ブランド構築には、公式がある。
ブランド論を形作ったアーカーの理論は公式として表現することができます。
(従業員の行動×プロモーションの完成度)✕理念・価値観
多くのブランド構築は、プロモーションに力をかけ、従業員の行動を無視しがちです。ブランド論の大家、アーカーも書いていますが、従業員をいかに「ブランドを演じる人」に育てられるかが大事です。これはアップルやスターバックスを見れば一目瞭然でしょう。採用の面接でスタバでバイトしていた人は、スタバのことを質問すると、とても楽しそうに話します。そのくらいスタバのことが好きになってしまう。これが行動に現れます。
従業員の行動を一致させていくことは、とても骨の折れる作業です。しかし、こと小さな企業からすれば、大企業よりもやりやすいはず。だからプロモーションができなくても、まずは従業員が一致した行動がとれるようにしていくことがブランディングへの一歩になります。
ここまでは頑張れば自社でできます(やっている会社は実際少ないですが)。コンサルを入れている会社も多いと思います。それよりも、もっと多いのが、教育という観点でのコンサルで、プロモーションやツールは広告代理店や制作会社というふうにだいたいの会社が発注先をわけしいまいます。ブランディングという観点で、すべての会社を束ねれば、そこに溝は生まれないのですが、たいてい溝があります。
つまり、教育担当のコンサルでやっていることと、ツール制作の会社は別々にそれぞれの観点で提案し、また企業側もそういうもんだと思って、発注してしまうのです。だからいつまでたってもブランド構築になりません。
理念や戦略を汲んでつくれる制作者は少ない。
世の中のほとんどの制作者は経営に興味がありません。彼らは面白いことには興味があり、自分たちもそれで楽しみたい、世の中を動かしてみたいと思っていますが、本当は理念・価値観を踏まえて企画し、その上で効果を出さなければブランド構築にはつながりません。
この点で、話題になったけど、果たして効果があったのかはわからない、というキャンペーンや企画、ツールは、ブランド構築上、ほぼ無意味です。でも、制作者はとにかく「おもしろい」ことをやりたい。そういう衝動を持っています。それは私も一制作者だからよくよく気持ちはわかります。ブランドの理念や価値観を踏まえて制作できる制作者は世の中には非常に少ないです。
理念がある状態を1とすると、従業員の行動が一致せず(=0)、ツールが理念を踏まえたものになっていない(=0)なら、冒頭の公式が成り立たないのがお分かりになっていただけると思います。だから、ほとんどの企業のブランド構築がうまくいかないのです。ただ裏を返せば、ちゃんとやればどんな小さな企業でもブランド構築は始められます。
ブランドにとって、何が一番大事か、というとブランド・ビジョンの設定であり、その一貫性です。私の実感でももちろんそうですが、アーカーもその著書の中で、「一貫性が勝利をもたらす」と言っています。
どうか多くの会社がこの負の連鎖に気づいて欲しいし、少なくとも私たちのクライアントさんにはしつこく伝えていきたいことでもあります。
文:BRAND THINKING編集長/むすび株式会社 代表取締役 深澤 了
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