10/23(土)10:00〜爽やか秋晴れの中、日本ブランド経営学会ブランド・カンファレンス研究発表会2021がオンラインで開催されました。発表者は全部で9人。最新研究が集まるブランド論漬けの1日です。
まず最初に、日本ブランド経営学会会長(愛知東邦大学 経営学部 地域ビジネス学科 教授)の上條憲二氏より、基調講演がありました。学会の10年計画やこれまでの活動を振り返りました。マーケティングとブランディングの違いを再整理しつつ、「マーケティングはブランディングの一部と捉えられてきた」と説明し、「これからはマーケティングよりブランディングがさまざまな分野と掛け算されると、新しいものが生まれていく」と提言します。
その後、上條氏のわかりやすいブランド論が展開されました。ブランドとは「確たる評判=固有のらしさ」と定義。ブランドができると顧客と社員への効果があることを整理します。差別化だけでなく、社員への健康への効果が上がることを示唆します。人に例えてブランドを説明し、「企業は話し方、服装などすべてバラバラにしがち。だからブランドらしさがつくられない」と指摘します。
2番目の発表からは論文を基にした研究発表になります。「テレワークを理念浸透のチャンスに変え、組織を強くする方法論」と題して、むすび株式会社代表取締役の深澤了氏の発表です。これまでの先行研究から、「テレワークにはwifi環境の整備が重要で、そこでのコミュニケーションの質が重要」と結論づけ、組織行動の分野から「個人と組織の情緒的な結びつきが重要」と示唆します。またこれまでブランド論が組織行動をあまり融合してこなかった課題意識から、テレワーク時の理念浸透は何が有効かを解き明かそうとした発表です。調査からそもそも理念への共感・理解のある層はテレワークの取り組みにも好意的で、コミュニケーションもよく取れていると分析します。また重回帰分析から採用時と今の理念共感は「会社への愛着、チーム力強化、生産性、活躍イメージ」などに大きく影響することを示唆し、テレワーク時の理念浸透の方向性を提示しました。
3番目発表は学校法人愛知東邦大学入試広報課 課長三輪哲也氏。「ブランディングにおける意識と行動の変化」がテーマです。一般の調査から「組織のコミュニケーションが減ってきている」、「コロナ禍前後での個人の価値観変化」を指摘し、「組織中心の考え方から、個人中心の考え方に移行し、ここに組織としてブランディングが有効である」と考えます。アーカーとコヴィーの考え方の共有点を指摘し、ここにもとづいて、デプスインタビューをおこない、その一部の生の声を発表いただきました。そしてアーカーが指摘したとおり「ブランドは情緒的な価値がある」などを検証できたとしました。
4番目の発表は株式会社シー・エス・イー 地図システム開発部 部長 野口和美氏。「働くことが幸せにつながるサザエさんドリブンな世界を目指して」というテーマになります。コロナ禍で「不安、焦り」など感染以外の個人への心の脅威を指摘し、日曜日の夕方から明日の仕事のことを考えて、憂鬱な気分になることを「サザエさん症候群」と言われてきたことをまとめます。厚生労働省の「気分障害患者数」の調査を取り上げ、この患者数が増えてきていることを指摘し、「サザエさん症候群」から「支「サザエさんドリブン」の転換を提案します。働くことが幸せにつながる要因を「仕事内容」、「上司」、「同僚」、「組織風土」、「企業ブランド」の5つに分類し、それぞれをどのように変化させていかねばならないのかを過去の研究や一般調査をレビューしながら、ご自身の考えを発表しました。
ここまでで前半戦が終了。後半戦へと続きます。
(つづく)
なお、来月は11/18(木)に通常の勉強会(salon)が開催されます。
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