モモハナ 竜沢華林
【ストーリーは必然だ 第1回】
若干19歳。山梨県立大学に通う2年生。高校時代、多くの同級生が東京をはじめ県外に進学する中で、「山梨の良さを伝えたい」と県内に残ることを決意する。2017年4月、山梨県大月市の桃太郎伝説にちなんだ「桃太郎もち」を発売。多くのメディアに取り上げられ、予想以上の売上を記録している。経営の世界に突如現れた期待の新星。現役女子大生でモモハナ代表、竜沢華林氏に、事業立ち上げの経緯や今後の展望についてたっぷりと聴いた。
「地元っていいな」が勝った。
——–進学校だと、ほとんどの同級生が東京など県外に出てしまうと思います。竜沢さんの地元の県立大という決断がユニークだと思いました。
もともとはみんなと同じように東京に出るつもりでいました。でもふとした瞬間に山梨っていいな、って思って。高校2年生になって予備校に通うようになり、父と甲府の中心街で食事をするようになってからいろんな人と出会い、山梨っておもしろいと興味が湧いてきました。残るなら、山梨に何か恩返ししたいし、山梨は面白くないと出ていく人たちを見返すようなことができたら、と思っていたんです。それを大学4年間でつくろうと。そういう想いもあって、大学1年の頃は地域活性のサークルを自分で立ち上げて、活動をしながら具体的に何をしようかと模索の日々を過ごしました。家が甲府市内なので、最初は甲府で何かできないかと考えたんです。最初は物件を買って、リノベでもしようかと思っていたんです。空き店舗や空き家も多いですし。でも、おもしろそうだけど、何か腑に落ちない。どうせなら自分にしかできないことをやろうと思った時に、ふと思い出したのが大月にあった「桂川館」だったんです。
大月の桃太郎伝説こそ必然。
——–桂川館は深いつながりのある場所だそうですね。
父方の祖母が経営していた旅館です。小さな頃から何度も行っていましたが、小学校3年生の頃、閉館になる最終日に初めて中に入りました。その桂川館で大正時代に売られていたのが「桃太郎もち」でした。なんで大月で桃太郎もちなんだろうと思って調べてみると、昭和12年発行の講談社の桃太郎の絵本には、大月が桃太郎の地であることがしっかり書かれているんですね。富士山もしっかり描かれています。また、大月市内には、桃太郎にちなんだ地名が実はたくさん残っているんです。「犬目」、「鳥沢」、「猿橋」、「九鬼山」、「鶴島」、「ももくら山」。挙げればキリがないのですが、これらの証拠を深掘りしていくと、「桃太郎もち」が存在していた必然や、復活させる意味がここにはあると思いました。桃太郎と言うとどうしても岡山が有名ですが、実は大月こそ桃太郎伝説に一番ふさわしい土地ではないか。しかも私の祖母の実家で売られていた「桃太郎もち」。私がやる必然もそこに見えました。
昔、桂川館前で撮影された写真。※竜沢氏提供
今の時代に愛される「桃太郎もち」に。
——–実際に発売までの準備にお父さんの力も忘れることができませんね。
思い立ったのはちょうど大学1年の春休みでした。父は飲食や店舗運営などの事業を行う経営者。相談したところ、桃太郎や桃太郎もちのことに関して、いろいろと教えてくれました。そして「やるならバックアップするよ」と背中を押してくれましたが、「発売するならゴールデンウィークには間に合わせなさい」と。そうしないと売れないらしいのです。できればゴールデンウィークに入る前に1ヶ月は猶予があるのが理想だそうで、「今からやらないと絶対に間に合わないぞ」とアドバイスしてくれました。幸い、春休みは授業がないので時間はたっぷりありました。そこからです。父の会社のみなさんと一緒に週イチで商品開発会議を繰り返しました。最初はきびを使って、完全復刻しようとしたんですが、見た目がイマイチだったんですね。きびが入っていた確証もなかったので、おもいきって完全復刻を止めて、今の時代に愛される味や見た目にしようとしました。それで一気に見た目も可愛くなりました。色んな人に助けられて、ギリギリセーフで4月に商品発表できたという感じです。
桃太郎もちについている略地図。大月市には桃太郎ゆかりの地名が多い。
聴き手・構成:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:大堀力
竜沢華林
モモハナ代表 山梨県立大学国際政策学部総合政策学科2年
山梨県立甲府南高校出身。県内屈指の進学校で、多くの同級生が東京をはじめ県外に進学する中で、山梨県立大学への進学を決断。1年生の頃は地域活性サークルを立ち上げる。「山梨の良さを多くの人へ発信したい」とモモハナを立ち上げ。2017年4月には父方の祖母が営んでいた大月市の旅館、桂川館で大正時代に売られていた「桃太郎もち」を復活させ、多くのメディアの注目を浴びる。
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