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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

100万人以上もの人が利用するプロジェクト管理ツールの舞台裏! 世界のワーカーを魅了した、ヌーラボ文化の作り方

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福岡に本社を構えるソフトウェア会社として先端を走っている株式会社ヌーラボ。「チームで働くすべてのひとに」をコンセプトに掲げ、現在では東京、京都、ニューヨーク、シンガポール、アムステルダムと世界各国に拠点を持つほどに急成長。なかでもプロジェクト管理ツールである『Backlog』は仕事上での会話やファイル共有などの作業をシンプル化させ、100万以上もの人たちに利用されているほどの人気ぶりである。注目されるのはその急伸ぶりだけではない。着実に社内の結束を高め、目標に向かって成長を遂げていくために必要な組織カルチャー醸成のプロセスにもスポットライトが度々当てられる。今回は創業者の一人である、代表取締役の橋本正徳氏にヌーラボのブランドビジョンである『Fun,Creative,Collaboration』の詳細や、その 背景にある個人の原体験、そしてインナーブランディングのタイミングやその後の変化を探った。

 

(聴き手・文・撮影:フルカワ カイ)

 

外部目線を意識したサービスとコーポレートアイデンティティー


ーヌーラボは、この15年で3つのサービスを作り出してますが、テクノロジーに詳しくなくても、ある程度のITスキルがあれば使いやすい印象です。そのような点は意識されているのでしょうか?

「そうですね。僕らの得意技は難しいところを簡単化するというか一般化するというか。まぁ、うまくいっている企業はそういったものを簡単にするのが上手なんでしょうけどね。最近の事例だとプロジェクトマネジメントをどうやってわかりやすく簡単にできるかということで、オリジナルのボードゲームを製作しましたし、Backlog自体もプログラマが利用するバグトラックキングシステム(障害管理システム)をいかにオフィスで使っている人に届けるかを考えて開発したものなんです。プログラマの中で文化があったものをいかにそれ以外の人たちに伝えるか。そこは意識しています」

スクリーンショット 2019-04-08 5.12.39

※『Backlog』使用画面イメージ

 
ーなるほど。内外ともに支持者が多いヌーラボですが、橋本さんご自身でこの経験があったからこそ起業した、というエピソードってありますか?

「あまりないですね(笑)。というよりも僕はそもそも起業家になりたいという夢を持っていなかったし、今も起業家だという意識はないんですよね。でも振り返ると小学校の時から薄く広く友人関係を作っていくのが心地よくて、中学、高校、そして演劇の道に進み、20歳まで脚本を書いたり舞台に出たりしていたんですが、いろんな趣味趣向の人達と関わっていくのが楽しくて、ずっとそういう環境に身をおけたらな、とは思っていました。ヌーラボは2004年、僕を含めて数人のプログラマで創業したんですが、その時から技術者だけでなく様々なジャンルの人たちと関わりたいと思ってましたね」

 

ー使いやすさを意識するのも、きっと多くの人との交流があったからこそかもしれないですね。それがブランドビジョンである『Fun,Creative,Collaboration』に繋がっているのですか。

「そうですね。もともとこの言葉は、グローバル向けのWebサイトをデザイナーが作った時にポンと書いてトップに載せていたんです。FunとCreativeまではデザイナーが考えていたのを採用したんですが、そこにCollaborationを追加しようというのは経営陣で決めました」

スクリーンショット 2019-04-19 10.19.43ヌーラボの会社概要TOP画面(https://nulab.com/ja/about/)。会社のブランド構築の際に追加した「コラボレーション」という言葉は、橋本さん自身の生き方にも繋がっている。

 

ー橋本さんの多くの人と繋がりたいという想いと会社のサービス内容が見事にまとまっていますね! 

