【レポート】日本ブランド経営学会ブランド・カンファレンス研究発表会2021＜後半＞

10/23（土）10:00〜爽やか秋晴れの中、日本ブランド経営学会ブランド・カンファレンス研究発表会2021がオンラインで開催されました。発表者は全部で9人。最新研究が集まるブランド論漬けの1日、後半戦です。

5番目の発表はPERSOANL VENTURE CAPITAL.LLC CEOのチカイケ秀夫氏。テーマは「企業ブランディングにおけるコーポレート／ブランド／サービスの原体験と耐用年数の相関性について」です。チカイケ氏はブランドをSI（Service Identity）、BI（Brand Identity）、CI（Corporate Identity）とわけ、それぞれを定義し、SI<BI<CIという形で耐用年数が高いと示唆します。またチカイケ氏は企業の創業者の原体験と企業経緯がリンクするかどうかを100社調べ、そこに関連性があることを突き止めます。

6番目の発表は株式会社Toreru/特許業務法人Toreru パートナー弁理士兼COOの土野史隆氏。「知財価値を高める、ブランド戦略と連動した知財戦略の方法論」というテーマになります。土野氏は、そもそも知財とブランドは関連性が高いにも関わらず、しっかり考えられていることが少ないという課題を提示します。ブランドと消費者のコミュニケーションを考えれば、「知財はブランドの伝達手段である」というのが土野氏の定義。インターブランドが発表しているブランドランキングを例に、Appleを取り上げ、事例研究を行い、Appleにある知財戦略を整理しました。ブランド体験が知財価値を高めるか？という大きなテーマに向けて、これからの研究の課題を提示しました。

7番目の発表は株式会社クオーターバック代表取締役ブランディングファシリテーター山田裕一氏。テーマは「情報過多時代のの新しいインナーブランディングの形」。「目に見えない理念は言葉で組織に共有できる」と話します。しかし言葉で共有できても、「意味」で共有できない、というのが山田氏の考え。テレワークが進んでいく中で、オフィスはどうあるべきか、という中で「オフィス機能付きブランド体験施設」を提唱し、「自社の理念を空間に翻訳すべき」と示唆します。

8番目の発表は東京アドエージェンシー、プランニングディレクターの岩林誠氏。テーマは「脱成長時代のブランディング」。近代資本主義とブランドの発展はCO2排出の歴史であるとデータを使って明示。GDP増加とともに天然資源の使用が増加、経済格差と人権問題についてデータで指摘します。また20世紀のブランド研究をまとめ、ブランドは「サスティナビリティ」の時代へ移り変わってきているとして、「社会的意味としてのブランド」になっていくとしています。もはやブランディングがマーケティングの一部分ではなく、「マーケティングは社会的に役割を終えており、名前そのものさえ変えるべきではないか」と提言しています。

9番目の発表は+ING（プラス・イング）の渥美智之氏。テーマは「”魅せる自分”の作り方」。人生100年時代、働き方改革などの議論に問題として、本質的でない部分が多く、「すべての人がいかに活躍するか」という本質を考えるべきではないかが、今回の研究につながったそうです。組織ではなく、個人が注目される時代において、渥美氏は「自分とは何者か」を考えていくべきで、それにはしっかり一人ひとりが自身の「原体験」を掘り下げるべきと指摘。10名のデプスインタビューから予め定めている5つの指標（歴史性、機能性、文化性、社会性、関係性）に沿って、評価と考察を行いました。