【ギフトのブランド論 第2回】
町田商店は2008年に産声を上げた家系ラーメン。今や直営30店舗、フランチャイズは全国に320店舗を超え、家系最大を誇るまでになった。シンガポール、ロサンゼルス、ニューヨークと海外にも出店を広げ、世界で家系ラーメンの「中毒者」を増やしている。町田商店として、そして株式会社ギフトとして、今とこれからのブランドの行く末についてどう考えているのか。代表取締役社長・田川翔氏に聴いた。
ラーメンの垂直統合モデルでプロデュースする。
——ギフトグループとしてさらに特徴的なのは、麺、タレ、スープを提供する「プロデュース」の考え方です。
従来のFC(フランチャイズ)の考え方ではなく、ギフトグループでは「プロデュース」という概念で320店舗ほどを手がけています。ここにはオーナーがいて、私たちはラーメンの命である麺、タレ、スープを自社直営工場から提供する。お店の看板や内装、接客などへの指導やアドバイスも行います。いわゆるフランチャイズのしくみにある加入料や毎月売上の◯%を頂くということはありません。これらはグループ会社の「ファイナル・スリー・フィート」が手がけています。このしくみにすることで、私たちも長いおつきあいができますし、今まで家系というと、横浜地域に偏っていた店舗を全国にスピード感を持って届けることができます。ラーメンの味が安定するので、全国のオーナー様にも喜んで頂けますし、だからこそ、工夫したお店づくりに注力することもできます。一方、直営は、麺やタレは直営工場から送っていますが、現場で毎日スープをつくっています。毎日つくるほうが、難易度が高く、味のブレは出やすいのですが、店長にはこれを安定してつくれるスキルを求めています。
理念をつくって、共通言語ができてきた。
——理念を決めなければいけない、というのはどの時点で思ったんですか。
自分がイメージしていることを細かく伝えることで、それを社員に広め、社員がアルバイトに広めていくということで、6年間走ってきました。当時直営で15店舗、プロデュースで200店舗は越えていたと思います。でも自分でも社員にイメージを伝えながら、枝葉末節な話にばかりなっているような気がして、経営者の仕事として「これじゃない」感がすごくあったんです。会社の規模も少しずつ大きくなってきて、みんなが向かっていく先に旗を振らないといけないと思いました。そのためには、自分が今まで大切にしてきたことや、でも自分だけじゃなくて、幹部社員として活躍してくれている人たちも含めて、ちゃんとここで言語化しておく必要があると思いました。そして、言語化したら、「町田商店」という社名ではなく、理念から紐付いた社名に変えることで、企業としての一貫性を出すことにもつながると思ったんです。もともと、店名は出店地域によって「綱島商店」とか「代々木商店」とか変えていましたから、「町田商店」という名前にそこまで強いこだわりがあったというわけでもなかったんです。理念をリリースして1年半ほど経ちましたが、全社員に自ら理念研修を行いました。今ではクレドやバリューを使って社員同士話をする機会も増え、共通言語がだんだんとできていると実感しています。
上場は苦しいと言う。だけど後悔している人は少ない。
——上場を目指されていると思いますが、なんのために上場を目指すのですか。
一番の理由は、いい人材を採用するためです。今は飲食業界はどこも採用難。会社の規模を拡大することで、会社に信用力がついて、いい人材を採用しやすくするためです。会社の成長は、人の成長です。今までの拡大してこられたのも、社員が頑張って成長してくれたおかげ。基本的に直営の店長を任せる時は、育っていないのに、無理やり任せるようなことはしません。ちゃんと店長としての仕事がこいつならできる。そう信じられる人にだけ、店長を任せています。飲食はそこで働いている人によって売上が大きく左右しますから、そういう意味で、労働集約的な部分があります。実際に上場を目指している今でも、とても優秀な人たちがどんどん集まってきてくれています。上場している多くの飲食業界の先輩経営者に話を聞くと、みんな上場してよかった、と言いますね。一方で上場の準備は苦しい、けど上場してからの方がもっと苦しいとも言います(笑)。でも、じゃあ、上場しなければよかったか、というとそれはない、とみなさん口を揃えます。でも上場は目的ではなくあくまで目標。いい人を採用して、家系を世界へ広げていくための手段なんです。
(第3回は3/13月に公開します)
聴き手・文:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
株式会社ギフト 代表取締役社長 田川 翔
高校卒業後、家系ラーメン店にて修行。店長まで勤め、2008年に株式会社町田商店設立。「元気のいい店舗」がトレードマーク。2015年に株式会社ギフトへ社名変更。「家系を世界への贈り物に」をスローガンに、家系ラーメンの世界展開を目指す。
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して弊社は一切の責任を負いません。