【ベッセルの採用ブランド論 第2回】
広島県福山市に本社を置く株式会社ベッセルは現在(2017年9月)、全国にベッセルブランドのホテルを18店舗展開。2020年までに30店舗を目指し、アジアへの展開も見据えている。若手支配人候補の採用・育成が急務となる中、採用におけるブランディングに着目し、同社の採用を大きく改善させてきた。ブランディングによって、これまでの採用活動をどのように変えたのか。採用責任者である木下秀二氏に聴いた。
軸になる言葉が、すべての出発点。
——採用コンセプトを打ち出したことによる効果は?
プロジェクトではさまざまなことをメンバー全員で考えました。自社の強みや弱みの整理。ターゲットのペルソナ化。採用基準の明確化。そして、「福山は、世界だ。」という採用コンセプトの設定です。福山を拠点にしながらも、日本全国、そして世界へと活躍の舞台は広がっているという自社の強みや将来への展望を、ターゲットの志向に合わせて一言にまとめたコンセプトです。これまで採用コンセプトを設定したことはありませんでしたが、絶対に必要だと思います。軸になる言葉があるかないかで全然違います。資料もすべて作り直しました。いろいろな情報を詰め込んで伝えていた説明会も、コンセプトができたことで、伝えるべきことを絞ることができた。それによってより短い時間で強い印象を残せるようになったと思います。採用に関わる他のメンバーともコンセプトを共有できているので、誰が登壇して話をしても内容は変わりません。そういう意味で、効率もかなり上がったと思います。
全国どころか海外からも応募が来た。
——集まる学生に変化はありましたか?
コンセプトを軸に、採用ホームページやパンフレットも制作しました。その甲斐もあってか、エントリーしてくれる学生の偏差値はかなり上がりました。採用にかける予算も増えていますし、ベッセルホテルズの出店による認知率の向上も影響しているとは思いますが、優秀でモチベーションの高い学生が数多くエントリーしてくれるようになったのは一つの大きな成果です。もちろん、偏差値や学歴がすべてだとは思っていません。むしろ熱意や向上心があるかどうかの方が重要です。そして何より、私たちが打ち出すコンセプトや理念に共感してくれた人が来てくれるようになったことがとても大きいと感じています。プロジェクトを実施する前は、広島県内や関西の学生が多かったのですが、プロジェクト後は関東の大学や海外の大学の学生からも応募があり、実際に内定承諾にまでつながっています。成果が私たち自身の意識や取り組み方を変え、そしてそれが応募者の質を上げることに繋がっている。内定出しをする人数も大幅に増えました。
自社を知ってもらう機会をどれだけつくれるか。
——選考フローや面接の際に工夫していることはありますか?
県内や関西圏以外からの応募が増えたこともあり、最終面接に宿泊付きの面接を実施しています。前泊でも後泊でも構わないので、入社前に私たちのサービスや施設を体感してほしいというのが狙いです。内定もほぼその場で出します。同じ日に内定が出た学生を誘って夕食にも行きます。そこには社長や現役の社員も同席させ、いろいろと生の話を聞ける場を設けているんです。その方が会社の雰囲気も伝わりますし、強みの一つである「社員同士の距離の近さ」をより感じてもらえると思います。強みの説明は当然しますが、実際にそれを体感してもらった方が説得力が何倍も増しますから。選考の過程で、自社のことを知ってもらう機会をいかにつくっていくか。時間やお金もかかるし、労力もかかることではありますが、それはお互いにとってとても大事なポイントだと思っています。
【過去5年の採用実績】
<採用ブランディング実施前>
■2014年採用状況:内定出し7名 内定承諾及び入社/5名
福山平成大学、福山大学、東京国際大学、福岡大学、京都外国語大学
■2015年採用状況:内定出し6名 内定承諾及び入社/4名
琉球大学、関西学院大学、広島修道大学、広島女学院大学
<採用ブランディング実施後>
■2016年採用状況:内定出し25名 内定承諾及び入社/11名
上智大学、クインピアック大学、梨花女子大学、シンシナティ大学、武蔵野大学、東洋大学、
獨協大学、京都外国語大学、天理大学、関西外国語大学
■2017卒採用状況:内定出し28名 内定承諾及び入社/9名
大阪大学、広島大学、神戸大学、立命館大学、青山学院大学、下関市立大学、大谷大学
■2018年卒採用状況(2017.8末現在):内定出し25名 内定承諾/8名 内定辞退/12名 内定承諾待ち/5名
島根大学、上海外国語大学、小樽商科大学、近畿大学、関西外国語大学、龍谷大学、広島修道大学、広島女学院大学
(第3回につづく)
聴き手・文:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:櫻井充
株式会社ベッセル 総務部 人事課 課長代理 木下秀二
2001年入社。宴会部、フロント、営業を経て、2010年に本社の人事課に配属。ベッセルの採用責任者として、あらゆる採用活動の企画から実施までを担当。自身が講師を務める新入社員研修を「木下塾」と称し、入社後のフォロー研修や育成にも力を入れており、社員からの人望も厚い。
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