトラディショナルなものは残したいと思っています。ゴルフ好きな人ほど、奇抜すぎるものは嫌なんです。オーソドックスでシンプル。骨太なゴルフクラブをひたすら追求しています。それが「THE-G」というブランドです。意外と私たちが狙っているところは大手企業はやらないんです。プロから初心者まで、いろんなレベルの人たちに向けて、ラインナップを揃えていると思うのですが、うちが志向するようなものはニーズが多くないので、あまりやらないのではないでしょうか。よく見てみたら、ど真ん中が空いていた、というような気持ちです。「GXD」は逆に実験的なブランドで、飛距離に特化したさまざまなアイデアを形にしていこうと思います。
(第3回へ続く)
聴き手・構成:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
髙𣘺智礼 Tomonari Takahashi
株式会社フライハイト 代表取締役
ゴルフ用品の店舗を持つ会社で店長、同業種の別の会社で取締役を務めた後、2013年フライハイトを設立。店頭販売での接客経験を活かし、理想のゴルフクラブをつくるため、情熱を注ぐ。自身も大のゴルフ好き。
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