「この言葉にしようと思った決め手が三つあって、一つ目は僕が自然に言える言葉であること。二つ目はビジネス訴求としても有用であること。そして三つ目は、コラボレーションという言葉自体がアップデートするタイミングであるなと自分自身が感じたこと。実は、コラボレーションって僕の中では当時あまりよくないイメージだったんです(笑)」

 

ーえ、そうなんですか? ネガティブなワードだったと?

「そう。当時、コラボレーションって言葉が頻繁に世間で使われていて、よく人とお会いすると営業活動として『今度コラボしましょう〜』って、ほんとよく言われていたんですよね(笑)。で、正直、コラボレーションという言葉自体が「なんとなく避けたいもの」に感じていた。でも、Backlogでターゲティングしていた会社がコラボレーションワークをしていたし、僕たち自身もA社とB社、B社とC社というように、会社を超えてコラボレーションしてもらい、ユーザーを増やしていきたいという狙いがあった。ビジネスモデル的にも「コラボレーション」という言葉がマッチするなって思えたんですよね。すごく自然な言葉なんだけれども色々集約できたし、これを機にネガティブな印象も払拭したいなという気持ちもあったので、コラボレーションという言葉で最終決定しました」

ヌーラボコラボレーション賞時を経て2019年3月、自社サービスの『Backlog』は、日本の生産性向上・働き方改革に貢献しているSaaS企業を表彰する『BOXIL SaaS AWARD 2019』にてCollaboration賞を受賞した。

 

ーサービスと企業の雰囲気がイメージしやすいですね。さらに、ブランドビジョンとして『Fun,Creative,Collaboration』という言葉が生まれてから、社内ではどのような変化が生じましたか?

「まずこの言葉にネガティブなイメージを持つ人は入社しないですね。理念を理解している方が応募してくれているなという印象はあります」

 

ーそれは大きいですね。

「まだまだ工夫の余地はありますけど、いい人が集まっているなという感覚はありますね。僕はストーリーを割と大切にしていて。ヌーラボに入って幸せになる人が多いのであれば、その母数は多い方がいい。その手段としてサービスがある。ヌーラボという会社がワールドワイドな会社になるための登場人物としてこういったサービスがある。○年後に収益いくら、とか経済的なことだけじゃなくて、そういった心理的なストーリーを脳内で描きながら日々を過ごしています。そのストーリーに賛同してくれる人たちが国内外で集まってくれるのは嬉しいですね」

 

経済合理性だけではない、内発的なストーリーが会社らしさになる

 

ー案外ロマンチストですね! 経営をストーリーに見立てる、これは、演劇時代の経験が活きているのでしょうか?

「振り返るとそうですね。もともと小学5年生の時、体が弱くてほとんど学校に行けずに自宅療養をしていた過去があるんです。そのときは家で本を書いていたりして、できたものを友人に見せていた。で、それもあってか、高校時代には学外活動で演劇部に入って。そのまま演劇系に進学して脚本や出演もしてました。だから自然と、演劇カルチャーが身に付いているのかもしれません」

 

ーなるほど。

「あと、僕は中島らもの小説を結構読んでいて、彼に影響を受けてますね。『今夜、すべてのバーで』『ガダラの豚』など、彼の小説には実体験も入っていてその価値観がユニークだった。で、中島らもが立ち上げた演劇集団で『笑殺集団リリパッドアーミー』という劇団があったんですが、『上下関係を廃した劇団、今までに無い芝居をする』と宣言して旗揚げしたんですよね。当時の舞台演劇は上下関係が激しかったけれど、彼の劇団はフラットな関係だった。あと、自分の家にいろんな人を住まわせていた。今でいうシェアハウスの原型をやっていて、とても自由で面白い発想を持っていた。振り返ると中島らもを読んでいるからこう考えて行動してるんだと腑に落ちることがありますね」

ーそれが橋本さんの世界観や、ヌーラボの世界観とも繋がっているんですね。

D2vDobUqR4+aPL2IOa5BEQ_thumb_5af2中島らもに影響を受けて「事故で彼を失った女漫才師の話」「ざるうどんやざるそばが世間にあるのに俺だけざるがないといじけるラーメンの話」などのオリジナル脚本を作っていました、と話す橋本さん。経済合理性ではなく内発的動作の面からも経営を見立てるのは彼にとっては自然なことだそう。

