【特別企画】
100年企業から学ぶ#1 フォーク株式会社
小谷野 淳(代表取締役社長)
【AD】今年で創業117年。フォーク株式会社は1903年(明治36年)創業の老舗企業だ。埼玉県加須市を発祥とする同社は、繊維にこだわって事業を続けてきた。ここ数年、医療用ユニフォームの分野で急速に成長を遂げている企業でもある。伝統と革新を繰り返しながら、何を大切にして、何を変えてきたのか。100年企業の秘密に迫った。
取材・文:BRAND THINKING編集部 撮影:落合陽城
白衣の世界に、カラーというイノベーション。
バブルの頃は、企業用の事務服で1着10万円もするものがどんどん売れたんですよ(笑)。今は当時の1/3の市場でしょうか。医療用ユニフォームをやろうと思ったのは、2000年にM&Aで北海道の医療用白衣をつくっている会社を買収したのがきっかけでした。M&Aというとカッコいい感じはしますが、半ば救済に近い形でしたね。買収した以上、なんとかモノにしなければなりません。私たちがそれまで企業用の事務服製造で培った スキルを活かして『何をしようか』ということで、必死に取り組んできたのがここ18年くらいなんです。日本の医療現場ではユニフォームは上下ともに白一辺倒 なのに対し、アメリカではカラー・柄物の医療服の着用は、当時すでに当たり前でした。そこで他社に先駆けてカラースクラブを発表したのです。好きなユニフォームを着用して働くと、モチベーションやパフォーマンスが上がるというのは、大学の研究室と毎年一緒に行う調査の結果、認識していましたから。
医療用ユニフォーム市場にはかなり強いリーダーがいて、私たちはその牙城を崩すべくチャレンジャーとして、地道にやってきました。現場の声を聞いて、女性看護師が化粧をしていても着やすくする工夫をしたり、医療用ユニフォーム特有の超高温でのクリーニングによる色落ちに耐えられる特殊な素材で製造したりしています。こうした取り組みが徐々に評価されてきて、全国の病院に広がってきました。とはいえ、まだまだ総合病院には2,3割程度の広がりですので、これを限りなく100に近づけることに注力していきたいと思います。最近では働き方改革で、看護師のユニフォームの色を勤務時間帯で分け、就業時間管理などに活用する病院も出てきましたし、コロナウイルスの広がりの影響で、高温でのクリーニングに強く薬剤にも強い弊社の新型スクラブが支持されつつあります。これからも研究開発を怠らず、どんどん弊社の製品を広げていきたいですね。
時代が変わっても、ビジョンに忠実に。
もともと繊維にはずっとこだわってきました。ユニフォーム、特に近年は医療用に特化していますが、一般衣料品の卸売などを行っていた時期もありました。経営学のセオリーでも『できるだけ隣地を攻めろ』という考えがあります。繊維にはこだわりつつも、時代に合わせてしなやかに事業を変化させてきたことは、弊社の大きな特徴だと思っています。バブルの時代、財テクで不動産や株をはじめ事業シナジーのない多角化が流行りましたが、先代の考えもあり、弊社はそれをやってきませんでした。だからこそバブル崩壊以降、M&Aや研究開発などに十分に投資できる余力があったと言い換えることもできるかもしれません。やってきた事業は多岐に渡りますが、しかし今、ビジョンとして掲げている「たえず新しい価値をひとりでも多くのお客さまと共に」ということに結局は忠実だったと思います。この言葉は近年創ったものですが、弊社の歴史を紐解けばこの考えに集約できますし、これこそが私たちのDNAなのだと思っています。
だから結果として今、時流に乗っているのだと思います。それもビジョンに忠実に歩んできたからこそ。これからまた医療用ユニフォームだけでなく、きっと新しい価値を、自分たちの強みを使ってチャレンジしていく歴史になるでしょう。今、私たちは医療用ユニフォームでは追いかけられる存在になってきました。デザインを真似するところも出てきています。しかし追随する会社が出てくれば来るほど、やはりパイオニアとして注目されるでしょうし、医療関係者でも若い人ほど私たちのユニフォームを、機能的にもデザイン的にも支持してくれています。そういう人たちを大切にして、またさらに新しい価値を創っていきたいですね。どんなに時代が変わっても、これを追いかけることは止めません。それこそが私たちの追いかけるべきビジョンなのですからね。
(おわり)
小谷野 淳
フォーク株式会社 代表取締役社長
早稲田大学政治経済学部卒業。丸紅を経て、同社へ。
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