経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

「らしくない」人を採用することは、誰のためになるのか。

人が集まる企業だからこそできる採用方法。

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集まった人を選ぶ、横綱採用。

4/25のダイヤモンド・オンラインで「メガ銀が『銀行員らしくない』新卒採用を重視、銀行も”銀行離れ”」という記事が掲載されました。メガ銀行といえば、日本経済新聞で30%採用を抑制するという記事もすでに出ており、量よりも質を重視する採用に舵をとったことがわかります。金融系、とくに銀行はこうして少しでも何か問題があると(今回の場合は、中期経営計画などで店舗削減などを見込むため)、如実に採用数を減らします。一方増やす時は一気に増やす。景気に敏感な業種とは言え、相手は「人」ですから、もうちょっと配慮のある、平均的な採用計画をすればいいのにとも思います。本来は入社して活躍するはずだった人、入社するはずのなかった人、両方の点で機会損失をしているのではないかと思います。人をモノとして扱っているわけではないですが、社会的な心象がいいとは言えません。こうなると、地方銀行も採用数を減らすでしょう。そこで浮く何千、何万人が、小さくとも志のある企業に行って、ぜひ企業の成長の原動力になってほしいと思います。

さて、銀行員らしくない人を採用するということは、みずほ銀行の例で言えばつまり、スペックで採用するということのようです。これまでの内定者のスキル傾向(数学的思考など)を分析し、そうではない、これまで採用できなかったスペックを持つ人を採用するとのこと。記事にはおそらく今年のパンフレットの表紙もありますが、「らしくない人を採用する」ということは、どういうことなのか、じっくり考えてみたいと思います。

この採用方法は、集まる人がいる前提で、上から目線で応募者を選ぶ採用です。知名度がある人気企業だからこそできる採用でもあります。そもそも母集団が集まらない企業ではこの方法はできません。ゆえに「横綱採用」とも言えるでしょう。そして、これまでとは違ったスペックの人を採用するということは、現場が混乱する可能性が高いということでもあります。今いる人は、今の企業文化に慣れた、もしくは共感した人です。その人にとって異分子=らしくない人が入社してくれば、これまでちょっと説明すればよかったことを、何度も説明しなければならないかもしれません。「なぜやる必要があるんですか」、「これはなんのためにやるんですか」など喧嘩腰の質問も増えるかもしれません。

経営的な視点で見て、それでも異分子を入れることで、現場を変えていく必要がある、というのは俯瞰してみれば正しいかもしれません。しかし、そこにいるのは現場の人間であり。彼らも含めて覚悟と納得感がなければ、せっかく入社させた「異分子」はいずれ辞めてしまうでしょう。それでは採用の意味はないのです。(こういうバタバタ辞めてしまう採用をザル採用と勝手に読んでいます)

 

スペックのみで採用してもいいことはない。

では、どうすればいいのか。「スペック」だけで応募者を判断しないことです。必ず理念共感をセットにすること。企業理念は企業の事業目的そのものです。だとすれば、そこにはその企業独自の価値観が現れますし、それが文化形成の起点になっているはずです。共感無くして、スペック採用もあったもんじゃありません。理念共感が業績上昇の起点になるというのはもう何度も記事で書いていますが、その視点で言えば、「らしくない」人を採用するのではなく、「らしい」人を採用すべきですし、その上でのスペックでの判断でしょう。

もう一つ指摘しておきたいのは、みずほ銀行の採用の例で言えば、ホームページとパンフレットの見え方が異なることです。採用ブランディングの観点から言えば、この2点は一貫性がないといけません。しかしみずほ銀行にはそれがありません。おそらくですが、ホームページでは従来どおり間口を広く集めるだけ集め、ある程度、絞れてきた説明会の段階で「みずほらしくない人に会いたい」というパンフを渡し、そこからさらに絞っていく考えです。この不一致は本来、採用ブランディングの観点からすれば、効率の悪さを引き起こします。ただ何度も繰り返しますが、人が集まる企業名なので、こんな方法をとっても採用リソースもありますし、できてしまうのでしょう。多くの企業にとってこの方法は参考になりません。

個人的なことを言えば、新卒でスペックも何もないでしょう。机上では経験できないことが現場では起きます。人はそれで磨かれ、だんだんとビジネスパーソンになっていくのだと思います。それまで頑張ってきたことを評価すれども、スペックのみで採用することの無意味さを、一社会人として感じています。 

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むすび株式会社 代表取締役
深澤 了

ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター、BRAND THINKING編集長。日本ブランド経営学会副会長。2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン酒チャレンジ2018銀賞、2019金賞、フランスKura Master2019金賞。埼玉県戸田市では「埼玉戸田・かけはし・純米吟醸微発泡」と、立て続けに日本酒をプロデュース。山梨県都留市ではネクタイブランド「TSURUIKI」の立ち上げも行う。クリエイティブ・ディレクター、コピーライターとしてFCC賞、日本BtoB広告賞、山梨広告賞など。雑誌掲載、執筆多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても"光る人材"が集まる採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。

むすび株式会社

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