 

インナーブランディングは、あえて企業成長の前段階で行う

 

nuiceways2.0『NUice ways』と名付けた行動規範。社員のみで考え、社員制度や福利厚生にも反映している。2018年、世界共通の基準にて調査分析するGreat Place to Work(R) Institute Japanの日本版『働きがいのある会社』ランキングにて8位に選出。

 

ー働きやすさでも人気のヌーラボですが、2017年にインナーブランディングも行ってましたよね。これは何かきっかけがあったのでしょうか?

「雰囲気ですね。よく会社でビジョンやミッションって聞かれるけれど、それをあまりポジティブには考えてなくて。なぜかというと、言葉って人それぞれ受け取り方が違うので、読み間違えちゃう可能性があるんですよね。僕も気持ちが入っちゃうし、それで読み間違えられると争いしか産まなくなる。フィーリングが共有できた上で言語化されるといいのですが、できてないのに言語化するのは抵抗があったのですが、昔からあったクレドがアップデートできてなかった。それと会社の拡大の時期だった、ということが大きかったですね」

「こういうのを作る時って、社員がいうことを聞いてくれないとか、会社が一つの方向に向いていないとか、割とネガティブな状況の時が多いのですが、僕がやろうと思った時は、ヌーラボはポジティブな状況でした。メンバーをこれから増やそう、オフィスを移転しよう、など。雰囲気としてポジティブだったからこそ、文化を強くしたかった。文化を強くしてからであれば急にメンバーが増えた時でも会社の思いが薄まらない、そう思いました」

 

ーどういう経緯で『NUice ways』は作られたんですか?

「こういうことしてくださいと僕がいうよりも、社員たちがコミットメントできる行動規範を作ってもらった方が理解度が違うし、運用として楽なので社員に作って欲しいとお願いしました。ワールドカフェスタイルで、各オフィスで「今のヌーラボが持つ、大事にしておきたい文化」についてポストイットで意見を出し合い、キーワードをまとめていきました。僕は、最終的な決定事項だけ見ましたね」

 

ー最終的に見られた時、自身のイメージと社員のイメージとのズレはありましたか?

「なかったです。このような取材記事などを通じて僕の個人的な思いは伝わっていたし、皆が納得できる共通のワードが出てくるので、ヌーラボの基本的なところがでてきたなという感じでした」

ヌーラボ社員集合写真General Meeting(社員総会)では、世界中のヌーラバーが国を超えてコラボレーションする。

Evsadr16R72lqd1Vd1+c0Q_thumb_5b0cオフィス7Fには社員用の休憩スペースに卓球台、ダーツ、バーカウンター、キッズスペースなどもあり、イベント時には社外にも開放。オープンな社風が地元・福岡でも認知されている。

 

ー『NUice ways』を作ったあと、何か社内で変化はありましたか?

「言葉ができたことより作る過程を通して繋がった感じはありますね。そもそも心の距離があったという訳ではないけれど、どんな会社でありたいというより、何を残したいかを、そのタイミングでも考えられたおかげで、個人個人が大切にしているヌーラボらしさが共有できた。あと、「行動規範って社員が決めていいんだ!」というように、バリアが外れたのがよかったですね。なんでも自らやっていい。そのパーミッションを社員が理解したことは大きかったです」

 

ースタートアップやベンチャー企業は、どうしても創業者がカリスマ化して社員がイエスマンになりがちですもんね(笑)。

「そうそう、そういうのが嫌いなんですよね(笑)。リミットが外せてよかったです(笑)。最近このNUice waysはアップデートしたのですすが、表現の仕方は変わっても根っこは変わらないなという印象はあります。ただ行動規範はあくまでも道具なので、道具としての使い方や滑らかさは社員にも考えてねとお願いしました」

