【月刊総務のブランド論 第2回】
月刊総務は創刊から54年続く老舗雑誌。これまで何回か出版元の会社は変わったものの、月刊総務のブランドはずっと続いている。わかっているだけでも3人の編集長がこれまでいた中で、脈々と受け継がれ、そして何を変え、これから企業の中にある総務をどう変えていきたいのか。総務の未来とブランド論を、現在の編集長、豊田健一氏に聴いた。
総務にイノベーションを起こしたい。
——総務部内のどんな人たちに届けたいと思って雑誌をつくっていますか。
私はリクルート時代、総務を経験していますが、あれだけ大きな企業だと総務でも最先端な情報がどんどん入ってきます。しかし、魚力に行ったときに思ったのは、リクルートほど有力な情報に出会えなかったのです。つまり、月刊総務が編集の柱として置いているのは、大企業以外の大多数を占める中堅、中小企業の総務へしっかりとした理論や事例をまずは届けること。そして、本気で会社を変えようと思っている総務の人たちのドライブになれればと考えています。月刊総務は企業で定期購読していただいている例が多いのですが、部署内で回し読みをして、自分が気になったところに付箋を貼って、意見を交わしている企業もあります。自分もリクルートや魚力時代は、バックナンバーまで遡って月刊総務を隅々まで読んでいました。だから本気で総務から会社を変えようと思っている人たちの刺激になる理論や事例をできる限りたくさん掲載できるようにしています。
総務にベストプラクティスはない。
—— 前回お話いただいた「戦略総務」や「ファシリティ・マネジメント」の概念を使えば、総務は戦略総務へと進化できるということなのでしょうか。
それらはあくまで土台です。実際の総務の現場はもっと混沌としていますし、突然の仕事が降って湧いてくることもあります。つまり、総務の現場とは、会計やマーケティングなどよりも、さらに各社各様の色が強いと思っています。だからこそ、来た仕事を打ち返すだけの「何でも屋」になりがちですが、ここで、総務にいる人がどうそれを捉えるか、またそこから戦略総務的視点へと視座を移せるかどうかなのではないか、と思っています。社内の誰が、どんなスキルを持っているかを把握する機会として捉えれば「社内人脈」を作る場になりますし、専門性の高い仕事に関して、社内でできる人がいなければ、そこは外部の力を借りる。すると、社外ブレーンを構築する場にもなる。幅広く自分自身の財産をつくれる部署に変わっていくのです。全社が絡んでくるということに怯む人は多いのですが、逆に言えば、全社を変えることができるのです。そのベストプラクティスは、各社でいや、今いる総務の人が見つけていくべきでしょう。
社内にいながら、第三者視点を養える雑誌にできないか。
—— 豊田さんのお話をお聴きしていると、日本における総務という部署の地位向上の想いを強く感じます。
総務が企業内において立場が弱くなるのは、「言われたことだけやればいい」という意識が部署内外にあることです。しかし、総務への風は確実に変わってきています。期待されているんです。でも期待以上のものを返せていない。そこが問題なのです。でもこのままでいいとは誰も思っていないはずです。総務はとかく社内に目線が行ってしまいがちになりますが、それではイノベーションは起きないわけです。いかに第三者的に見られる人を増やすかが大事だと思います。例えば、営業から総務に行くと、生ぬるいと感じる人は多いようです。でも2,3年経過すると、誰しも旧来的な総務の色に染まってしまいがちになります。そういうところに、月刊総務が、「変える手法」や「変わるためのヒント」をどんどん届ける。そうすれば、会社のことが全部わかる総務と外の目線が重なって、イノベーションを起こせるかもしれないと思っています。
文:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
月刊総務編集長 豊田健一
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長を経験後、ウィズワークス株式会社入社。現在、日本で唯一の総務向け専門誌『月刊総務』編集長。総務育成大学校主席講師。総務経験、社内報の企画編集の実績を生かした総務と社内コミュニケーションのコンサルや講演など多数。著書に「マンガでやさしくわかる総務の仕事」(日本能率協会マネジメントセンター)。
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