【フライハイトのブランド論 第1回】(全3回)
ゴルフ人口の減少とは裏腹に、コアなゴルフファンから熱狂的に支持されているクラブは数多くある。フライハイトはそのひとつ。2013年の創業とまだ新しいメーカーだが、愛用するファンは多い。小さいながらも支持される秘訣を、代表取締役髙𣘺智礼氏に聴いた。
自分は社長に向いていないと思っていた。
——–フライハイトを2013年に立ち上げますが、その背景を教えてください。
正直、最初から大きな志があったわけではありません。以前取締役を務めていた会社の業績が悪くなって、自分で自分を「リストラ」するような気持ちで辞めたのです。それで何か始めないと、というのがきっかけでした。自分ももともと店頭に立っていて、お客様の考え方や志向性は、レベル別にだいたい頭にはインプットされていました。また、以前いた会社でもクラブはつくっていたので、国内外の工場や職人さんの伝手など、「お金以外はみんなある」状態でした。銀行ともつながりがあったので、「だったらお金は借りればいいや」と。「これはもうやるしかない、っていう典型的な流れなんだろうな」と思って立ち上げたのが正直なところです。だから自分で会社を立ち上げるなんて、最初から思っていたわけではないんです。むしろ社長は向いていないと思っていましたから(笑)。
分かる人にわかってもらえばいい。
——–フライハイトを立ち上げることになって、どういうことをやろうと決めたのですか。
やっぱり、ゴルフクラブを「ものづくり」としてとことんこだわってやろうということです。いいゴルフクラブって3通りあると思っています。ひとつは純粋に自分が「いい」と思っている理想のもの。これはつくる上で必ず盛り込みたい。それと使ってくれるみなさんの理想。もちろんゴルフのレベルによってもその理想は変わるのですが、それを越えてもいいもの。そして3つ目がお店が売りやすいもの。これは自分が店頭に立っていたので気持ちがわかります。「本当はこういうのがあればいいのにね」と思っても、ないことって結構あるんです。ゴルフクラブって構えたときの「顔」ってあるんですよ。ヘッドの形、構えた時に見える容姿のことを言うのですが、その時に「あ、いい顔だな」って思えると、いいスイングができそうな気がするんです。この「違い」の分かる人に、分かってもらえばいい。そう割り切ってクラブをつくっています。
事務所にお金はかけないと決めている。
——–分かる人に分かってもらえばいい、という潔い割り切りはなかなか多くの中小企業にできることではありません。
結局、打ったときの音がよくて、フィーリングがいい。そしてよく飛ぶ。シンプルに言うとこれがいいクラブの基本です。みんなそこを目指していくんだけど、大手さんは当然売上をたくさんあげないといけないので、その中でも売れ筋のところ、多くの人が好みそうなところをちゃんと狙ってつくってきます。細部まで自分仕様にカスタマイズしたいというような、ごく一部の競技志向の人や強いこだわりのある人のニーズには応えられない部分もある。「こんなクラブがあればいいのに」というニーズは必ずあります。自分でゴルフ工房に足を運んじゃうようなお客様がうちのお客様。そういう人たちが「いいね」と言ってくれるクラブをつくるのは、やはり私たちのような小さくてニッチを狙えるメーカーになると思います。それがニッチの役割でもあると思うんです。だからウチは事務所にお金をかけないと決めています。お金はぜんぶ開発や製造に回していますよ(笑)。
(第2回へ続く)
聴き手・構成:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
髙𣘺智礼 Tomonari Takahashi
株式会社フライハイト 代表取締役
ゴルフ用品の店舗を持つ会社で店長、同業種の別の会社で取締役を務めた後、2013年フライハイトを設立。店頭販売での接客経験を活かし、理想のゴルフクラブをつくるため、情熱を注ぐ。自身も大のゴルフ好き。
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