2022.10.22、年に1回の研究発表会、BRAND CONFERENCE 2022 vol.4がオンラインにて開催されました。今年は6名の方が論文を書き、それに基づいて、研究発表を行い、最後に全員でブランドに関するワークショップを行いました。朝10:00から15:30まで、1日ブランド経営について考える祭典です。今回は前半部分に関してレポートします。
まず、日本ブランド経営学会会長、上條憲二氏(愛知東邦大学教授)より、基調講演がありました。「ブランドは儲かるだけではなく、働く人の健康にも寄与する」という研究結果について紹介。縦軸に企業(ブランド)理念が明確か、曖昧か。横軸に個人の想いをとり、それが配慮が希薄か、個人の想いを尊重するか、という軸を取り、それぞれ「両立型」、「統制型」、「放任型」、「親睦型」とタイプ別に分け、解説を行いました。その上で、「両立型」が理想で、個人の想いと会社の考え方を両立させていくことが重要であると話します。
さらに、所属する愛知東邦大学のブランドリニューアルを説明、「両立型」の取組事例として、具体的に教員一人ひとりが考えたステートメントを説明。全員参加型によるブランディングの取り組みの重要性について示唆しました。
2番めの発表は、深澤了氏(むすび株式会社)。「採用ブランディングの理論と実際の乖離に関する調査研究」です。先週マーケティング学会で発表された論文を、今学会でも発表を行いました。深澤氏が日本で初めて理論化した「採用ブランディング」の理論を土台に、実際の実践との乖離とその問題点に対して指摘しました。
深澤氏は採用ブランディングを「採用活動のすべてを通して、強くて、好ましくて、ユニークなイメージをつくる活動」と定義している。そのうえで効果を「①即時性②質の向上③ジャイアント・キリング④予算抑制」を挙げている。今回の調査では、採用に関わっている、あるいは関わったことのあるビジネスパーソン500名にインターネット調査を行い、採用ブランディングの実践企業において、次の効果があったと答えている。「ターゲティングの明確化:53.5%」「応募者のマッチ度合い向上: 21.9%」、「内定承諾率の向上:19.4%」、「採用予算の抑制:14.6%」、「離職率低下:17.0%」、「競合他社ではなく自社入社の割合増:9.0%」となった。
しかし一方で、深澤氏が採用ブランディングにおいて重要視している「強み・弱みの整理」、「採用基準の整理」、「ターゲット人材の明確化」、「採用フローの明確化」、「自社らしさの明確化」などは軒並み回帰分析で逆相関になっており、「一定の効果はあるものの、本来の意味を離れ、採用ブランディングという言葉が独り歩きしている」と締めくくっている。
3番めの発表は三輪哲也氏(愛知東邦大学入試広報課長)。「パーソナルブランディングと組織の関係性」の発表です。調査をもとに、若者の考え方の移り変わりについて発表しました。まず、公表された調査をもとに若者の考え方の変化を解説。「自分」への興味が高まっている点を踏まえ、個人がしっかり考え方を明確にすることの重要性を示唆。一定のパーソナルブランディングの研修を受けた人たちが、どのように意識の変化が現れたのかを調査しました。
仕事への取り組み方、モチベーションなどが相対的に上がった、という結果が出ており、研修後の仕事の中で、「考え方が変わった」、「前向きになった」という回答が寄せられているという。またパーソナルブランディングの研修を行うことで、夢を目指すために進路変更を行った人もいたということ。
調査を行った結果、「意識変化だけでは、行動変化にはつながらず、またモチベーションが上がっただけでは、帰属意識は上がらない」と三輪氏はまとめています。
4番目の発表はチカイケ秀夫氏(パーソナルベンチャーキャピタル)。まず結論的に、パーパスには3つの分類があるとチカイケ氏はまとめます。①資本主義的パーパス②ティール的パーパス③ブランディング的パーパスと分類しています。
チカイケ氏はティール組織がパーパスの発生に影響があると示唆します。よく言われるパタゴニアの例を挙げながら、「パーパスが先にあったわけではなく、もともとパタゴニアにあった考え方があった」と示唆します。1991年のビジョナリー・カンパニーで指摘されたビジョンの定義から、ブランディング的パーパスの側面との差はそれほどないと指摘。
言葉の概念や定義よりも、誰にために何をつくるか、が大切であると締めくくりました。
ここまでで前半が終了。次回、後半の発表やワークショップに関して、レポートします。
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