【Skyland Venturesのブランド論対談 第2回】
25歳以下の若手スタートアップに積極的に投資をする企業がいる。10年続く企業が1%とも3%とも言われる熾烈な世界。Skyland Venturesはなぜ不確実な生まれたばかりの企業に向けて投資を行うのか。それを明確に打ち出したスローガンが「The Seed Maker.」。このほど自分たちが世の中へもたらす価値(=バリュー)も言語化した。その背景や今後の行き先について、代表パートナーの木下氏(写真左)と、ブランディング・プロジェクトを主導したPARK代表取締役でBRAND THINKINGで連載も持つ、コピーライターの田村氏(写真右)が語り尽くした。
聴き手・構成:田村大輔・BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
起業家と暮らす、というスタンス。
——–そもそも木下さんがシード期のスタートアップに着目したきっかけは何なのでしょうか。
木下:僕が社会に出て働き始めた2009年前後は、世界最大のベンチャーキャピタル「Yコンビネーター」が日本でも有名になり始めた頃です。日本もどんどん起業家を生み出していかなければ、という業界的な気運が高まっていましたが、当時は大手VCに所属していたこともあり、創業5年くらいで数十人くらいで運営されている会社ばかり担当していました。他方、これから急成長していく若い起業家と接点はあり、シード期の起業家の変化度に驚かされて、これは面白いなと。「Yコンビネーター」の存在や、身近な若手起業家の存在は原点になっているように思います。
田村:「起業家から学べ。起業家と暮らせ。」っていうのも、木下さんらしいミッションですよね。
木下:起業家って、どういうコミュニティに所属するかが大切です。優秀な人の集まるコミュニティにいれば、自然と自分の目線も高くなる。例えば僕らは、「HIVE」というコワーキングスペースの運営もやっていて、自分たちも常時そこにいます。生活をともにするところから、一緒に会社をつくっていくという意思を表しています。
未来を見据えて、今「絶望」を感じているか。
——–ミッションの中の「絶望」という言葉は相当ユニークです。
田村:普通なら言語化しないワードですよね。でも木下さんの取材をしていく中で、この「絶望」というワードは外せないと思いました。自分たちの事業も回り始めてきて、利益も出ている。でもまだ世の中的に誰もが知っているというレベルまでは距離がある。いろんなジレンマを抱えていて、それが「絶望」というキーワードだったのかな、と思います。
木下:投資先企業にも同じことが言えます。例えば売上をあげられるようになって、そこからどんどん成長していこうとすることで、本当に成長軌道に乗れるんです。ただ、その次の成長に対する打ち手を、打てない人が多い。「このままじゃダメだ、なぜもっとできないんだ、俺たちは世の中を変えるんじゃないのか」と、それこそ「絶望」を感じている人に投資したくなります。ただお金だけ欲しい人には投資したくないと思っています。
田村:「絶望を感じろ。地獄のように働け。」というバリューは、だからこその宣言でもありますよね。スカイランドにとって、「自分たちは、まだまだやるべきことがあるぞ」というのを考える絶好のタイミングだったのかなと。
木下:成長していくと、経営の選択肢が増えていきます。僕らも資金を集めてくれば数十億円規模のファンドをつくることもできるでしょう。ただ選択肢が多い分、どう投資するかとなります。そこで今回のように自分たちの立ち位置を言語化すると、「シードに特化しよう」と腹をくくれました。
スタートアップこそ、ブランディングが活きる。
——–今回木下さんが実際に理念の言語化を経験して、投資先企業へのアドバイスなどで学びになったことはありますか。
木下:スタートアップの事業が伸びはじめたタイミングで、ブランディングやクリエイティブに力を入れていけば、共感してくれる社内外の協力者が増えるということを身をもって感じましたし、投資先などのスタートアップにおいても同様にやってみれば、次の良い成長シナリオをつくれるのではないかと。僕らは正直に言えば、あと2年早く自分たちもやりたかった。そのくらい効果があると感じましたね。
第3回「ブランディングが、スタートアップの発射角度を上げる。」は8/7(月)に公開します。
木下慶彦(写真左)
Skyland Ventures 代表パートナー
1985年生まれ。ベンチャーキャピタリスト。インターネットサービスをつくる25歳以下のスタートアップへの投資をメインに行うシードファンドを運営するSkyland Venturesの代表パートナー。 「The Seed Maker.」というミッションを掲げ、日本国内を中心に40社以上へ投資。総額14億円を運用する。早稲田大学理工学部卒業。
田村大輔(写真右)
1982年生まれ。2004年よりコピーライター廣澤康正氏に師事。ユニクロ、ロッテリア、ミズノなどのブランディング/プロモーションに携わる。2012年、面白法人カヤック入社。コピーライター専属部署「コピー部」の立ち上げに参画。サービス立案・運営からキャンペーンまでを担当。2013年、オレンジ・アンド・パートナーズ入社。プランナー/プロデューサーとして、企業ブランディングや地域活性プロジェクトを担当。2015年、クリエイティブエージェンシー株式会社パーク設立。「愛はあるか?」を理念に、最近ではスタートアップ系のブランディングに力を注いでいる。
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して弊社は一切の責任を負いません。