経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

アフリカ発フルーツのブランディングに学ぶ!中小規模の農産物生産者のブランディングはどうする?

今回、ブランディングについて語ってくれたのは、西アフリカのベナン共和国にて農業商社Small Solde Inc.を手がけている佐藤正幸氏です。同国の農産物生産者が、諸外国と対等に交渉できるようになるために、ベナン産パイナップルのブランディングに取り組んでいます。

 

図1

▲農業商社Small SoldeにてChief Strategy Officerを務めている佐藤正幸氏

 

「ベナン産パイナップルのブランディングにおいて、最も高いハードルになっているのがベナンという国自体が知られていないこと」と佐藤氏は語ります。

 

生産地が品質を示す重要な情報となる農産物の場合、生産地としての知名度不足という課題は、アフリカに限ったことではありません。日本の市区町村が農産物のブランディングに取り組むうえでも、同様の課題に直面しているであろうことは想像するに難くありません。

 

そこで佐藤氏には、ベナン産パイナップルには日本市場においてどのような商機があると考えているのかという根本的な話題から、生産地の知名度不足を補うためにブランディングにおいて打ち出している施策についてお話を伺いました。

 

知名度不足に加えて、ヒト・モノ・カネについても潤沢にあるわけではない状況で、いかにブランディングを成功させていくのか。地方の生産者の方は必見です。

 

五感に動かされて始まったパイナップル事業

図2

▲ベナンのパイナップル

 

佐藤氏がベナン産パイナップルと出会ったのは、10年前の大学1年生のとき。テレビタレントとして当時著名だったゾマホン氏の講演に参加し、直接お話を伺う機会を得たことをきっかけに、ベナンを訪れました。

 

佐藤氏「ベナンのパイナップルとの出会いは感動的でしたし、今でも日本でブランディングに取り組む原動力です。“これがホンモノのパイナップルの味だ”と、自分の五感に正直に思ったんです。良い物を知ったら、みんなに薦めたくなる性格。素朴な思いから、僕のパイナップルに対する情熱は始まりました」

 

パイナップルに惹かれてベナン共和国と深く関わっていくなかで、佐藤氏はベナン共和国の生産者たちが直面している厳しい現状も目の当たりにします。元々、フランスの植民地だった同国ですが、旧宗主国を筆頭にヨーロッパ諸国は極端に安値でパイナップルを購入していると佐藤氏は感じました。

図4

佐藤氏「パイナップルが安く売られてしまう要因としては2つあります。農家はパイナップル以外にも多くの作物を育てているケースが多く、その中でも、パイナップルに多くの耕作地を割いています。限られた耕作地に占めるパイナップルの比重は大きいことから、農家にとっては太い収入源なので、安くても買ってもらえなくなると困るのです。こうした傾向が、パイナップルがダンピングされている大きな理由でもあります。もう1つが、果実であること。あまり日持ちがしないのです。そのため、なんとかして早く売ろうとして安く売ってしまう。“買い叩いている”ように見えたのです。その結果として、ベナン共和国の子供たちが世帯の収入を補填するために労働しなくてはならない現状が生まれていると思いました。私が初めてベナン共和国を訪れたとき、子供たちに言われた“ギブミーマネー”という言葉にはショックを受けました。これだけ美味しいパイナップルをつくっている農家が、市場価値に見合った報酬を受け取れないのはおかしい。そう思って事業を立ち上げました」

 

農業商社の経営者として佐藤氏はパイナップルの国際市場づくりに取り組みながら、将来的に優秀な生産者に育ってもらうために、子供たちに対する教育事業も手がけています。「将来的には子供たちが外国人に“ギブミーマネー”ではなく、ビジネスをもちかけるような国にしたい」と佐藤氏は展望を語ります。

 

お墨付きを得た!ブランディングのリソースをもつ人のニーズを知る

 

国内の生産体制を整えるかたわら、佐藤氏のベナン産パイナップル事業は日本市場進出にむけた足がかりづくりのフェーズにあります。「そもそもベナンという国は知られていません。知り合いを頼って置いてもらえたとしても、消費者が購入するかどうかは別問題」と販売に向けた課題を佐藤氏は感じているとのこと。

 