P1080853内外ともに企業の働き方をアップデートしたいと語る橋本社長。

 

ーヌーラボ、またさらに拡大していくのですね。今後の展望を教えてください。

「そんな強い思いがあるわけじゃないけれど、ヌーラボにいて幸せな人が増えて行ければいいな、かつそれがドメスティックな状況ではなくワールドワイドな状況になるなら、それがいいなと思ってます。サービスも同じで、サービスを使って不幸になる人を止めて行きたいですね。幸せの形はたくさん種類があるけれど、不幸はそんなに種類がない。なので不幸が減ればいいなと思います。仕事の効率ばかり求めていると、働く側としては決して楽しい気持ちにはならないと思うんですよ。であれば効率よりも仕事が楽しくなるツールを提供していけば、回り回って効率が上がるはず。そうして働く障壁を取り除いて、ヌーラボを通じて、世界から極力不幸な人がいなくなればいいなと願っていますね」

%%BQHXRqTR6OSzcmxfPtdg_thumb_5b35「ブランディング、といえば、写真の見せ方も大切ですね。変に装飾することなく、自然でいる方が敷居がなくていいですよ」とさらりとアドバイスもいただけた。

 

ーありがとうございます! 最後に、福岡で本社を構えるヌーラボから地域の特性、みたいなものがあれば教えてください。

「応援してくれる気風がありますね。機運が高まっているのもあるし、福岡は、県民性・市民性として熱しやすく冷めやすいラテン系なので、まずは使ってみよう応援しようという迎えるムードはある。やはり最初にいいねと言われるのと、重箱の隅をつつくように指摘されて進めるのとではその後の成長具合が違う。ただ、当然、人によっては無責任にいいねという方もいるので、勘違いしないことは大切です(笑)。何をするかよりも誰がやるかが大切だったりするので、サービスガチガチ固めていくより、これから何かしようと思うんですよね、くらいで相談するくらいの方が地元の人は応援してくれますね。肩書きよりも裸になれる人が好ましい土壌ではありますね」

 

システムから仕事の価値観をアップデートしていくヌーラボ。ユニークさをあわせもちながら今後またどのように働くことへの楽しさを引き出してくれるのか。これからますます加速する展開に、引き続き注目していきたい。

dnQMg9wYQreXxNNGLzAloA_thumb_5afd<プロフィール>
株式会社ヌーラボ 代表取締役 橋本正徳
『チームのコラボレーションを促進する』という軸の下、3つのサービスを提供。100万人以上が利用するプロジェクト管理ツール『Backlog』、オンライン上でワイヤーフレームや組織図を手軽に作成・共有できる『Cacoo』、チャット形式のビジネスディスカッションツール『Typetalk』を展開する。
『Cacoo』は全世界300万人以上、『Backlog』は100万人以上が使う国内最大級のプロジェクト管理ツールとなり、『Typetalk』は「福岡市トライアル優良商品」に認定され、福岡市役所にも導入されている。

 

株式会社ヌーラボ 公式ホームページ:https://nulab.com/ja/
              Twitter:@nulabjp
         橋本正徳 Twitter:@hsmt
Backlog 公式ホームページ:https://backlog.com/ja/ 
              Twitter:@backlogapp
Cacco   公式ホームページ:https://cacoo.com/ja/
              Twitter:@cacooapp
Typetalk 公式ホームページ:https://www.typetalk.com/ja/
              Twitter:@typetalkin_jp

 

フルカワ カイ

SIGN 
フルカワ カイ

SIGN主宰。「お互いを認め合い、彩りのある社会を作る」をビジョンに点と点を混ぜるような活動を行う。地域に根ざした、編集、ライター、ブランディングを通じてペンのチカラで多様な社会を実現していきたい。地域活性にまつわる記事執筆のほか、ブランディングやコピーライティングも担当。noteではビジネス小説も執筆中。

SIGN




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