クリエイターがそばにいる流れは数年前から来ている。
大企業だけの特権ではない。
例えば、ファーストリテイリングは2015年1月からクリエイティブ・エージェンシー、ワイデン&ケネディでクリエイティブ・ディレクターを務めていたJohn C Jay(以下ジョン・ジェイ)をグローバル・クリエイティブ統括として迎え入れました。ジョン・ジェイ氏は90年代、ユニクロが原宿店を出し、フリースを発売した頃にCMを手がけていました。
日本で経営者とやり取りしながらクリエイティブ・ディレクションを行う最も有名な1人は、佐藤可士和氏。先述したファーストリテイリングの世界展開時のVIを手がけました。セブン&アイホールディングス、楽天、ヤンマーなど名だたる企業のブランド・リニューアルに、佐藤氏の名前が出てきます。
こうした企業が大企業であるがゆえ、多くの経営者にとってクリエイターをそばに置くことは考えが及ばないことかもしれません。ある程度規模が大きくなってから考えること。経営者はその自社の中で一番の営業担当である、という企業が現実、多いのではないでしょうか。利益を上げなければ会社は存続しませんから、最重要事項であることは変わりありません。
では、本当に大企業の経営者にだけ、クリエイターは必要なのでしょうか。
クリエイターが経営者のそばにいる重要性は、企業の伝えたいことを、世の中(伝えたい人たち)に伝わる方法で届けられる、ということです。彼らは経営者の頭の中を理解し、それを伝わる方法に変換して表現し、世の中に伝えていく術を持っています。ここに価値を置いた経営者がクリエイターをそばに置いています。
クリエイターと一緒に仕事をする流れは、まだそれほど大きくはないものの、徐々に流れ始めています。中小企業でも、腕のいいクリエイターに声をかけ、効果を出しているところは数多く存在します。
一貫性を生み出す源泉になる。
クリエイターと言っても、デザイナー系、コピーライター系、Web系と大きく3つに分かれます。従来、外部パートナーといえば、コンサルタントという流れが一般的で、そこから先がクリエイターの出番だったりしますが、経営者が直接クリエイターとつながる利点は、第三者が間に入らないことで、ダイレクトに想いや戦略を伝えられる点にあります。クリエイターからすると、直接熱意に触れて理解できるので、本質的な表現をしやすく、双方にとって利点があります。作る側は、経営者の熱意を直接触れられたほうが、断然インスピレーションが湧くはずです。
ここで、経営者が気をつけないといけないのは、単に言いなりにつくってくれる使い勝手のいい制作者を選ばないことです。それでは自身の考えていること以上の結果は得られません。
では、どのようなクリエイターを置くべきでしょうか。絶対的に必要なのは、理解力の高い人。企業の理念、戦略、これからの目標など、深く理解し、それを表現できる人が、経営者側から見てやりやすいですし、結果を残しやすいともいえます。外部の目を持って、内部のことを深く理解してくれる人は、貴重な存在です。その上で、表現力のある人を選ぶべきでしょう。表現力が突出していても、「作品」をつくろうとするの作家気質では、それがビジネスとして結果を残してくれるかどうかは不明です。結果が出ても、その人がやった、という話題性が続く限りになってしまいかねません。
ただ問題なのは、経営の深い部分まで理解しようとして制作するクリエイターの数が圧倒的に少ないことです。この点は、実績やそのクリエイターの考え方などを見て判断するしかないと思います。
しかし、もしそういうクリエイターに出会えれば、目に見えるデザインや言葉は変わるだけでなく、経営者自身の発する言葉、ひいては営業担当全員の言葉まで、統一された発信ができるかもしれません。そこにこそ、ブランド構築の側面から見た場合に大きな価値があります。自社のブランドに一貫性を生み出す源泉になり得るからです。
文:BRAND THINKING編集部
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