【ギフトのブランド論 第3回】
町田商店は2008年に産声を上げた家系ラーメン。今や直営30店舗、フランチャイズは全国に320店舗を超え、家系最大を誇るまでになった。シンガポール、ロサンゼルス、ニューヨークと海外にも出店を広げ、世界で家系ラーメンの「中毒者」を増やしている。町田商店として、そして株式会社ギフトとして、今とこれからのブランドの行く末についてどう考えているのか。代表取締役社長・田川翔氏に聴いた。
評価された味が正解。
——「おいしい」は大前提だと思うのですが、自分たちが出したい味と評価される味、この点について葛藤はありませんでしたか。
まず僕のスタンスとして、いくら自分たちが出したい味があっても、それが評価されなかったら、それは不正解としています。職人としては、どんなに原価をかけてもおいしいものをつくりたいのです。独立したての頃の自分にもそういうところがありました。しかし、例えば2000円のラーメンを食べたいかというと、お客様はそこまでしてと思うでしょう。つまりそれでは売れない。決めた原価の中で、最大限美味しい味をだすというルールがそこに必ず存在するのです。そして、その中で、職人としていくらごだわっても、売上が上がらなかったとしたら、それはお客様に支持されていないということなのです。売れる味が正解。だからこれまでもたくさん研究して改良してきたし、アメリカに進出するときも、自分たちのアイデンティティは大事にしながらも、彼らに愛される味をだそうと思いました。特にアメリカのみなさんは、いいものはいい、悪いものは悪い、とはっきり言いますからね。今のところ、アメリカ最大のレビューサイト、Yelpでは4.5と高い評価を頂いています。
自分たちのファンに向けてつくり続ける。
——今後、日本では少子化が進み、家系が好きな若年層が減っていきますが、その点をどう考えていますか。
日本全国で見ればその傾向に抗えませんが、少子化とは言え、家系特有のこってりラーメンが好きな層は時代が変わっても残り続けると考えています。だから私たちは、私たちのファンに向けて、一生懸命研鑽を積んでいかなければと思っています。仮にですが、一方であっさりしたラーメンも出そうと思えば出せます。プロですから。ただ今後はどうなるかわからないですよね。あっさりも家系という側面から味を開発したら、低カロリーであっさりだけど、とても家系っぽい、みたいなラーメンも出しているかもしれないですしね。時代によって変化していく部分も必要なわけです。私たちは国内が少子化傾向になるから、世界に出ていくわけではありません。家系という日本の文化を、世界に広めていく。そうして、世界中の人をシアワセにしたい。「シアワセを、自分から」が私たちのビジョンなので、自ら海外へ出ていき、そのために「笑顔と元気とラーメンで、シアワセを届ける」というミッションを世界レベルで全うしていきたい。これが純粋な想いです。
1000店舗の可能性があるからアメリカへ行く。
——すでにロサンゼルス、ニューヨークと2016年から立て続けにアメリカへ進出しています。
2016年3月に実験店舗として、ニューヨークのラーメンラボへ2週間出店しました。ベースは日本で出している味なのですが、現地仕様にアレンジして、コミュニケーションをとりながら、アンケートもとらせていただいて、反応を見てみました。最終日に近づくに連れて行列が伸び、わずかな期間だったにも関わらず、常連のお客様が出る状態でした。ここで大きな手応えを得たことで、一気に出店準備へ舵を切りました。他のラーメン店も欧米進出している中で、ラーメン熱が世界的に高まっています、市場自体もまだまだ伸びていくでしょう。家系という日本から生まれた文化を、世界中の人に味わってほしいですよね。とはいえ、国内のほうを疎かにするつもりはありません。まだまだ出店余地があると思っています。飲食の場合、企業としてはいろんな業態(ブランド)を出していくのが通常で、私たちも今いくつかやっているので今後も考えないわけではないですが、10,20店舗で終わるようなものは今後は手を出さないでしょう。100とか1000店舗の可能性があるものに集中的に投資していく考えです。海外展開は、世界中に家系の「中毒者」をつくるチャレンジだと考えています。
(おわり)
聴き手・文:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
株式会社ギフト 代表取締役社長 田川 翔
高校卒業後、家系ラーメン店にて修行。店長まで勤め、2008年に株式会社町田商店設立。「元気のいい店舗」がトレードマーク。2015年に株式会社ギフトへ社名変更。「家系を世界への贈り物に」をスローガンに、家系ラーメンの世界展開を目指す。
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