佐藤氏「日本の消費者が“ひとつ試しに買ってみようか”と思えるようなユニークセールスポイントづくりで、知名度不足の課題を乗り越えようとしています。たとえば“大使館公認”というようなお墨付きは効果的だと考えています」

 

日本に置き換えて生産地の知名度不足の問題を考えると、自治体リーダーがブランドにお墨付きを与えるようなケースが、メディア露出の多いリーダーの場合には考えられます。しかし、限定的な生産者だけのメリットになるようなお墨付きは、政府としては不公平としての批判は受けなかったのでしょうか?この課題については「運が味方をしてくれた」と佐藤氏は突破口を話してくれました。

 

佐藤氏「実は、ベナン産パイナップルが目指す日本の市場占有率というのは、ベナン共和国の大使がKPIとして既に掲げています。パイナップルの話をしにいったところ、向こうからも待ってましたとばかりの話があったので、渡りに舟の思いでした。後付けになってしまいますが、ベナン産パイナップルは固有種で他の土地では育たないという客観的なポイントを押さえていたから、国家戦略との一致というチャンスをつかめたのだと思います」

図5

▲パイナップルプロジェクトについて大使と議論

 

ホームグラウンドを出てブランディングを仕掛けていくうえで、対政府のマーケティングで政府からのバックアップを得られたという佐藤氏の事例。マーケティングやブランディングに際しては消費者調査がともなうことが、中小規模事業者にとってのハードルとなってきました。まずは、ブランディングのためのリソースを“投資”してくれる自治体のニーズを把握することから、着手することも有効かもしれません。

 

ブランディング初期においてライバルは協力者。足の引っ張り合いは不毛

 

日本ではまだまだ圧倒的に知名度の低いベナン産パイナップルですが、佐藤氏はブランディングのうえでライバル企業とも協力関係を築くことを大切にしていると語ります。

 

佐藤氏「そもそも、日本人はそこまでパイナップルを食べる国民ではありません。様々な切り口でベナン産パイナップルを認知してもらう必要があります。そういう意味で、ライバル企業の存在は競い合うだけでなく協力関係としても捉えています。たとえば、ベナン産パイナップルをドライフルーツにして販売している方がいます。そのような方がいるおかげで、私たちではリーチできなかった層にもリーチできるようになっていると感じています」

 

地方生産者が都市圏に進出する際にいつでもネックになるのが、利害調整です。小さな主導権争いをするのではなく、共存共栄の大局観をライバル企業とも一緒になって描くことが農産物のブランディングでは大切になることがうかがえます。ライバル企業とも建設的な競争を続けるなかで「ベナン産パイナップルのブランディングも新たなフェーズに入った」と佐藤氏は今後の展望を語ります。

図6

佐藤氏「農産物の輸入はハードルが高い。だから、まずジュースの輸入から考えています。けれども、これも実現するまで1〜2年はかかる。ですので、まずはこれまでのお知り合いのご縁を伝って地道にベナン産パイナップルの魅力を伝えていく取り組みを日本における活動の中心にしてきました。潮目が大きく変わったのは、クラウドファンディングを始めてからです。メディアにとりあげられるようになりましたし、イベントにも講演者として呼ばれるようになりました。ベナン産パイナップルには、これまでのパイナップルの概念が覆る感動があります。ブランディングを手がける私自身が商品力に自信があるからこそ、ブランディングの新たなフェーズでも意気揚々と歩みを進められています」

2109年8月31日まで、クラウドファンディングサイトREADY FORにて、佐藤氏のパイナップル事業を応援することができます。ブランディングの方法論としての有効性が認められつつあるクラウドファンディングですが、国際規模で展開されるケースは少数派。みずから、応援して当事者の一人になることで、クラウドファンディングのもつブランディングにおける可能性を体感してみてはいかがでしょうか。実体験から得られる学びは計り知れません。

長尾和也

 
長尾 和也

コンテンツクリエイター。トレンドとアクセス動向を踏まえた記事コンテンツを、30社以上の企業オウンドメディアにて発信。誌面では月刊文藝春秋にて無記名の観光コラムを掲載中。「世の中をもっとチャレンジングに」という思いからクラウドファンディングに関心をもち、クラウドファンディングライターとして邁進している。早稲田大学大学院商学研究科マーケティング・コミュニケーション専攻修了。修士論文は「消費者の独自性欲求」。




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